お部屋のインテリアとしてお馴染みの観葉植物「モンステラ」。その美しい葉の陰で、世にも珍しい「実」がなることをご存知ですか?
SNSでは「パイナップルとバナナを足したような味」と絶賛される一方で、「毒があるから危険」という怖い噂も同時に目にして、いったいどちらが真実なのか混乱していないでしょうか。
その両方とも、実は「本当」なのです。未熟な実には口内を激痛が襲う毒性があり、完熟した実はその名(デリシオーサ=美味しい)の通り、極上のトロピカルフルーツに変わります。
この記事では、モンステラの実が持つ「毒」の正体と、「安全な食べ方」まで、専門家が徹底的に解説します。
[https://andplants.jp/collections/monstera]結論|「モンステラの実」は食べられる
観葉植物としてお馴染みのモンステラですが、その実(み)は実際に食べることが可能です。学名である「Monstera deliciosa(モンステラ・デリシオーサ)」の「deliciosa」は、「美味しい」という意味を持っています。
その名の通り、完熟した果実は非常に美味なフルーツとして知られているのです。しかし、なぜ一般的に流通していないのでしょうか。
それは、成熟までに1年以上という長い時間がかかること、そして未熟な状態では強い毒性を持つため、安全な管理が難しいからです。
正しい知識さえあれば、この「幻の果実」とも呼ばれる珍しい味覚を安全に体験できるでしょう。
モンステラの実はどんな味?
モンステラの実の味は、ひと言で表現するのが難しいほど複雑で、強烈なトロピカルな香りが特徴です。多くの人が「パイナップルとバナナを足して2で割ったような味」と表現します。
実際に、ねっとりとしたクリーミーな食感はバナナに似ており、甘酸っぱくジューシーな風味はパイナップルを彷彿とさせるでしょう。人によっては、これに加えて梨(なし)やキウイ、ココナッツのような風味を感じることもあります。
非常に甘く、糖度が17度に達したという報告もあるほど。この五感を刺激するユニークな風味こそが、「美味しい怪物」と呼ばれる理由であり、多くの人々を魅了する秘密なのです。
モンステラの実の安全な食べ方

モンステラの実を安全に楽しむためには、絶対に守るべきルールがあります。その核心は「完熟」を見極めること。未熟な実には毒性があり非常に危険です。
ここでは、安全な状態を見極めるサインと、万が一食べてしまった場合の症状について解説します。
- 安全のサインはウロコが自然に剥がれるとき
- 未熟な実を食べた場合の症状
安全のサインはウロコが自然に剥がれるとき
モンステラの実が食べごろかどうかは、見た目で明確に判断できます。その最大のサインは、表面を覆う六角形の鱗(うろこ)状の皮が、下の方から自然にポロポロと剥がれ落ちてくることです。
この状態になって初めて、中の果肉が安全に食べられる状態になったことを意味します。緑色で硬い状態の実は、まだ追熟が必要です。常温で数日〜1週間ほど置き、甘い香りが強くなるのを待ちましょう。
決して、緑色の皮を無理やり包丁などで剥がしてはいけません。自然に剥がれた部分だけを少しずつ楽しむのが、安全な食べ方の鉄則です。
未熟な実を食べた場合の症状
もし未熟なモンステラの実を口にしてしまうと、すぐに強烈な症状が現れます。これは、果肉に含まれる「シュウ酸カルシウム」の針状の結晶が原因です。
この目に見えない無数のトゲが、口や喉の粘膜に物理的に突き刺さるため、焼けるような激しい痛みや、チクチク、ピリピリとした強い刺激を感じます。症状は数時間続くこともあり、ひどい場合は口内が腫れ上がる可能性もあるでしょう。
毒抜きという概念はなく、完熟によってこの結晶が変性するのを待つしかありません。万が一口にしてしまった場合は、すぐに吐き出し、水でよくうがいをしてください。
モンステラの実の入手方法と相場

モンステラの実は、その希少性から「幻の果実」とも呼ばれています。完熟させるのが難しく、一般のスーパーなどではまず見かけません。
主な入手方法は、以下の3つに限られてくるでしょう。
- 国内の産地
- オンラインショップ
- 植物園・専門園芸店
国内の産地
日本国内でモンステラの実が栽培・収穫されているのは、主に沖縄や小笠原諸島などの亜熱帯気候の地域です。
現地の市場(ファーマーズマーケット)や観光客向けの「道の駅」などで、収穫時期になると稀に出回ることがあります。値段はサイズにもよりますが、1本あたり1,000円から3,000円程度が相場とされています。
ただし、現地に行けば必ず手に入るというものではなく、出会えたらラッキーと言えるでしょう。旅行の際は、地元の市場を覗いてみるのも一つの楽しみになります。
オンラインショップ
最も現実的な入手方法は、オンラインショップやフリマアプリの利用です。専門のECサイトで稀に販売されることがありますが、価格は1本4,000円〜5,000円と高額で、すぐに売り切れてしまいます。
また、メルカリなどのフリマアプリでは、個人が栽培したものが不定期に出品されることがあります。こちらも競争率が高いですが、本気で手に入れたい場合は、アラート機能を設定して出品を待つのがおすすめです。
いずれにせよ、安定した入手経路は確立されておらず、根気強い探索が必要です。
植物園・専門園芸店
もう一つの経路は、植物園でのイベントや、専門的な園芸店での不定期販売です。
過去には、園内で収穫された実の試食イベントが開催された事例があります。また、一部の大型園芸店で、観賞用や食用として入荷した記録も存在します。
これらは非常に稀なケースであり、購入を目的とするには不確実です。
お近くの植物園や園芸店がSNSで情報を発信していないか、定期的にチェックしてみると良いでしょう。
モンステラの実に関するよくある質問

モンステラの実について、その味や安全性以外にも、多くの疑問が寄せられます。
ここでは、特に質問の多い3つのポイントをピックアップして、Q&A形式で簡潔にお答えします。
- モンステラの実は収穫してからどれくらいで熟す?
- 加熱すれば毒は消える?
- どの種類のモンステラでも実はなるの?
モンステラの実は収穫してからどれくらいで熟す?
緑色で硬い状態のまま収穫された実は、すぐには食べられません。追熟(ついじゅく)という過程が必要です。
実をビニール袋やラップで包み、直射日光の当たらない常温の場所に置いておきます。季節や室温にもよりますが、食べごろになるまで数日から1週間以上かかるのが一般的です。
焦らずに待ち、表面のウロコが根元の方から自然にポロポロと剥がれ落ちてくるのをサインとしてください。強い芳香が漂い始めたら、熟してきた証拠です。
加熱すれば毒は消える?
毒性の原因であるシュウ酸カルシウムの結晶は、理論上、加熱によって変性させる(無害化する)ことが可能です。サトイモのアク抜きと同じ原理です。
海外ではジャムなどに加工する例もありますが、どの程度の加熱時間や処理で完全に安全になるか、実証されたレシピは少ないのが現状です。
未熟な実を自己流で加熱調理するのは大きなリスクを伴います。安全性が確立されている「完熟させてから生で食べる」という方法を強く推奨します。
どの種類のモンステラでも実はなるの?
私たちが「美味しい実」として話題にしているのは、基本的に「モンステラ・デリシオーサ(Monstera deliciosa)」という品種になる実のことです。
観葉植物として人気の「ヒメモンステラ」(アダンソニーやペルツーサなど、小型で葉に穴が空く品種の通称)も、理論上は花が咲き実がなりますが、食用とされるデリシオーサの果実とは異なるものです。
また、日本のご家庭で鉢植えで育てている場合、開花・結実させること自体のハードルが非常に高いことも知っておきましょう。
まとめ
「美味しい怪物」とも呼ばれるモンステラの実について、その驚くべき味から危険な毒性、そして安全な食べ方まで詳しく解説してきました。
モンステラの実は、正しく完熟させれば、パイナップルとバナナを合わせたような、まさに「デリシオーサ(美味しい)」な味覚体験をさせてくれる、まさに幻の果実です。
しかし、その素晴らしい体験は「正しい知識」と常に隣り合わせです。この記事で最もお伝えしたかったのは、未熟な実が持つ毒性(シュウ酸カルシウム)を理解し、「ウロコが自然に剥がれる」という完熟のサインを絶対に見逃さないこと。
入手や栽培のハードルは高いですが、この知識があれば、あなたが幸運にもこの実に出会ったとき、安全にその神秘的な魅力を最大限に楽しむことができるでしょう。
[https://andplants.jp/collections/monstera]