胡蝶蘭の自然の姿

胡蝶蘭の自然の姿|原産地の環境や生態について

胡蝶蘭と聞くと、鉢植えの豪華な贈答用胡蝶蘭を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。美しい花が綺麗に揃って咲く姿は、まさにお祝いに相応しいと言えます。

しかし、実はその姿は人工的に整えられたものです。そこで、今回は胡蝶蘭の自然の姿を詳しく紹介します。

自然の姿を知ることで、きっと新たな胡蝶蘭の魅力に気づくでしょう。原産地における自然の姿や生態などを知っておくだけで、鉢植え以外の楽しみ方もできます。

最後まで一読すると、花が終わった胡蝶蘭をインテリアグリーンとして飾りたくなるはずです。

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胡蝶蘭の原産地における自然の姿

胡蝶蘭の原産地は、主に台湾やフィリピン、インドネシアなど東南アジアの熱帯地域です。樹木の幹や岩肌に根を着生させて育ちます。

つまり、土に根を張り巡らして生きているわけではありません。樹木や岩肌に根を張って株を支えながら、空中で葉を広げて生育します。

原産地では、胡蝶蘭は樹木や岩肌にくっついて生育している状態が自然の姿です。空中でアーチ状に花茎を枝垂れさせて、美しい花を咲かせる姿はワイルドな印象を与えてくれます。

胡蝶蘭が原産地で育つ環境と生態

木に着生して花を咲かせている胡蝶蘭

胡蝶蘭は東南アジアの熱帯地域が主な原産地であるため、一年を通して暖かい環境で育っています。赤道に近い熱帯地域の年間平均気温は20~25℃程度です。

それぞれの原産地では、乾季はあるものの雨が降りやすい環境から熱帯雨林を広く形成しています。湿潤な熱帯雨林気候の中、樹木や岩肌に着生して育っている胡蝶蘭の姿を想像できるのではないでしょうか。

胡蝶蘭は着生植物であるため、根も特殊な進化を遂げています。根は株を支えるためだけでなく、雨で湿った木肌や岩肌、空気中からも水分や養分を吸収。

雨があまり降らない乾季を生き抜くために、水分を溜められるように肉厚になりました。

葉も水分を溜められるように肉厚になり、水分の蒸発を防ぐために夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込む生態に変化しています。

胡蝶蘭を自然の姿で楽しむ方法

素焼き鉢に着生させている蘭の写真

上記の写真は胡蝶蘭ではありませんが、筆者が育てている「バンダ・ルースネアリー」と呼ばれる着生蘭です。根を水苔で巻いて素焼き鉢に入れて、空中に吊るして育てています。

このバンダ・ルースネアリーのように、自然の姿で楽しむ方法を紹介します。

  1. 着生させるアイテムを選ぶ
  2. 水苔を使って着生させる
  3. 飾る

筆者は園芸店時代に胡蝶蘭をコルクやヘゴ板に着生させて、壁に掛けるインテリアグリーンとしても提案を行っていました。ぜひ参考にしてみてください。

①着生させるアイテムを選ぶ

胡蝶蘭を自然の姿で楽しむためには、着生させるアイテムを選ぶ必要があります。

  1. コルク
  2. 流木
  3. ヘゴ板
  4. チークバスケット(ウッドバスケット)
  5. 素焼き鉢

飾り方にもよりますが、胡蝶蘭の根が木に着生する姿を楽しみたい方は木製のアイテムを選ぶと良いでしょう。

②水苔を使って着生させる

胡蝶蘭を着生させるためには、水苔の使用がおすすめです。湿らせた水苔を根が抱え込むように付着させ、その上から薄く水苔で包みます。

水苔で根を包んだ部分を、着生させるアイテムに固定してください。タコ糸や麻紐、絹糸などで株がぐらつかないように巻き付けてください。

固定する紐は、なるべく天然素材をおすすめします。見栄えが良いのはもちろんですが、釣り糸や針金、ビニールひもなどは、根を傷めやすいためです。

固定後は、適切な環境で育てていると、徐々に根が伸び始めて着生していきます。水管理や温度などの育て方や適切な環境管理が気になる方は、「胡蝶蘭はほったらかしでも育つのか」の記事を参考にしてください。

③飾る

胡蝶蘭をコルクやヘゴ板などに固定したら、壁際や窓際に飾ってみましょう。壁や窓に立てかけるだけでなく、紐やフックで吊るしてもおしゃれです。

胡蝶蘭の板付をS字フックを使って飾っている様子

胡蝶蘭の葉や伸びてくる根を立体的に楽しめるほか、ワイルドな姿で美しい花を観賞できます。鉢植えでは見れない胡蝶蘭の自然の姿をインテリアとして楽しんでください。

ただし、しっかりと着生するまでは、株がグラグラする場合があります。霧吹きや水やり以外に、不用意に触って株が落ちないように注意してください。

胡蝶蘭の自然の姿に関するよくある質問

根がぶら下がるほど伸びている蘭の写真

胡蝶蘭の自然な姿に関するよくある質問とその答えを以下にまとめました。

  1. 日本に野生の胡蝶蘭は自生している?
  2. ぶら下がっている根は、見た目が悪いので切ってもいい?

それでは具体的に見ていきましょう。

日本に野生の胡蝶蘭は自生している?

日本には、沖縄に「ナゴラン」と呼ばれる胡蝶蘭の一種が自生しています。学名は、「Phalaenopsis japonica」です。

沖縄県の名護岳周辺で発見されたことから、「ナゴラン」と名付けられています。贈答用の大きな花が咲く胡蝶蘭とは異なり、薄黄緑色に赤褐色の模様が入った小輪の花を咲かせます。

ぶら下がっている根は、見た目が悪いので切ってもいい?

生きている胡蝶蘭の根は切らないでください。着生させて育てていても、すべての根がぴったりと着生させたアイテムにくっつくわけではありません。

一部の根は、株元からぶら下がるように伸び続けることも多いです。スカスカに枯れているのであれば良いですが、ぷっくりと膨らみ生きている場合は切らないようにしましょう。

剪定口から枯れ込む恐れがあります。また、空中からの水分や養分吸収、光合成などに貢献しているため、生育に影響を及ぼす可能性が高いです。

ぶら下がっている根はそのままにして、根がぐんぐん伸びる胡蝶蘭の自然の姿を楽しんでください。

まとめ

贈答用の鉢植え胡蝶蘭をよく見かけるため、「胡蝶蘭は土で育っている」「複数の花茎が綺麗に並んで花が咲く」と思っている方は多いです。しかし、本来の姿は樹木の幹や岩肌に着生して、ワイルドも花を咲かせます。

胡蝶蘭の自然の姿を知っておくと、胡蝶蘭を着生させる楽しみ方も可能です。花が咲き終わった胡蝶蘭を新たに植え替えるだけでなく、ぜひ自然の姿で楽しむために着生にチャレンジしてみてください。

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田中 秀和
小さな時から花や観葉植物が好きで、田舎の野山を駆け回っては植物を採集して育てていました。 今でも自宅では多肉植物やサボテン、コーデックスを中心に様々な観葉植物を育てています。 総合園芸店で働いていたこともあり、植え替えやお水やりなどの管理、販売、お客様からのご相談ご依頼を経験。観葉植物の素敵な魅力や育て方を、目の前にいるような感覚でお届けできればと思います。 一緒にかけがえのない一鉢を見つけましょう。

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