仏花(ぶっか・ぶつばな)とは、仏壇にお供えするお花です。
故人やご先祖様に感謝の気持ちを示すとともに、綺麗なお花もいつか枯れゆく「諸行無常」を教えてくれるものと言われています。
しかし、実際に自分で生けてみると、「上手に生けられない」「バランスが悪くなる」と悩む人も多いようです。
そこで今回は、仏花の生け方について解説します。
生け方の手順や上手に生けるポイント、お花の選び方をまとめてみました。仏花を生けるのに慣れていない人や、うまく生けられないと感じる人はぜひ参考にしてみてくださいね。
AND PLANTSでは、お供えやお悔やみのお花をご用意しています。故人への想いが伝わるよう、心を込めてお作りいたします。
葬儀や法事、命日に贈るお花をお探しの方は、以下のページをご覧になってみてください。
[https://andplants.jp/collections/offering-flower]仏花を生ける際に必要な道具
まずは、仏花を生ける際に必要な基本の道具をご紹介します。
- ハサミ
- 花瓶
生けやすい道具の選び方も解説していますので、参考にしてみてください。
ハサミ
仏花を生ける際には、花切りハサミがあると便利です。花切りハサミとは、お花用のハサミであり、ホームセンターやお花屋さんなどで手に入ります。
ハサミ選びのポイントは、切れ味の良さです。
切れ味のよいハサミを使うことで、茎の断面がつぶれにくくなり、植物が効率よく水揚げできます。「お花がすぐしおれてしまう」とお悩みの場合は、ハサミを研いだり、新しいハサミに交換したりしてみるといいかもしれません。
ハサミを購入する際は、刃先が錆びにくい加工が施してある商品を選ぶといいでしょう。
AND PLANTSのおすすめは、坂源のハサミです。さっと拭くだけで刃先の汚れが落ちやすく、切れ味が長持ちします。軽くて扱いやすいので、女性にもおすすめです。
[https://andplants.jp/products/sakagen-flower-shears]花瓶
仏花を生ける花瓶は、花立てや花瓶(かひん)と呼ばれます。仏花を生ける花瓶には、基本的に決まりはありません。
仏壇の色合いや大きさに合わせた花瓶を使うといいでしょう。一般的に重さがあるほうが倒れにくく、仏壇に飾る際に適していると言われています。
花瓶の材質は、商品によってさまざまです。それぞれのメリット・デメリットを表でまとめました。
真鍮 | メリット:高級感がある、重みがあり倒れにくい デメリット:サビが発生しやすい |
陶器 | メリット:お手入れがしやすい、価格が安いものもある デメリット:欠けたり割れたりしやすい |
アルミ | メリット:お手入れがしやすい、耐久性がある デメリット:サビが発生することもある |
このほかにも、プラスチックやガラス製の花瓶もあります。インテリアや仏壇に合わせて、好みのデザインを使ってみてください。
なお、宗派によって花瓶の決まりがある場合もあります。例えば浄土真宗では、本願寺派は主に黒色、真宗大谷派は金色の花瓶を使います。迷った際は、菩提寺に相談してみるといいでしょう。
仏花の生け方の手順
では、実際に仏花を生けてみましょう。主な手順は以下の通りです。
- 奇数本のお花を用意する
- 水揚げをする
- 不要な葉や枝を整理する
- 全体がひし形になるようにお花を組む
では順番に詳しく解説していきます。
①奇数本のお花を用意する
仏花に入れるお花は、3本・5本・7本など奇数本で用意します。
割り切れない奇数は縁起のよい数と言われているためです。また、奇数はバランスがとりやすく、上手に生けられます。
お花屋さんやスーパーでは、5本や7本のお花が入った組花(くみばな)が販売されています。仏花にふさわしい色合いや種類のお花をまとめてあるため、お花選びに悩んだ時は組花を購入するといいでしょう。
②不要な葉や枝を整理する
お花を生ける前に、葉や枝の整理をしましょう。
まず、水に浸かりそうな部分の葉を取り除きます。
葉が水に浸かると腐りやすく、花瓶の水がすぐに汚れてしまうためです。水に浸かる位置で枝分かれしている茎も切り取ります。
次に、変色した葉やつぼみがあれば取ってください。
最後に、混み合った葉や大きすぎる葉を間引きます。葉の量が多いと葉に水分や栄養が取られ、お花にお水が上がりづらくなってしまいます。葉を間引くことで、切り花の持ちもよくなるでしょう。
③水揚げをする
葉や枝の整理ができたら、水揚げを行いましょう。水揚げとは、茎を切り戻してお花に水を吸い上げさせる作業です。
バケツやボウルなどに水を張り、水中で茎を斜めに切ります。水中で切る理由は、水圧でお花の先までお水が上がりやすくなるためです。
また、茎は斜めに切ることで断面の表面積が増え、より多くの水を吸い上げられます。
キクは、茎を手で折って水揚げをしましょう。折ることで茎の繊維質がむき出しになり、よく水を吸い上げると言われています。
切った後は、5分ほど水につけたままにしてください。
④全体がひし形になるようにお花を組む
次は、お花を組み合わせていきましょう。
一般的に仏花は、全体がひし形になるように組みます。花束のように茎を輪ゴムでくくって作ることが多いですが、慣れていないと難しいかもしれません。
今回は初心者でもやりやすいよう、花瓶に直接挿していく方法をご紹介します。以下の手順でお花を挿してみましょう。
- 手順1|花瓶の約3倍の長さに切ったお花①を、花瓶の一番後ろに挿す
- 手順2|お花①の下にお花②を挿す
- 手順3|お花②の右斜め下にお花③を挿す
- 手順4|お花③の下、花瓶の中央寄りにお花④を挿す
- 手順5|お花④を挟むように、両脇に小花⑤を添える
一対で作る際は、手順3のお花③を左斜め下に置いて左右対称になるようにすると見た目がよくなります。
お花が重くて花瓶が倒れる場合は、長さを調節してください。
仏花の上手な生け方のポイント
「仏花が上手に生けられない」とお悩みの人に、おすすめの上手な生け方のポイントを3つご紹介します。
- 初心者は花留めを使う方法がおすすめ
- 一番上に淡い色のお花を入れる
- お花の顔の向きを意識する
ひとつずつ見ていきましょう。
初心者は花留めを使う方法がおすすめ
花留めとは、お花を花瓶に固定する道具です。針に茎を挿して固定する剣山や、穴に茎を通して固定する七宝などが代表的です。
花瓶にそのままお花を生けると、お花の向きが変わってしまったり、うまくまとまらなかったりすることがあります。花留めがあればお花を固定できるため、初心者でも生けやすくなります。
ワイヤーを不規則にまとめて、花瓶の中に入れる方法もおすすめです。手作りで簡単にできて、お花の向きや位置の調整もしやすいです。
殺菌効果のある銅製のワイヤーなら、花瓶の中に発生する雑菌の繁殖を抑え、お花が長持ちしやすくなるでしょう。
一番上に淡い色のお花を入れる
一般的に、仏花は上から「淡い色→濃い色」となるように配色します。
下に濃い色のお花を入れることで、ひし形のバランスがよくなります。一番上に白や黄色のお花を入れて、下を赤や紫のような濃い色で締めるときれいに見えるでしょう。
明るくはっきりした色合いで作られることが多いですが、自宅であれば好みの色合いでもかまいません。
パステルカラーにしたり故人の好きな色のお花を選んだり、日々のお供えに彩りをつけてみるのもいいですね。
お花の顔の向きを意識する
切り花をよく見てみると、お花の顔がきれいに見える向きがあります。
自然のお花や茎は微妙に曲がっているので、少しの角度で見え方や印象が変わります。茎を持って、くるくると回してみるとよく分かるかもしれません。
仏花を生ける際は、全体的にお花の顔がやや斜め上を向くように生けるときれいです。
さらにバランスよく見せるポイントは、一番下のお花の向きです。正面から見て、一番下のお花の顔がよく見えるように生けるとまとまった印象になります。
上のお花はやや上向きに、外側のお花はやや外向きに生けてみましょう。
お花の顔の向きを調整するだけで、ぐっと上手に生けられます。ぜひ試してみてください。
仏花に使うお花の色|白・黄・紫・赤・ピンク
仏花は一般的に、3色もしくは5色のお花で作られます。色の組み合わせは、以下の通りです。
- 3色|白・黄・紫
- 5色|白・黄・紫・赤・ピンク
色の種類や数に厳密な決まりはなく、白・黄・紫・赤の4色で作られることもあるようです。故人の好きな色や、季節に合ったお花の色を使ってもかまいません。
宗派や地域によって違いがあるため、菩提寺に聞いてみるのもいいですね。
なお、四十九日までは白を基調にした仏花を用意しましょう。濃い色を入れるのは四十九日を過ぎてからと言われています。
仏花にふさわしいお花の種類
では、どんな種類のお花が仏花にふさわしいのでしょうか。
仏花によく使われる主なお花は、以下の通りです。
- キク
- カーネーション
- スターチス
- 季節のお花
生けやすくなるお花の選び方や、お手入れのポイントも合わせて解説していきます。詳しく見ていきましょう。
関連記事:仏花に適したお花の種類|お花の選び方や自分で作る方法
キク
キクは邪気を払う効果があると言われ、仏教でよく使われるお花のひとつです。
さらに、一年中安定した品質のお花が出回ることや、非常によく長持ちすることから、日々のお供えに適したお花と言えます。
大輪からスプレータイプまでさまざまな品種があり、大きさや色も豊富です。仏花を作る際は、輪菊やピンポンマムを一番上に入れ、サイドに小菊を入れて形を整えるといいでしょう。
花瓶の水を替える際に、キクの茎についたぬめりを洗い流してあげるとより長持ちします。
カーネーション
長持ちするカーネーションも、仏花にふさわしいお花です。枯れても花びらが散りにくいため、仏壇を汚しにくいのも選ばれる理由のひとつです。
1本の茎にお花がひとつ咲くスタンダードタイプと、小さなお花が枝分かれして咲くスプレータイプがあります。
スプレータイプは仏花を生ける際のバランス調整に使いやすく、1本あると重宝します。
また、カーネーションはお花の色が豊富です。はっきりした色合いから優しい色合いまでさまざまな種類があります。故人のイメージやその日の気分に合わせて選ぶのもいいですね。
カーネーションを選ぶ際は、お花の根元部分が固くしまっているものを選ぶとより長持ちします。
スターチス
色褪せないスターチスも、仏花によく使われます。
ほかのお花が枯れてしまってもスターチスが鮮やかさを保ってくれるため、非常に重宝するお花です。
白・黄色・紫・ピンクの種類があり、仏花にもふさわしい花色です。濃い色から淡い色まであるので、お好みに合わせて選べるでしょう。
枝分かれしていて小分けにできるため、ひし型のバランス調整をしたい時にも使えます。
茎がぬめりにくく、お手入れが少ないお花です。
季節のお花
仏花には、季節のお花を取り入れるとよいと言われています。仏花に向く代表的なお花をまとめてみました。
- 春|アイリス、キンセンカ、マーガレット
- 夏|ジニア(ヒャクニチソウ)、グラジオラス、ヒマワリ
- 秋|リンドウ、ケイトウ、ススキ
- 冬|ストック、ネリネ、シンビジューム
いずれも長持ちしやすく、仏花にふさわしい色合いのお花です。
季節のお花を入れると、年月の巡りに気付かされることもあります。故人との思い出がふと蘇ることもあるでしょう。故人が好きだったお花を入れると素敵ですね。
また、お盆にはハスやホオズキ、お正月にはナンテンやマツを入れる地域もあります。
AND PLANTSでは、お供えやお悔やみのお花をご用意しています。
葬儀や法事、命日に贈るお花をお探しの方は、以下のページをご覧になってみてください。
[https://andplants.jp/collections/offering-flower]仏花にふさわしくないお花
仏花にふさわしくないと言われるお花の種類もあります。代表的な種類は、以下の6つです。
- トゲがあるお花
- 毒があるお花
- 香りが強いお花
- 花びらが散りやすいお花
- 縁起がよくないお花
- 食べられるお花
ふさわしくないと言われる理由を見ていきましょう。
トゲがあるお花
仏花やお供えのお花には、トゲのあるお花は避けたほうがよいと言われています。
トゲには殺生のイメージがあることや、「故人や仏様の目をつく」と言われることが理由です。
トゲのあるお花は、バラやアザミなどが挙げられます。
しかし、故人が好きだったお花であれば、お供えしてよいとも言われています。トゲのあるお花を入れる際は、できるだけトゲを取り除いてお供えしましょう。
毒があるお花
毒は「仏様に毒を盛る」意味を持つため、仏花にはふさわしくないと考えられています。毒のあるお花は、スズランやチューリップ、アジサイなどが代表的です。
しかし、ユリやスイセン、ホオズキなど、一般的に仏花やお供えに使われるお花にも有毒成分が含まれるものが数多くあります。猛毒でない限り、お花の扱いに配慮すれば生けても大丈夫でしょう。
スズランのように花瓶の水に有毒成分が溶け出す種類もあるため、小さいお子さんやペットがいる家庭では特に注意してください。
香りが強いお花
お線香の香りをかき消してしまうような、強い香りのお花もふさわしくありません。
香りの強いお花は、カサブランカやスイセンが挙げられます。特に法要のように人が集まる場合には、強い香りで体調が悪くなってしまう人もいるため避けた方がいいでしょう。
なお、ほのかに香る程度であれば問題はないと言われています。
仏花にはお花の香りを仏様やご先祖様に楽しんでいただく意味もあります。季節の優しい香りをお供えしてみてください。
花びらが散りやすいお花
花びらが散りやすいお花は、仏壇やお部屋を汚してしまう可能性があります。
花びらが散りやすい種類は、ウメやサクラ、コデマリ、ハギなどが代表的です。また、ユリやヒマワリのように花粉が落ちやすいお花も避けた方がいいでしょう。
もし自宅でお供えする際は、花びらが散らないうちに交換するといいですね。
花びらが散りやすいお花は、花瓶を持ち上げた際に、花びらが一斉に散ってしまうこともあります。水替えの際は気をつけて行ってください。
縁起がよくないお花
仏花に不向きと言われる、縁起のよくないお花もあります。主な種類を以下にまとめてみました。
- ツバキ|お花の首が落ちるため、不吉なイメージを持つ
- クロユリ|佐々成政(さっさなりまさ)伝説の謂れがあり、不吉なお花とされる
- ヒガンバナ|赤色や毒性から、「死」を連想させるとされる
- 一日花|ムクゲやフヨウなど。すぐにしおれる性質が不向きとされる
クロユリは「呪い」や「復讐」の意味があり、一部の地域では不吉なお花と言われています。
クロユリの詳しい由来や他の怖い意味を持つ植物については、怖い意味の花言葉一覧にもまとめています。気になる方は参考にしてみてください。
食べられるお花
稲穂やムギ、オクラなど、人が食用にする植物も仏花には不向きです。
ネズミのような動物や虫が寄ってくる可能性もあるため、避けた方がいいでしょう。
しかし、ナノハナのように、季節のお花として仏花に添えられるケースも多くあります。
近年は住宅の様式に合わせて仏壇のデザインも多様になり、仏花のルールも柔軟になってきています。ルールに縛られすぎず、故人を想う気持ちに合ったお花をお供えすればよいと考える人も増えているようです。
心配な場合は、菩提寺に相談してみるのがおすすめです。宗派や地域に沿った風習を教えてくれるでしょう。
仏花の生け方についてよくある質問
ここからは、仏花の生け方についてよくある質問を解説します。
- 仏花のお花はどこで買える?
- 宗派によって違いはある?
- 仏花は一対でないとダメ?
- 生花以外を飾ってもいい?
順番に見ていきましょう。
仏花のお花はどこで買える?
仏花は、お花屋さんやスーパー、ホームセンターなどで購入できます。
スーパーやホームセンターなどには、すでに仏花の形に組まれているものや、適したお花が3本〜7本入っている組花が販売されています。
お花屋さんにも仏花や組花が置かれていますが、店頭にない場合でも注文すれば作ってもらえるでしょう。
仏花の生け方が分からない人は、初めのうちはお花屋さんで仏花を作ってもらうのがおすすめです。使用するお花の種類や色、組み方が分かってきたら自分で生けるといいですね。
宗派によって違いはある?
基本的に、仏花の生け方は、宗派による違いはほとんどありません。
3本・5本・7本の奇数本で、3色や5色の色合いで作るのが基本です。いずれの宗派もキクやカーネーションをメインにして、季節のお花で生けます。
しかし、地域や宗派によって、シキミやヒサカキなどの葉を添えることもあります。
分からない場合は、菩提寺に聞いてみたり、地域のお花屋さんで仏花を作ってもらったりするといいでしょう。お住まいの地域の風習に合った仏花を知っておくと、法要のように多くの人が集まる際にも困りません。
仏花は一対でないとダメ?
仏花は、必ずしも一対でなくてもかまいません。
仏壇の形式や大きさによっては、仏花が1つでも問題ないでしょう。
正式な仏壇では、お供えは五具足(ごぐそく)が基本です。お線香を立てる香炉を1つ・花瓶を2つ・ ろうそくを立てる燭台を2つ置きます。
しかし家庭用の仏壇では、香炉が1つ・花立てが1つ・燭台が1つの三具足(さんぐそく・みつぐそく)で用意することが多いです。そのため、日々のお供えでは仏花は1つでよいと言えます。
なお、一対で用意する場合は、仏花も左右対称になるようにバランスよく生けましょう。
生花以外を飾ってもいい?
仏花は、基本的には生花がよいと言われています。
仏花は仏様やご先祖様にお花の香りを楽しんでいただく意味があるためです。また、きれいなお花がやがて枯れゆく姿に、仏様の「諸行無常」の教えが込められていると考えられています。
しかし、日々のお手入れの大変さやコストの問題から、プリザーブドフラワーや造花にする人も少なくありません。気持ちが込められた仏花であれば、生花でなくてもよいと考える菩提寺も増えています。
普段はプリザーブドフラワーや造花で彩り、命日や法要の際は生花を生ける方法もいいでしょう。日々の暮らしに無理のない範囲で、お供えしてみてください。
まとめ
仏花は、宗派や地域によっても違いがあります。
特に地域の風習に関しては曖昧な部分もあり、はっきりと決められているわけではありません。分からないことがあれば、菩提寺や地域のお花屋さんに聞いてみるといいでしょう。
仏花をお供えする際は、故人を偲ぶ気持ちやご先祖様への感謝の気持ちが大切です。日々感謝の気持ちを込めながら、季節のお花をお供えしてみてください。
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