手のひらを広げたような葉が特徴的なパキラ。別名「マネーツリー」とも呼ばれており、風水でも人気の観葉植物です。
パキラは育てやすいだけでなく、「挿し木」と呼ばれる方法で増やしやすい特徴があります。大きなパキラを育てながら、ミニサイズのパキラを増やすことが可能です。
今回はパキラの挿し木について解説します。挿し木の時期や方法を理解することで、挿し木でパキラを簡単に楽しく増やすことができるでしょう。
最後には挿し木だけでなく、別の方法の増やし方にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
[https://andplants.jp/collections/pachira]パキラを挿し木する時期|5月~7月
パキラの挿し木時期は5月~7月です。熱帯地域に自生するため、気温が徐々に上がる時期に生育が活発になります。
5月~7月は気温上昇と共に湿度も上がるので、空気が乾燥することも少ない時期です。そのため、葉や土の乾燥で挿し木が失敗することが少なく、挿し木の成功率が高いとされています。
8月~9月も挿し木は可能ですが、新しい芽や根が出てすぐに秋冬になるため注意が必要です。挿し木は5~7月に行い、株を育てた状態で秋冬を迎えると、パキラの挿し木苗は冬越ししやすいでしょう。
パキラの挿し木に必要な道具
ここでは、挿し木に必要な道具を紹介します。
枝葉を切る剪定ハサミは清潔で切れ味のよいものを準備しましょう。不清潔で切れ味の悪い剪定ハサミは病原菌が入ったり、切り口の組織が潰れたりして発根が阻害される可能性があります。
挿し木する土は市販の挿し木挿し芽用の土、または小粒の赤玉土がおすすめです。栄養分の入った土だと発根が阻害されるので、挿し木には肥料入りの土は使わないようにしましょう。
挿し木時には床が汚れないように、園芸用シートがあると作業がしやすいです。園芸用シートの代わりに新聞紙やビニールシートでも代用できます。
パキラの挿し木方法
パキラの挿し木に必要なものを準備したら、実際に挿し木に挑戦してみましょう。挿し木方法は以下の5つの手順で行います。
- 挿し穂を作る
- 挿し穂の葉を2~3枚にする
- 1時間ほど切り口を水に浸ける
- 挿し木用の土に植える
- 明るい日陰で管理する
それぞれの手順を解説します。
パキラの挿し木方法を動画でご覧になりたい方は、AND PLANTSの植物バイヤーが下記にてわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
①挿し穂を作る
パキラの枝先から10~15㎝の長さで剪定した枝を挿し穂とします。挿し穂は若い枝ほど、発根がしやすいです。そのため、古い枝を挿し穂とすると挿し木の成功率が下がるので注意してください。
パキラは枝から長い葉柄が伸びて、手のひらのような葉を広げています。この葉柄の部分を切って挿し木しないように気を付けましょう。
葉柄も挿し木することで発根しますが、成長点がないため新芽は出てきません。つまり、その後の成長はしないので、必ず枝を切って挿し穂にしてください。
②挿し穂の葉を2~3枚にする
パキラの枝を切って、複数の葉柄が伸びている場合は、葉を2~3枚だけ付けた葉柄1つだけにしましょう。葉を減らすことで葉から水分が出ていく蒸散をコントロールして、乾燥によって枯れることを防ぐことができます。
1つの挿し穂に1つの葉柄と2~3枚の葉があるくらいが目安になります。この時に、パキラの5枚ある葉を2~3枚にするのが難しい場合は、5枚とも半分に切って蒸散を減らす方法も効果的です。
もし葉の葉柄が長くて、土に挿しにくかったり挿しても重さで倒れたりする場合は、葉柄を切って葉が付いていない状態にしても問題ありません。パキラは挿し木で発根しやすい植物なので、葉がなくとも新芽が出てくるでしょう。
③1時間ほど切り口を水に浸ける
挿し穂の葉を整理したら、水を溜めた容器に挿し穂の切り口を1時間ほど浸けて吸水させます。しっかりと水分を吸収させることで、挿し木後に枯れにくい挿し穂になるためです。
また、植えるまでに切り口の乾燥を防ぐこともできるので、結果的に発根しやすくなります。さらに、吸水させる水に発根剤を薄めておくと、挿し木後の発芽率がより上がるでしょう。
吸水させる前に、挿し穂の切り口部分をV字に切って吸水面積を広くしておくと、より効率的に吸水できます。
④挿し木用の土に植える
挿し木を挿す鉢に、植え替えと同様に鉢底網を敷いて鉢底石を入れます。その上から挿し木挿し芽用の土、または小粒の赤玉土を入れてください。
鉢の縁から親指の爪一つ分くらい(1~2㎝)ほどウォータースペースを取っておくと、水やりした時に土が溢れにくいです。挿し木用の土に細い棒で深さ5㎝~10㎝程の穴を複数あけて、それらの穴に挿し穂をそれぞれ入れて優しく植えます。
⑤明るい日陰で管理する
挿し穂を土に植え付けたら、たっぷり水やりして明るい日陰で管理してください。挿し木したばかりの時は発根していないので、直射日光に当てると枯れる可能性が高いためです。
明るい日陰で、水切れがないように2~3週間ほど管理すると発根して新芽が出てくるでしょう。葉を付けた葉柄が3本~5本伸びてきたら、優しく鉢から取り出して一鉢ずつ植え替えて育ててください。
パキラの育て方|挿し木成功後
パキラの挿し木成功後は、新芽や根が出始めたばかりです。そのため、慎重な育て方をしてください。
挿し木が成功しても、その後の育て方が悪いと枯れる恐れがあるためです。以下の3つのポイントに絞って解説します。
- 植え替え
- 置き場所と日当たり
- 水やりの頻度
パキラの詳しい育て方は「パキラの育て方」を参考にしてください。
①植え替え|小さめの鉢に植える
パキラの挿し木成功後は、それぞれ一鉢ずつ小さめの鉢に植え替えます。まずは、3号(直径9㎝)ほどの鉢に植え替えるとよいでしょう。
このときに鉢が大きすぎると、水やり後に土が乾燥せず根腐れする可能性があるので気を付けてください。鉢には鉢底網を敷き、その上に鉢底石を入れて観葉植物の土と一緒に植え替えます。
新芽が出始めたばかりのパキラは、根が繊細なので植え替える際に切れたり折れたりしないように注意が必要です。
筆者が園芸店に勤めていた時のお客様は、この植え替えのタイミングで「根を切ってしまい、枯らしてしまった」と話されていました。
挿し木苗は、土から根を綺麗に取り除くのではなく、周りの土ごと植え替えるようにすると安心です。
さらに詳しい植え替え方法を知りたい方は「パキラの植え替え方法」を参考にしてください。
②置き場所と日当たり|柔らかい光に当てる
パキラを植え替えた後は、直射日光の当たらない明るい日陰やレースカーテン越しの柔らかい光で管理してください。植え替え直後に、直射日光に当てると葉焼けする恐れがあるため注意が必要です。
室内の窓際に置くと、日差しの角度によって植え替え直後に直射日光が当たる場合があります。窓際に置く際は、レースカーテン越しに柔らかい光を当ててください。
その後、新芽が出てくると、土の中で新しい根が順調に伸びてきている証拠です。そのまま、元気に小さなパキラを育てましょう。
③水やりの頻度|水切れに注意する
挿し木が成功して植え替え後のパキラの水やりは、土の表面が乾燥したらたっぷり水やりしてください。この時に、発根剤を水に薄めて水やりすると、発根が促進されて生育がよくなります。
特に、新芽の勢いがなかったり数が少なかったりする場合は、発根剤を与えながら水やりすると効果的です。ただし、受け皿に水を溜めたり土が乾いていないにもかかわらず水やりしたりしないでください。
発根したばかりの根が腐ってしまいます。また発根したばかりの根は、乾燥に弱いので水切れの状態が長く続かないように注意しましょう。
そのため植え替え後は、今まで通り適切に水やりすることが重要です。
パキラの増やし方|挿し木以外
ここでは、パキラの挿し木以外の増やし方について解説します。挿し木以外の増やし方は以下の3つです。
- 水挿し
- 取り木
- 種まき
それぞれの手順を解説します。
①水挿し(水耕栽培)
水挿しとは、挿し木同様に準備した挿し穂を水に浸けて発根させる方法です。水を溜めた容器に、挿し穂の切り口が浸るように入れて、直射日光に当たらない明るい場所に置きます。
生育期の5月~7月であれば、約1ヶ月で発根するでしょう。水は土と違い、腐敗物を分解する微生物がいません。
そのため、容器の水は少なくとも2~3日おきに交換してください。そのままの水で育てると、水が濁ったり腐ったりすることもあるので注意します。
水挿しで発根した場合は、そのまま水栽培で育てることも可能です。
②取り木
取り木とは、幹や枝の樹皮を剥がして水苔で巻いて発根させたのち切り取り増やす方法です。パキラの枝節のすぐ下を環状に薄くカッターで切り込みを入れて、皮を1周するように剥ぎ、その部分に水苔を巻きます。
湿らせた水苔が乾燥しないように、上からビニールなどで包んでおくと管理が簡単です。その後1か月ほどすると、枝節の部分から根が出てきます。根を切らないように切り取り、そのまま新しく植えてください。
パキラは挿し木で簡単に増やせるため、多くの場合は取り木は行いません。幹部分から取って増やしたい場合は、取り木だと増やしやすいでしょう。
③種まき
パキラは種まきで増やすことができます。アオイ科パキラ属のパキラは、別名「カイエンナッツ」と呼ばれており、その名の通りパキラの種はナッツのような形です。
観葉植物としてインテリアグリーンの印象が強いですが、放射状の美しい白花を咲かせます。しかし、大株のパキラでしか花は咲かないため、種を収穫したい場合はパキラを長年育だてて立派なパキラにしてください。
パキラは大株であっても必ず花が咲くわけではないため、注意が必要です。開花後は、ヤシの実のような果実を付けます。
その後、熟した果実の硬い果皮はひび割れて、種がこぼれ落ちます。収穫した種は、一晩水に浸けてください。
その後、20~30℃の温度を維持して種まきすると発芽します。発芽したら温度を維持したまま、パキラの育て方に沿って適切に育ててください。
パキラの種はインターネットでも手に入れることが可能です。生育期に販売しているので、手に入れたら気温が暖かいうちにすぐに種まきしましょう。
パキラの挿し木によくある質問
最後にパキラの挿し木によくある質問とその答えを以下にまとめました。
- パキラの幹で挿し木できる?
- パキラの挿し木苗で編み込みは可能?
- パキラの挿し木を水から土に植え替えてもいい?
- パキラの挿し木が大きくならないのはどうして?
それでは具体的に見ていきましょう。
パキラの幹で挿し木できる?
パキラの幹では挿し木は難しいでしょう。パキラの太い幹は木質化していることが多く、木質化していなくとも、伸びた枝に比べて古く発芽発根しにくいためです。
もし、パキラの太い幹がある状態で新しく増やしたい場合は、挿し木ではなく取り木をおすすめします。ただし、取り木であってもパキラの幹から根が出てくるのは時間がかかります。
生育期の5月~7月に行い、秋前までに発根させてから切り取り、植え替えてください。10月までに発根しなかった場合は、その年は取り木で増やすことはできないでしょう。
パキラの挿し木苗で編み込みは可能?
パキラの挿し木苗で編み込みは可能です。挿し木苗を1つの鉢に複数植え付けて成長するに従い、編み込み固定します。
編み込んで固定した複数のパキラが、そのまま成長したら再度編み込み固定してください。固定には針金やクリップなどを用いるとよいでしょう。
この作業の繰り返しによって、挿し木苗の編み込みができます。しかし、挿し木苗ではパキラの根元は太りにくいため、比較的ほっそりとした編み込みパキラになることには注意してください。
パキラの挿し木を水から土に植え替えてもいい?
パキラの挿し木を水から土に植え替えても大丈夫です。ただし、水と土の環境は異なるため、植え替え直後は生育が悪くなる可能性があります。
なぜなら、水中と土中で生えた根は性質が違うためです。植え替えた後、水中の根は土環境に慣れて、適した根を伸ばします。
その間に、葉が黄色くなったり落ちたりするかもしれませんが、新芽が出るまで見守ることがポイントです。慌てて植え替えると、根痛みの原因になるので注意してください。
水挿しで根がまだ出ていない場合は、土に植え替えて発根しても成長には問題ありません。
パキラの挿し木が大きくならないのはどうして?
パキラの挿し木が大きくならないのは、「日当たり」「温度」「肥料」が関係していると考えられます。
パキラは日当たりを好む植物なので、明るい室内で育ててください。日差しが入らないほど暗い場所では、大きく育ちません。
また、熱帯地域原産の植物であるため、生育温度は20~30℃です。この生育温度を維持するほど大きく成長し、15℃以下になるほど生育が緩慢になります。
早く大きくしたい場合は、冬でも温度を維持できる仕組みを作るとよいでしょう。挿し木して根が出たばかりの時に肥料を与えると根焼けしますが、発根後1~2か月経つと根もしっかり伸びているはずです。
このタイミングで、土の上に置く置き肥や水に薄める液肥を与えると大きくなりやすいです。ただし、気温の下がる秋以降に肥料を与えると根痛みの原因になるので注意してください。
パキラの挿し木苗は、根元が太りにくい性質があります。根元を大きく育てたい場合は、種から育ててください。
まとめ
パキラは手のひらのような葉を広げる人気の観葉植物です。育てていると、その可愛らしさから、つい増やしたくなるのではないでしょうか。
パキラは、挿し木で増やしやすい植物です。そのため、パキラを初めて育てる方でも、簡単に挿し木を行うことができます。
最初は上手に挿し木ができるか不安に思うかもしれません。しかし、小さな枝から育つ枝葉を見ると、パキラを増やして育てる楽しみをきっと感じるでしょう。
挿し木が上手になると気軽にパキラを増やせるので、出窓やデスクの上などに小さなパキラを飾ることもできます。ぜひ、パキラの挿し木を楽しんでください。
挿し木の際は、パキラの育て方を再度目を通しておくといいでしょう。