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絵画を描くように花で表現を。吉祥寺の花屋「Panié rustique」筧さんの思いとこだわり DATE : 2024.11.11
LIFESTYLE

絵画を描くように花で表現を。吉祥寺の花屋「Panié rustique」筧さんの思いとこだわり

東京・吉祥寺駅から徒歩15分のところにある花屋「Panié rustique(パニエラスティック)」。
アンティーク調のくすんだ赤いドアを開けるとそこは海外の家に来たような空間。
オーナーの筧さんに花との出会いからお店のこと、花の選び方や楽しみ方などを伺いました。

 

筧 奈鶴さん

Panié rustique オーナー

Instagram:https://www.instagram.com/panie_rustique/

表現することは、幼少期から続けているダンスから

− まず、お店のホームページのアバウトにて「1997年 ダンスを始め、舞台などに携わったことをきっかけに色彩、空間装飾への興味が高まる」とありましたが、このあたりが今のお仕事にも繋がっているのかなと。

筧さん:ダンスは幼少期から15年ほどやっていました。なのでお花には全く触れてこなかった人生だったんです。
ダンスや舞台では照明、衣装などひとつひとつのアイテムが混ざり合ってひとつの作品が確立されていきます。花とダンス。ジャンルは全然違うんですけれどいろんな種類が混ざりあって一つの形になるという点ではお花も近い部分があるのかなと思います。

季節を感じられるセレクトされた25種類の花材で束ねられたブーケ

− ダンスのキャリアがとても長く、舞台なども多く経験されてきたんですね。 それらの経験が今も活かされているように感じます。

筧さん:感覚的なものは活かされているかもしれません。お花を通じて自己表現をできるから続けられているのではと思います。

− ダンス、舞台といったところから、花を仕事にするようになったきっかけはどういったことからですか。

筧さん:花を始めるきっかけは、ダンスでちょっと挫折してしまったことがあって。ずっと頑張ってきたことなので、落ち込んでしまい、これからどうしようかなって、仕事について調べていた時にお花と出会いました。心が癒されるという部分が自分の中では、結構大きかったのかなと。
他にも可愛い、美しいというところでテンションが上がったり、気持ちが落ち着いたり、感情の面でもお花と結びついたのではないかなと思っています。

− そこからスクールで学び、いくつかの花屋さんで経験を積み重ねてきて独立されて今に至るんですね。

筧さん:そうです。当時はこんなに長く続けるとは思っていませんでした。独立するまでに3~4店舗で働かせていただきました。
店頭販売での小売やウェディング、企業への活込など多岐に渡る業務が経験できたことで視野が広がり、結果的に自分が目指す方向性が見えてきた気がします。
独立した今も神楽坂にある花屋「jardin nostalgique(ジャルダンノスタルジック)」に在籍させていただいています。

− 「Panié rustique(パニエラスティック 以下カタカナ表記)」というお店の名前の由来や意味はどういったものですか。

筧さん:それが本当に屋号だけがずっと決まらなくて。ずっと決まらず、2~3年ぐらいかかってしまいました。自分の中で中々ピンとくるものが思いつかず、『これでやっていくぞ』と思えるほどのものにも出会えず、最終的に師匠に相談にのってもらい、決めることができました。

筧さん:そこからジャルダンノスタルジックのみなさんで考えてくれた名前が「パニエ ルージュ」だったんです。「パニエ(panier)」とは「花籠」という意味です。店舗で使っている「Panié」は造語なんです。「ルージュ」は「赤」を意味します。
「奈鶴さんのイメージカラーは赤が良いかなと思うから」という理由で名前につけていただいたのですが、全部をそのまま付けさせていただくのも自分の意思がないかなと思い、「ラスティック」は自分で考えました。ラスティックの意味は『素朴な』、『田舎風の』などの意味合いがあり、自分が表現したい花のスタイルにもピッタリだなと思いました。

− 赤っぽいという点ではサイトやお店のドアも赤を使われていますね。素朴や田舎風という点ではシャンペトルスタイルにつながったのかなと思いますが、この「シャンペトルスタイル」とはどんなスタイルで興味を持ったきっかけはどういうことからなんでしょうか。

筧さん:まず「シャンペトル」については「田園風景」のこと。野原や庭に咲いている花を摘んで束ね、抱えたような印象のお花のイメージを「シャンペトルブーケ」と呼びます。
きっかけはフランスに旅行に行って刺激を受けたことからで、フランスでは日常生活の中に花で空間を彩られるシーンがたくさんあります。
食卓やお手洗いにちょっと花が飾ってある様子にすごく憧れがあって。
フランスに行くまでは、花の飾り方や楽しみ方が固定概念の中にいた気持ちがしていて、パリのお花屋さんには美しい花が並んでいるのですが、綺麗に整えられて飾られている花もあれば、本当にお庭から摘んできたような花もありました。そういうちょっとした飾り方が自分の中でいいなと思い取り入れたいなと。

店内の奥ではセレクトした花瓶を販売

筧さん:フランスから帰国した際に、当時シャンペトルスタイルを日本でされている方があまりいなく、インターネットで検索をしてジャルダンノスタルジック(神楽坂)を見つけました。それが今では私の大切なルーツだったのかもしれません。

人生は一度だけ。だからこそ追求、表現をしていきたい。

壁にはレッスンで制作したものやポストカードが並ぶ

− 筧さんが独立しこの店を構えたのにはどういった経緯や思いがあったのですか。

筧さん:これは悪い意味ではなく、お店に属している形だと、やはりそのお店の方針に従ってお花に関わっていくことになるので、もっと自由に自分が表現してみたいお花の世界観をとことん追求してみたり、表現してみたいなという思いが次第に強くなり、お店を構えることにしました。
あとは子育てとの両立も考え、移動距離や時間に余裕が持てそうな自宅近隣の場所で拠点を探していました。それが吉祥寺です。

− お店にいらっしゃるお客様はどんな方々が多いですか。そして心掛けていることなどを知りたいです。

筧さん:色彩や芸術が好きな方が多く来てくださっているように感じます。レッスンに関しては、 やはりお花に詳しかったり、お花好きの方が多く、オーダーに関しては年齢層幅広く、ご利用下さっているような印象です。

赤いドアが印象的な入り口

筧さん:お店で大事にしていることとすれば、ご希望の色合いだけを伺って、オーダーのお花を作るということはしないようにしています。
どういった目的で、どんな想いでお花をその方に差し上げるのか、それぞれの背景を伺いながら、お客様の意向に沿ってお花を作りたいという気持ちが強いのかもしれません。
少し前の話に戻ってしまうと、お店に勤めていると時間配分が重要になることもあり、お客様のオーダーを伺う際、時間を割けないケースも十分にあるかと思います。
自分のお店では、それを気にすることなく、丁寧にカウンセリングできることが醍醐味かなと思っています。

インスピレーションが沸いてくるような空間作り

− ここまでのお話でも筧さんのこだわり、想いが詰まっていることが伝わりますが、店舗の内装もこだわりがあると思います。

筧さん:絵画にまつわるものを多く取り入れるように心がけています。そしてインスピレーョンが湧いてくるような空間づくりを大切にしています。
お店のこだわりのオリーブグリーンの壁もイメージに近いものになるよう何回か塗り直していただきました。初めは寒色よりのエメラルドグリーンのような色合いでしたが、最終的に今の温かみのあるオリーブグリーンに落ち着きました。

ひとつひとつ手作りのオーナメントなど雑貨も販売

− 壁、すごく素敵な色なので納得です。雑貨や絵などはどういうところで購入されているんですか。

筧さん:特に決まっていなく、自分の感覚を大事に、良いなと思った時やときめいた時に商品を仕入れるようにしています。アンティークが昔から好きなので、そういったものを取り扱っているお店や古道具屋さんは日頃、チェックしている方なのかもしれないです。
女性の絵は誰かの肖像画とかではなく、お店をイメージした女性を描いてもらったものです。

パニエラスティックをイメージして描いてもらった絵

純粋な気持ちとライフスタイルを大切にした花との向き合い方

− 筧さんはプライベートでのお花の楽しみ方はどんな感じですか。

筧さん:ロスになったお花を家に持ち帰ってそのまま飾るということはあまりしていなく、自分が気になった花屋さんに買いに行くケースが多いです。実際に足を運んでどんな花があるのかなとか。それは研究とか偵察という意味はないんです。
お店はその店主さんの顔、カラーでもあると思うので、それをただただ思う存分味わいたいというか、実際に目で見てみたいなという純粋な気持ちで買いに行っています。

− 飾り方ではどういう風に楽しんでいますか。

筧さん:花を買ってから置き場所を決めるのではなく、「ここに飾ろう」と、場所を決めてから買いに行きます。あとは忙しい時期は部屋が散らってしまうので、そういうときはあえて花を飾らないようにしています。

− 忙しい時は無理に飾らずにその時のタイミングに合わせるという飾り方は参考になります。部屋が散らかった部屋に飾るのではなく、場を整えてから飾るのは花を迎えているようでいいなと思いました。

筧さん:今のライフスタイルだとこの飾り方が多くなりました。子どもが生まれる前はお花を飾る余裕があったので、今よりは身近だったかもしれません。子育てが落ち着いて状況が変わってきたら、またその時お花の飾り方も変わるのではないかなと思います。

まずは1つ、好きな花を選ぶ。愛着が湧く花の買い方

− 筧さん流の、花の買い方みたいなところも含めて読者の方に「こんなふうに花を楽しめたら」や、花の買い方のアドバイスをいただけますか。

筧さん:花屋さんで花を買うことは敷居が高くて、躊躇してしまうことが多いようにも感じます。
あまり身近ではない場合の方におすすめなのは、まずひとつ好きなお花を選んで、その花に合わせたものを花屋さんに選んでもらう買い方。自分が選んだ花に合わせる花はお店の方にセレクトしてもらえるのでまとまりもよく、自分が選んだお花が入っているので、愛着も湧くかと思います。

筧さん:日頃から花が身近にある方は、ある程度ご自身で気になるお花をセレクトしてみてから、ちょっとしたアクセントに『何が合いますかね?』みたいな形でまず聞いてみるのはどうでしょうか。
アドバイスを取り入れてみたら、より納得がいく方向でいい雰囲気にお花がまとまるかもしれません。

− メインとなる花をまず自分で選ぶやり方はいいですね。何も選ばないで自分の意思がないものより愛着が沸きそうです。逆に選びすぎると「これでいいのかな」と不安もでてきそう。

筧さん:花を選ぶことに「良い」「悪い」や正解はなくて、そのときの気持ちが大事かなと思います。そのときの気持ちが落ちていたら明るい色を選ぶかもしれないし、ちょっと冷静に落ち着きたいなと思った時には寒色系を選ぶかもしれない。その時々の自分がいいなと思った花を選んで、そこから幅を広げ入れられるといいんじゃないかなと思います。

ひとつに絞らないことで可能性を広げていくこと

− ありがとうございます。これから筧さんがやっていきたいことをお聞かせください。

筧さん:模索中なんですが、お花をよりカジュアルに日常の中に取り入れてもらえるよう フローリストとしてお花の魅力を最大限伝えていきたいです。
花が背景に入っていたり、モチーフとして扱われているように、美術の観点からもう少し花を色んな場面で展開できないかなと前から感じています。
それが具体的に何ができるのかはまだわかりませんが、いつも頭の片隅にある気がしています。

− お店ではレッスンやウェディング装花といろいろやっているようですが、どれかに重点を置いていくことはありますか。それともいろんなジャンルにチャレンジしていくことを続けるのか。

筧さん:今回のこの取材のお話もコンテストに応募して雑誌「フローリスト」に掲載していただいたことがきっかけとなっていますし、やることを何かひとつに絞らないように、あえてしているのかもしれません。
絞ることで可能性を狭めてしまい、出会えない人やものも中にはあるかもしれないので、中途半端にはなってしまうかもしれませんが、ひとつの形態に絞らずその時、全力で目の前にあるものを一生懸命取り組むように心掛けています。それがまた微力ながらも次に繋がるのではないかなと信じながら、牛歩の歩みで。

今はジャルダンノスタルジックに在籍しつつ、お店を営業しているのですが、状況次第でお店での活動時間も増やしていきたいです。
吉祥寺の方々にも、もっとこのお店のことを知っていただけたらいいなと切に願っています。


AFTER INTERVIEW編集後記
話すことが苦手と、照れながらも一生懸命、丁寧に受け答えしてくれた筧さん。ダンスからはじまり、花で表現を続けているということが花の写真から伝わってきました。花の写真をセレクトした時、絵画さながらで息をのみました。25種類もの草花があつまったブーケは移ろう季節の庭を切り抜いてきたかのよう。
美しい景色が脳裏に焼き付くかのように、忘れられないブーケになったことは間違いないです。

店舗情報
Panié rustique(パニエラスティック)
〒180-0001 東京都武蔵野市吉祥寺北町1-25-2
tel : 0422-27-6968
mail : contact@panierustique.jp
営業時間:不定期営業
営業日に関する詳細はHPのNEWSにて最新の投稿をご確認ください。

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