花屋ではあらゆる道具を使って、日頃のお手入れや、ラッピングの際に見栄えがよくなるような工夫をしています。この記事では、花屋に必要な道具を知りたい方のために、実際にどのような道具を揃えておくと良いのかを花屋での勤務経験があるライターが選び方のコツとあわせて解説します。
花をより良い状態で長持ちさせることや、素敵なアレンジやラッピングをすることはお店のイメージや集客、売上アップにもつながります。これから花屋の開業を考えている方はもちろん、すでに花屋で勤務・開業されている方もぜひ参考にしてください。
花屋がお手入れで必ず使う道具
まずは、花のお手入れで必ず使う道具を押さえておきましょう。
- 花バサミ
- 剪定バサミ
- トゲ取り
- フローリストナイフ
- ゴム手袋
花バサミ
花のお手入れ専用のハサミです。軽い力で茎を簡単にカットでき切れ味が良いため、水切りをする際には花バサミを使ったほうが、切花が長持ちするといわれています。
花バサミは持ち手の形状で特性が異なり、「わらび手」と呼ばれる指を通す輪がないタイプと、「つる手」と呼ばれる一般的なハサミの形をしたタイプがあります。硬くて太い枝や茎は「わらび手」を、細かいお手入れには「つる手」を使うといいでしょう。
大きさや重さはハサミによって異なるため、ご自身の手の大きさに合ったサイズのハサミを選びましょう。手に合わないものは疲れやすく苦痛が生じてしまいます。茎の太さや繊維の固さで、ハサミを変えて断面をきれいにカットするとより長持ちします。
剪定バサミ
花バサミよりも、やや作りが重厚なハサミです。少しの力で簡単にカットできるため、茎が固く、繊維が多い植物のカットに使用します。なかには伸縮するタイプもあり、背の高い植物の剪定がある場合にはとても便利です。
トゲ取り
茎に傷がつきやすいバラをはじめ、トゲのある植物にはトゲ取りを使うと簡単でキレイに処理ができます。挟むタイプや手袋型、シリコン素材など多様な種類があるため植物によって使い分けることもおすすめです。
フローリストナイフ
ハサミに比べて茎の断面をより鋭くカットでき、水揚げやアレンジメントの際に大変重宝します。使いこなすまでに少し練習が必要なアイテムのため、ハサミと併用しながら上手に活用してください。
ゴム手袋
花や植物のお手入れは、水や土、枯れ葉などにも頻繁に触れます。日ごろから手荒れしやすい方は手袋をはめることをおすすめします。ラテックスアレルギーの場合は、痒くならないようにラテックスフリーのゴム手袋を選んでください。
アレンジメントに必要な道具
続いて、花のアレンジメントで使う道具を紹介します。
- 紙バサミ
- デザインバサミ
- ピンセット大小
- ワイヤー
- フローラルフォーム
- フローラルテープ
紙バサミ
ラッピング紙やセロハン、リボンなどのカットに欠かせません。花バサミでも代用は可能ですが、やはり、固い枝などを切るため刃が欠けやすく傷みやすいため、紙バサミを別で用意することをおすすめします。
デザインバサミ
デザインバサミは、別名「手芸ハサミ」とも呼ばれており、ワイヤーを簡単に切れる刃がハサミ本体に搭載されており、持ち替える必要がなく作業がサクサク進むため、大変便利です。ラッピングがキレイに仕上がるため、一つ備えておくといいでしょう。
ピンセット大小
例えば、プリザーブドフラワーやドライフラワーなど、壊れやすい素材を隙間に置く時はピンセットを使うとスムーズです。器の深さによって長いピンセットが役立つこともあるため、長めのタイプも準備しておくといいですね。さらに、刃先が滑り止め加工されたものもあるため、用途によって使い分けましょう。
ワイヤー
小花をまとめたり、茎がない花の茎の代わりにしたりと、アレンジメントでよく使うアイテムです。他にも、プライスカードを立てたり、メッセージカードを留めたりとあらゆる場面で活躍します。
太さ、固さ、長さ、色など種類豊富に揃っているため、必要に合わせて最適なものを選べる点も嬉しいですね。
フローラルフォーム
アレンジする際に土台として使用するものです。生花用とドライ用があり、生花用は水に浸してから使用します。ドライ用であれば、グルーガン使用時もフォームが溶けずしっかり圧着できます。また、色やデザインも豊富なため、用途によって使い分けてください。
フローラルテープ
アレンジメントの際にむき出しになったワイヤーを隠したり、花束をまとめたりと、植物が美しく見えるための大切な役割を担います。カラー展開が豊富なため、デザインや雰囲気に合わせて変えてもいいですね。
その他のお手入れアイテム
花道具以外で花のお手入れや日ごろの業務であると便利なアイテムを紹介します。
- 台所用洗剤
- ジョウロ
- 霧吹き
- タオル
- シザーケース
- 園芸用スコップ
- ホース
- バケツ
台所用洗剤
カビや苔、土汚れなどが日常茶飯事の花屋では、器やタイル、タオルなどの汚れを落とせる台所洗剤が重宝します。また、瓶洗浄後に少量の台所用洗剤を水に混ぜておくと、生花の水替え時に発生する瓶や茎のぬめりを軽減できます。
ジョウロ
花屋なら揃えて当たり前のジョウロですが、種類が多くどれにすべきか悩むこともあるかもしれません。これから揃える予定の方は、たっぷり入る容量の大きいサイズのものと、小さめのものがあると日々の水やりや作業がスムーズになります。ベーシックから凝ったデザインまで幅広く揃っているため、ぜひお店のイメージに合うものやアクセントになるものを選んでみてはいかがでしょうか。
また、毎日の水やりで、植物が置いてある場所から水道蛇口が遠いと、何度も行ったり来たりしなければなりません。そのような場合には、大きなジョウロをカートに乗せて移動すると水やりもはかどり時短になりますよ。
霧吹き
霧吹きスプレーは観葉植物のお手入れに欠かせません。水を与えるだけでなく、葉表面のほこりを飛ばしたり、葉裏側にも拭き付けたりできるため便利です。さらに、湿度を上げるため植物の周辺にスプレーをして乾燥しにくい環境へ整える際にも使えます。
タオル
花屋の現場では、水をよく使うためタオルも忘れてはならない必須アイテムです。手を拭くだけでなく、ディスプレイ棚の整理やこぼれた水滴の処理、掃除や緩衝材代わりにするなど使う場面がとても多いため、枚数を多めに揃えておくよう心がけておきましょう。
シザーケース
ハサミをエプロンポケットに入れる場合もありますが、刃先でポケットが破れ、しゃがんだ時に太ももにあたってしまうと危ないため、シザーケースに収納して持ち歩く習慣をつけると安心です。
園芸用スコップ
花屋ではお客様からの依頼で、植物の植え替えのオーダーが入ることもあります。そのようなとき、園芸用のスコップがあると作業が手早く進みます。スコップは深型タイプがあると土や丸い肥料、砂利などすくいやすく便利です。
ホース
夏は、朝夕の2回ほど水やりをするため、それだけでも時間がかかってしまいます。少しでも時短をして効率よく業務を進めるためには、ホースがあると便利です。
バケツ
仕入れた植物の保管や黄葉取りのごみ入れにとても便利です。また、水の下がったモスボールや観葉植物があればバケツに水をはり浸しておくと回復が早いです。用途別にいくつか準備しておくといいでしょう。
よく使う事務用品・資材
花のお手入れには使いませんが、花屋を営むにあたり必ず必要となる事務用品や、発注しておきたい資材を紹介します。
- 電卓
- カッター
- ホチキス
- セロハンテープ
- プライスカード(ラミネート加工済)
- のし紙・祝い札
- ロゴシール
- メッセージカード
- リボン
- メジャー
- 紙袋
- ビニール袋
- クッション材
- ラッピング紙
- セロハン紙
- 発送BOX
電卓
通常時のお会計時にはもちろん、セール時には特にお客様とのコミュニケーション中に値段に関する質問を受けることが増えるため、携帯できる小型電卓があると便利です。また、海外の方に値段を伝える手段として使用することもあるため、一つは備えておきましょう。
カッター
ラッピング紙の裁断や、梱包の開封に使います。特に商品の搬入時は、使用頻度が高くなるため、ポケットで中で安全に携帯できるロック付きのカッターがおすすめです。
ホチキス
鉢物をラッピングする際によく使います。メッセージカードやリボン、鉢物を乗せる台のカスタマイズにも便利です。ホチキスのサイズによっては挟める厚みや固さが変わるため、大小2つのサイズがあると使いやすいでしょう。
セロハンテープ
透明で目立ちにくいため、商品に合わせた袋の作成や花留めに便利です。用途にもよりますが、とくに幅15mmテープを使用することが多いですよ。また、梱包箱を見栄えよく組み立てられる、透明の幅広テープも用意しておくといいですね。
プライスカード
プライスカードはラミネート加工済みのものであれば、雨や水に強く、長く利用できます。値段だけでなく、イラストを入れたり、ひと言加えたい場合には大きめサイズを選びましょう。手書きならではの温かみのある雰囲気は、お客様にも喜ばれそうです。
のし紙・祝い札
お客様からリクエストがあった場合に使います。箱型の贈り物には「のし紙」を、観葉植物には「お祝い札」を立てます。
お店によって異なりますが、手書きかパソコン入力かを決めておきましょう。のし紙は和紙や厚紙、普通紙など幅広くあるため、商品との相性をみて決めるといいでしょう。
ロゴシール
シンプルなラッピングも、ロゴシールを貼るだけでに雰囲気のある佇まいへと変化します。インターネット注文で手軽にお店オリジナルのシールが作れるため、サイズ違いでいくつか準備しましょう。
メッセージカード
商品にメッセージを記載したカードを添えるサービスがあると、お客様から喜ばれそうです。カードの色や厚み、デザインなどを考えて、用意しておくと良いでしょう。
リボン
花屋のブランドカラーに合う、素材や色、厚みや肌触りのリボンを用意しておきましょう。花束やラッピングの際に使えるため、いくつか種類を用意しておくと最適な形でお渡しできます。
メジャー
ディスプレイの配置や鉢サイズの測定、ブーケ作成や会場装花時など、使う場面がとても多いです。
直線的な測定にはスチール素材を用いたハードタイプが便利ですが、リストブーケや花冠など曲線の測定にはグラスファイバー素材のソフトタイプが使いやすいです。
紙袋
ギフトや贈答品を持ち帰っていただく際に必要な紙袋も用意しておくと安心です。お店のロゴマークを別途入れておくと、名前やロゴを覚えてもらえそうです。
ビニール袋
苗や鉢植え、切花や肥料など水分を含んだ商品を扱う際に必要です。色や素材にこだわり、ロゴマークをいれるとさらにオシャレ感がUPしそうですね。
クッション材
よく使うのが、プチプチと新聞紙でしょう。割れやすい陶器やガラス製品の保護、また、梱包の隙間埋めや寄植えの底上げ時によく使います。さらに、紙パッキンはラッピングにも使えるため常備しておきましょう。
ラッピング紙
色や柄、素材や感触など、ブランドイメージにあったものをいくつか揃えておくと、贈る相手やギフトのイメージに合わせてラッピングできます。
セロハン紙
ラッピングや商品の梱包、ディスプレイから水漏れ防止シートの代用まで活用の幅がとても広いアイテムです。色や種類が多く、フラワーアレンジメントの素材として使うこともあります。
素材が薄く柔らかすぎると使いにくいため、少々厚みのあるタイプがおすすめです。
発送ボックス
店のカラーに合わせた専用の段ボール箱や無地の段ボール箱など必要に合わせて選んでおきましょう。また、贈答品は、窓付きタイプの箱を使用すると中身が見えて、発送中も丁寧に扱ってもらえます。
花屋で働くときの服装
道具やアイテムのほかに、服装についても知っておくといざというときにも困りません。基本的には普段の服を着て良いですが、次のものを用意しておくと汚れや暑さ・寒さを気にせずテキパキ動けます。
- 帽子
- 運動靴
- 長靴
- レインコート
- 防水エプロン
- ウィンドブレーカー
- 防寒フリース
- マスク
帽子
屋外作業の際は、強い日差しを避けるために用意しておきましょう。できれば、大きくて広いつばで、首の後ろも保護できるデザインを選ぶと日差しの対策がしやすいです。さらに、防水加工がされているものであれば雨の日にも助かります。暑い日は、頭が蒸れやすいのでつばの大きな麦わら帽子もおすすめです。
運動靴
花屋の業務は休憩以外、立ちっぱなしです。店内を動くことも多いため、歩きやすい運動靴がマストです。土や水を頻繁に使うため、靴に防水防汚スプレーをかけておくとお手入れが楽になります。
長靴
屋外での水作業の際には長靴があると、足元に構わず作業ができます。スムーズにお手入れ作業ができるよう長靴を常備しておくといいでしょう。
レインコート
お店によって異なりますが、例えば突然の雨で屋外の植物を店内に片づける場合にレインコートを着用していれば、雨の中でもストレスなく作業を行えます。 梅雨時期にはもちろん、台風、ゲリラ豪雨などもあるため、いつでも取り出して使えるようレインコートを用意しておきましょう。
防水エプロン
屋外の作業は、土や水、肥料や器などを扱うため、全身が汚れることもあります。長めのエプロンを着用して作業することをおすすめします。
足さばきが気になるときは、前や横に大きなスリットが入ったデザインを選びましょう。他にも、タイト過ぎないものや固すぎない素材のものがおすすめです。
ウィンドブレーカー
冬でも長時間、屋外で過ごすことが多い花屋にとって、必須アイテムのひとつです。ウィンドブレーカーは、防風のほか多少の雨雪でもしのげるため1着あると重宝します。フード付きで防水効果が施されているものを選びましょう。
防寒フリース
冬は室内外どこにいても冷えるもの。とくに生花は、温度が高いとすぐに花が咲くため15〜20℃で室温をキープします。また、搬入時や接客で急に外へ出ることもしばしば。そんなときには、軽くて暖かいフリースの着用をおすすめします。濃いめのカラーだと汚れが目立ちにくいですよ。
マスク
室内外問わず、花粉が舞っている環境で作業するため、アレルギーの方もそうでない方も持ち歩いて損のないアイテムです。日頃からメガネを着用している方は、作業や接客をスマートに行うためにもメガネにくもり止めを塗っておきましょう。
その他、花屋の仕事内容や流れについて詳しく紹介した記事も参考にしてください。
ご自身のケアに欠かせないアイテム
花のお手入れは、トゲが刺さることや虫刺されのほか、手荒れや指先のケガなどが起こりがちです。お花のケアはもちろんですが、ご自身のケアも忘れず行ってくださいね。日ごろのケア用品やいざというときのために備えておきたいアイテムを紹介します。
- 日焼け止め
- 絆創膏
- ハンドクリーム
- 虫刺され薬
- アレルギー薬
日焼け止め
店の建物にもよりますが、屋根がない場合は直射日光を浴びながら植物のお手入れを行なうことになるため、日焼け止めクリームは欠かせません。とくに夏場は、汗をかくため日焼け止めの塗り直しが必要になります。出勤前に塗ったきりにならないよう、お店にも常備しておくといいでしょう。
絆創膏
花屋にとって、軽い切り傷やケガはよくあることかもしれません。とくに紙類やナイフ、ハサミを使用するときにケガが起こりやすいです。商品に血がついてしまってはいけないので、すぐに手当てできるよう、常備しておきましょう。
ハンドクリーム
水や土、植物の消毒粉末や花粉で手が頻繁に荒れる方も少なくありません。とくに冬場は、水に濡れたまましっかりと拭かずにいると、乾燥や寒風であかぎれや湿疹の原因に。ひと手間かかりますが、手が濡れたらしっかりと拭いて、ハンドクリームでケアすることを心がけましょう。
虫刺され薬
夏場は屋内外問わず蚊が飛んでいるため、無香の蚊取り線香を使うなど対策が必要です。また、かゆみは集中力が散漫になりやすいため、ご自身にあった薬を常備しておくと安心です。
アレルギー薬
花屋では年中、花粉や植物に付着した消毒粉末が浮遊している環境です。アレルギー症状が発症すると作業も手につかず心身ともに疲弊してしまうことも考えられるため、ご自身にあった薬を早めに準備しておきましょう。
道具のお手入れ方法
花屋で日々使う道具は、お手入れについても正しい知識を持っておく必要があります。日々のちょっとしたケアにより道具が長持ちすることもがあるため、ポイントを押さえておきましょう。
- ハサミのお手入れ
- ワイヤーのお手入れ
ハサミのお手入れ
ステンレス加工であっても、ハサミは水分に弱いため1日が終わったら汚れを落とし軽く拭き、干しておくことを忘れないようにしましょう。
それでも、刃先の錆び汚れが落ちにくい場合は、研いだり刃物クリーナーを使用したりするときれいになります。また、ワイヤーなどの硬いものを普通のハサミで切ると、刃が欠けて傷みやすいため注意しましょう。
ワイヤーのお手入れ
ワイヤーのなかでも、特に紙が巻かれていない裸ワイヤーは経年劣化で錆びてしまうため、必ずワイヤーケースから出して風通しの良い所に保管することが大切です。
道具の主な購入先
今回ご紹介した道具や資材は、どこで購入するといいのか迷う方もいるかもしれません。
花屋の場合、スタッフ同士でまとめて花道具を購入する際は、割引もあるため卸売問屋で注文することもあります。
個人の場合は、インターネット通販での購入や、実際に手に取って試せるホームセンターで購入することもあります。また、文房具は100円均一などで揃えても良いでしょう。
まとめ
花屋で必要な道具は、ハサミ類だけでなく、アレンジメントやラッピング、日々のお手入れに必要なものなど多岐にわたります。
日々の業務をより効率よく、充実したものにできるよう、用途やお店のイメージを意識して、使い勝手が良く愛着の湧く道具を選びましょう。
また、水や土を触ることでの手荒れや、ハサミでのケガが起こりがちなため、ご自身のケアも忘れず行ってくださいね。