建築デザイナーとして活躍するえむさん。お部屋に一歩足を踏み入れると、個性的なインテリアと生き生きとした植物たち、そして2匹の愛犬が迎えてくれる豊かな空間が広がっています。この家との出会いから植物と愛犬との暮らしについてお話を伺いました。
名前:えむさん
職業:建築デザイナー
Instagram:https://www.instagram.com/vintagemansion_renovation/
急な立ち退きから一転。素敵なマンションと2匹の保護犬との出会い
ー とても素敵なお住まいですが、こちらに住まれてどのくらいになるんですか?
えむさん: 今、ちょうど3年半になります。息子の進学で急遽引っ越すことになって。当時暮らしていた街から進学先の学校がとても遠かったんです。それで「ちょっと引っ越さない?」と息子に話して、学校の近くで急遽家を選びました。

ー 急とはいえ、良い物件が見つかったんですね。
えむさん: いや、それが大変だったんです。実はこの家の前に、別の家に一度引っ越していまして。住み始めて3ヶ月くらい経った頃に「出ていってほしい」と言われてしまって(笑)。
ー え?そんなことってあるんですか!?
えむさん: 「オーナーさんが変わったため立ち退いてください」と。引っ越してわずか3ヶ月でしたから、結構ショックでした。立ち退くことになった家は賃貸としてはかなりお安かったようで、同じエリアで探しても同じような金額の物件が全然なくて。どうしても高くなってしまうのなら、いっそペット可物件を探して家を買っちゃおう、ずっと憧れていた犬との暮らしを始めよう!と思ったんです。

照明はインゴ・マウラーのツェッツル
ー 息子さんの進学後すぐに再度の引っ越しは、いろいろ大変でしたね。
えむさん: はい。でも、そこからドラマのような流れがありました。息子の入学式の日に、バスに乗って学校へ行く途中、外を眺めていたらすごく素敵なマンションがパッと目に入ったんです。「ああ、素敵だな。こういうところに住みたいな」と漠然と思っていて。その時はまさかそのマンションで暮らすことになるとは思ってもいませんでした。仕事で会った人に「今、家を立ち退かなくてはならなくて、新居を探しているんです……」という話をしたことから始まって、トントン拍子にたどり着いたのがこの家でした。
ー これまた、そんな奇跡的なことがあるのかと驚いてしまいます。そして、ワンちゃんたちもこのお家をきっかけにやってきたんですね。

左からてんてんとツッキー
えむさん: そうなんです。2匹とも保護犬です。以前、知人が保護犬の一時預かり活動をお手伝いしていたのを見ていて、自分も一時預かりをするかお迎えするか迷った末に、この子たちを家族として迎え入れました。
在宅ワークが変えた、植物と過ごす日々
ー お部屋には植物もたくさんありますが、これも在宅ワークになってからですか?

えむさん: 植物は全部、この家に引っ越してからお迎えしました。もともと植物は好きだったのですが、会社員で毎日通勤していた頃は、お世話というより単に買っては枯らし、買っては枯らしを繰り返していただけで。仕事が在宅ワークに切り替わってからは、本当に育てるのが難しいもの以外は枯らさずに育てられるようになりました。在宅ワークになったことで叶えられた暮らしですね。

ー 植物はどういったお店で買うことが多いですか?また、迎える時の基準があればお聞かせください。

えむさん: 実店舗で買うことが多いです。セレクトショップや、お気に入りのドッグカフェ兼お花屋さんによく行きます。犬たちと一緒に出かけて、そこで母とランチやお茶をして、植物も見ています。リプサリスや珍しい植物も置いてあって、そのお店からは5つくらいお迎えしました。
電車移動なので、犬を抱え、植物も抱えてと、両手が塞がった必死な状態で帰ることになります(笑)。他にも、ホームセンターから背の高い植物を徒歩と電車で持って帰ってきたこともありました。その時も「あ、買っちゃったな……」と思いながら必死に運びました。

ー 植物との出会いは一期一会ですからね。どちらの状況も、植物好きな人なら共感できるあるあるだと思います(笑)。

えむさん: 植物を選ぶ基準は、基本的にはお店で見て気に入ったものを迎えています。葉の裏が赤かったり黒っぽかったりする植物が好きですね。ただ、一目惚れしてもその場ですぐにスマホで「育てやすいかどうか」を絶対に調べてからお迎えするようにしています。
ー 普段、植物の管理はどうされていますか?
えむさん: 管理で使っているのはメネデールとハイポネックスです。土はプロトリーフのインドアグリーン用のものを選んでいます。鉢の数は20くらいなのですが、それでも水やりなどの管理をするとそれなりに時間も必要で、いっぱいいっぱいになることもあります。
ー 何かこだわって選んでいるものやお気に入りはありますか?

えむさん: ハンギングプランターにはこだわっていて、リッチェルさんのものを愛用しています。よくあるハンギング用のプランターは、下の受け皿に水が溜まったら外して捨てなければいけないので大変ですよね。でもこれは、受け皿をちょっと傾けるだけで隙間から水が捨てられるようになっていて、管理がすごくしやすいんです。しかも1000円以下で購入できて、余計な装飾もなくツヤ消しの質感が植物の邪魔をしないんですよ。
以前使っていたものは、もう使わなくなってしまいました。今はほとんどこれ一択です。「なんでこれがもっと流行らないんだろう?」と思うくらい(笑)。本当にお気に入りです。
ー ワンちゃんたちは植物に興味を示したりしませんか?

えむさん: 全然いじらないですね。それでも、犬たちが食べると危険な植物は届かない場所に置いています。植物を選ぶ段階でも、毒性がないかなどは確認するようにしています。
ー ちなみに、息子さんと植物やインテリアのことなどで話したりはするのですか?
えむさん: 息子は大学生なのですが、植物のこともインテリアに関しても本当に何も言ってこないですね。「またなんかやってるな」くらいの反応で、邪魔だとか文句も言われないので、ある意味すごく楽です。
お気に入りの大型ソファから逆算した、1LDKの間取り設計
ー 間取りのこだわりなど、このお部屋ができるまでの経緯をお聞かせください。
えむさん: 間取りとしては1LDKで、リビングとキッチンのほかに息子の部屋があります。リノベーションのプランニングは私自身が行い、施工は仕事でいつもお願いしている会社や監督、職人さんたちに協力してもらいました。

えむさん: 実は、このマンションを買う前に「絶対に置きたい」と決めていた大きなソファを先に買っていたんです。奥行きが1メートル、横幅もかなり大きくて、通常の日本のマンションにはまず収まらないサイズでした。だからこそ、このお気に入りのソファがしっかりと置けるように、リビングを広く取った間取りを設計しました。

ー ソファが先にあっての間取りだったんですね。ソファがこのお部屋で特別な存在感を放っている理由が納得できました。そして、壁面の収納もとてもダイナミックですね。

えむさん: 自分の苦手なことを克服できるようにと意識して作ったのが、収納まわりです。部屋が散らかって見えるのは、適切な収納がないからつい出しっぱなしにしたり、物をあちこちに置いてしまったりするからだと考えました。
ならば「すぐに片付けられる仕組み」を作ろうとプランニングしたのがこの収納です。服もここにある分だけで収まるようにして、衣替えをしなくて済むようにしています。

ー すごく良いアイデアですね。工夫という点で気になったことが一つあるのですが、お部屋の奥に見えるあの水栓……とても便利そうですね!
えむさん: あ、気づきました!? あれ、本当に作ってよかったです! 私、リノベーションの仕事をしているのに、最初の設計の時にベランダ側の水栓をつけ忘れてしまって。2年以上もの間、毎回キッチンで大きなジョウロに水を汲み、重いジョウロを持って部屋とベランダを往復しながら水やりをしていたんです。やっぱり不便すぎると思い、後から試行錯誤して取り付けました。

水栓がない時はこのジョーロで水を運んでいたそう
「欲しいものがないなら作る」DIYマインドが導いた今の仕事
ー 手編みのラグや、金継ぎされた器も気になりました。

えむさん: ラグは自分で編みました。一時期編み物にハマっていたことがあって。割れてしまった器をガラスで埋めた金継ぎは、ワークショップに参加して先生に教えていただきながら仕上げました。

えむさん: 私自身、別に編み物がしたいとか、DIYをやりたいというわけではないんです。昔の話ですが、「欲しいデザインのブランケットが売っていない」「お金がないから買えない」となった時に、「買うお金がないなら作ってみようか」と。正直なところ、やむを得ず作り始めたのがきっかけでした。ないから作る。
その「ないものは工夫して作る」という感覚の延長線上に、今のリノベーションの仕事があるのかなと思っています。ものを作るということがそのまま仕事になり、こうして続けてこられたのは本当にラッキーなことだと感じています。

ー 最後に、今後このお家で新しくやってみたいことや、買い足したいものはありますか?

えむさん: 家の中の家具のレイアウトは、気分転換に変えることはあっても、今はほぼ完成形なのでそこまで大きく変える予定はありません。毎日緑を見ながら眠ることができて、景色の豊かさや生活の幸福度が上がったのは間違いありません。ただ、室内にこれ以上植物を増やしすぎて植物だらけになり、インテリアとのバランスが崩れてしまうのは避けたいので、「これ以上はストップ」と自分に言い聞かせて気をつけています。

テーブルの下には毛糸のセット。敷いているラグはえむさん作
えむさん: その代わり、これからはベランダを少し整えて、もっと植物を増やしてジャングル化したいなと思っています。屋外の環境で一年中出しっぱなしにしても耐えられるタフな植物を探して、外の景色をもっと豊かにしていきたいですね。
AFTER INTERVIEW編集後記
日常の小さな不便や「ないもの」を、自分の手とアイデアで作り出す。それは自分自身のためだけでなく、一緒に暮らす家族にとっても暮らしやすさや快適さを作ることなのだと感じました。愛情に溢れた家づくりの姿勢には、部屋づくりや毎日の暮らしを楽しむためのヒントが数多く散りばめられていました。バルコニーなどこれからの変化もとても楽しみです。
