ハート型の艶のある葉と「仏炎苞(ぶつえんほう)」が特徴的なアンスリウム。生花だけではなく、鉢物の観葉植物としても人気があります。
今回は、アンスリウムの植え替えについて解説します。植え替えのタイミングや手順がわからず、手に入れた状態のまま育て続ける方も多いと思います。
植え替えは、鉢植えで植物を元気に育てるためにも大事な作業です。植え替え後の育て方やハイドロカルチャーへの植え替えにも触れているので、ぜひ参考にしてください。
アンスリウムの特徴
アンスリウムは、ハート型の葉と赤い仏炎苞を楽しめるサトイモ科の植物です。花のように見える仏炎苞は葉の一種であるため、長期間美しい姿を鑑賞できます。
本当の花は、仏炎苞の中心部にある棒状の「肉穂花序(にくすいかじょ)」と呼ばれるものです。多肉質な花軸の周囲に柄のない花が密生しています。
仏炎苞は品種によって、白色やピンク、紫色もあるので、周囲のインテリアに合わせて選ぶとよいでしょう。グリーンの葉だけでなく、トロピカルな赤色やピンク色、白色などを楽しむことができるのでインテリアグリーンにおすすめです。
耐陰性があり、明るい室内であれば簡単に育てられます。しかし、元気に育て続けるためには、定期的な植え替えが必要です。
ぜひ素敵なアンスリウムを長く育てるためにも植え替えをしてください。
[https://andplants.jp/collections/anthurium]アンスリウムは植え替えが必要|2~3年に一度
アンスリウムを元気に育てるためには、2~3年に一度植え替えが必要です。アンスリウムを植えっぱなしにしていると、鉢の中で根詰まりを起こして水分や養分を吸収できなくなるので注意してください。
また、アンスリウムを植え替えるタイミングは、年数だけではありません。以下の4つのサインに気を付けましょう。
- 鉢底から根が出ている
- 水やり後に土の吸水が悪い
- 葉色が薄い
- 株元から気根が長く伸びている
植え替えタイミング①|鉢底から根が出ている
鉢底からアンスリウムの根が出ている場合は、植え替えが必要です。鉢の底から根が出てきている状況は、生育が順調で土の中で根を伸ばすスペースが減っていることを表しています。
アンスリウムの生育状況によっては、植えて2年経たないうちに鉢底から根が出てくることも。一回り大きな鉢に植え替えることで、根がのびのびと成長して、さらに元気に育ちます。
植え替えタイミング②|水やり後に土の吸水が悪い
アンスリウムの植え替えは、水やり後に土の吸水が悪い場合も行います。吸水が悪いとは、鉢の表面に水が溜まっていたり、鉢底から水が流れたりするまでの時間が長い状態です。
同じ土で長年育てていると、鉢の中で土の団粒構造が崩れてしまいます。結果的に、泥のようになり、空気の隙間が無くなるので、水が流れず吸水が悪くなるので注意が必要です。
また、鉢底で崩れた土が詰まると排水が悪くなり、根腐れの原因になります。そのため、水やり後に水が土の表面に溜まっていたり、鉢底から流れる時間が遅くなったりしたときは、植え替えをしてください。
植え替えタイミング③|葉色が薄い
アンスリウムの葉色が薄い時も、植え替えタイミングです。葉色が薄くなる原因には、根詰まりや根傷みが考えられます。
根詰まりや根傷みを起こすと、水や栄養を上手く吸収できません。結果的に、葉色が薄くなります。
肥料不足による可能性もありますが、肥料を与えている状態で葉色が薄くなっているのであれば、根詰まりや根傷みの可能性が高いです。
5月~9月の生育期に鉢から取り出して、根をチェックしてください。根が固まっている場合は、根を切らないように丁寧にほぐしましょう。
スカスカな根や黒ずんでいる根を取り除き、新しい土に植え替えてください。その後、葉色が薄い葉は、自然と濃い緑色に戻ります。
もし葉が黄色く枯れかかっているものがあれば、付け根から下に引っ張るようにすると綺麗に取り除くことが可能です。しかし、株を傷つけそうな場合は、無理せずハサミで切ってください。
植え替えタイミング④|株元から気根が長く伸びている
アンスリウムの株元から気根が長く伸びている場合も植え替えタイミングです。アンスリウムは、長年育てていると株元の葉を落として幹立ちしてきます。
その姿を支えるために、気根が伸びやすくなるのですが、このタイミングで根を整理して、伸びた気根も一緒に土に植えてあげましょう。この作業によって、幹立ちしたアンスリウムは安定します。
気根からも、水分や養分を吸収して生育もよくなります。もし、気根を植えずに切る場合は、支柱を立てて支えてあげてください。
根腐れした場合も植え替えが必要
アンスリウムは土が常に湿っていたり、受け皿に水を溜めていたりすると根腐れする植物です。根腐れすると、水分や養分を吸収することができずに、次第に葉が黄色くなって落ちてきます。
また、鉢底から異臭が漂うこともあるので気を付けてください。そのままでは根腐れの症状は止まらないため、新しい土に植え替えます。
その際に、溶けたような根や黒ずんだ根はすべて取り除きましょう。植え替え後は、発根剤を薄めた水で水やりをしながら様子を見てください。
アンスリウムの植え替え時期|5月~9月
アンスリウムの植え替え時期は、5月~9月です。早春の3月は気温が安定していないので、植え替え後に低い温度に当たると傷む可能性があります。
しっかりと気温が上がった5月~7月に植え替えると安心です。8月~9月は猛暑日を避けて植え替えるとよいでしょう。
気温が下がり始める11月以降は植え替えないようにしてください。
室内の暖房で暖かいとはいえ、冬に植え替えると暖房を切った後に急に冷え込みます。寒さに弱い植物なので、アンスリウムが傷んで枯れてしまうかもしれません。
そのため、アンスリウムの植え替えは暖かい5月~9月に行ってください。
アンスリウムの植え替えに必要な道具
ここでは、植え替えに必要な道具を紹介します。
今まで植えていた鉢より一回り大きな鉢を準備してください。4号鉢であれば、5号鉢を準備します。
葉や根を切るハサミは清潔で切れ味のよいものを準備しましょう。不清潔で切れ味の悪いハサミは病原菌が入ったり、切り口の組織が潰れたりしてアンスリウムが傷む可能性があります。
新しい土は、市販の観葉植物の土がおすすめです。オリジナルで作る場合は、赤玉土(小粒):腐葉土=7:3の割合で混ぜた土を基本として、小粒の軽石やパーライトを1割ほど混ぜ込み水はけをよくしてください。
植え替え時に床が汚れないように、園芸用シートがあると作業がしやすいです。園芸用シートの代わりに新聞紙やビニールシートでも代用できます。
植え替え手順
植え替えに必要な道具を準備したら、実際にアンスリウムを植え替えましょう。植え替えの手順は以下の5つです。
- 鉢底網を敷いて鉢底石を入れる
- 新しい土を入れる
- アンスリウムを鉢から取り出す
- 根鉢をほぐす
- 準備した鉢にアンスリウムを植える
それぞれの手順を解説します。
①鉢底網を敷いて鉢底石を入れる
作業前に園芸シートを敷いておきましょう。その上に植え替える鉢を準備し、鉢底網を敷きます。
その上から、鉢底網が見えなくなる程度に鉢底石を入れてください。鉢の大きさにもよりますが、鉢の高さの1/5~1/4の量を入れるとちょうどよいです。
②新しい土を入れる
鉢底網と鉢底石を入れた鉢に、水はけのよい観葉植物の土を鉢の半分ほど入れてください。
アンスリウムは気根を伸ばして、他の樹木に着生する性質を持っています。着生植物でもあることを生かして、ヤシ殻チップやバークチップ、水苔でも植え替えることが可能です。
土で植える場合は、水持ちがよすぎる園芸用土を使わないようにしてください。水持ちが良いと根腐れしやすいためです。
③アンスリウムを鉢から取り出す
植え替えるアンスリウムを、鉢から優しく取り出します。この時に、幹を強く引っ張ると根が切れて傷んでしまうので、気を付けてください。
鉢を逆さまに向けるように持って、アンスリウムの根鉢が落ちてくるように優しく取り出します。しかし、根が張って取り出せない、またはアンスリウムが大きくて逆さまに持てないこともあるかもしれません。
その場合は、鉢の縁をトントンと叩いたり、鉢底穴に棒を差し込んで押し出すように取り出したりしてください。
④根鉢をほぐす
根鉢が固まっている場合は、土と一緒にほぐします。根がスカスカに枯れていたり、根腐れしていたりするときは、ハサミやピンセットを使って取り除いてください。
⑤準備した鉢にアンスリウムを植える
鉢底網、鉢底石、新しい土が入った植木鉢に、根を整理したアンスリウムを入れます。植木鉢のサイズは、現状より一回り大きいものを選ぶといいでしょう。
また、植え替えの際は、鉢の真ん中にアンスリウムを設置すると見た目が良いです。場所が決まったら、スコップで観葉植物の土を入れてください。
ただし、鉢の縁いっぱいまで入れると、水やり時に土がこぼれてしまいます。そのため、鉢の縁ギリギリまで土を入れないで縁の1~2㎝程下まで土を入れてウォータースペースを取っておきましょう。
幹立ちしたアンスリウムを植え替える場合は、伸びた気根を植えても根が張っていないうちはぐらぐらして倒れることもあります。そのため、倒れないように支柱をして安定させてあげてください。
そして、土をスコップで入れた後は、細い棒で土を突いて狭い隙間にも土が入るようにします。その後、鉢の縁をトントンと叩いて土をならせば植え替えが完了です。
アンスリウムを植え替えた直後は、鉢底から水が流れるようにたっぷりと水やりしてください。
植え替え後の育て方
アンスリウムの植え替え直後は、土に根が張っていません。そのため、置き場所や日当たり、温度などの育て方に注意してください。
上手に植え替えができても、その後の育て方によっては枯れる恐れがあるためです。以下の4つのポイントに絞って解説します。
- 置き場所と日当たり
- 温度
- 水やりの頻度
- 肥料
関連記事:アンスリウムの育て方
置き場所と日当たり
アンスリウムを植え替えた後は、直射日光の当たらない明るい日陰や室内で2週間ほど管理してください。植え替え直後に、直射日光に当てると葉焼けする恐れがあるため注意が必要です。
室内の窓際に置くと、植え替え直後に日差しが当たる場合があるので、窓際から離しておくとよいでしょう。2週間ほど管理すると新芽が出てきます。
新芽が出てくると、土の中で新しい根が伸びてきている証拠です。このタイミングで、元々アンスリウムを育てていた場所に置くと、順調に育ちます。
温度
アンスリウムの植え替え時期は、生育期の5月~9月です。そのため、気温が低いことはないので心配はいりませんが、植え替え直後は15℃以上を保ってください。
アンスリウムは10℃以上をキープして育てる観葉植物ですが、植え替え直後は植え傷みによって弱っています。このタイミングで低温に当たると枯れる恐れがあるので、暖かい環境で育てることが重要です。
特に、秋以降は気温が下がり始めるので、植え替えには注意してください。暖房が入っていても、冬に植え替えると調子を崩しやすいため、植え替え時期は守りましょう。
水やりの頻度
植え替え後のアンスリウムの水やりは、土の表面が乾燥したらたっぷり水やりしてください。この時に、発根剤を水に薄めて水やりすると、発根が促進されて生育がよくなります。
特に、根腐れや根傷みが原因で植え替えている場合は、発根剤を与えながら水やりすると効果的です。ただし、受け皿に水を溜めたり土が乾いていないにもかかわらず水やりしたりしないでください。
発根したばかりの根が腐ってしまいます。また発根したばかりの根は、乾燥に弱いので水切れの状態が長く続かないように注意しましょう。
そのため植え替え後は、今まで通り適切に水やりすることが重要です。
肥料
根が傷んでいない状態であれば、植え替え後も通常通りに肥料やりしても問題ありません。液肥であれば、2週間に一回水に薄めて与えて、置き肥であれば2か月おきに与えるとよいでしょう。
ただし、根腐れや根焼けによって根が傷んでいる場合は、肥料やりは控えてください。根が傷んでいる状態で肥料を与えると、肥料を上手く吸収できないだけでなく、さらに根を傷めてしまうためです。
発根剤を水に薄めて水やりして様子を見ます。アンスリウムから新しい新芽が出始めたら、徐々に肥料を与えてください。
水耕栽培(ハイドロカルチャー)の植え替えもアリ
アンスリウムは、水耕栽培(ハイドロカルチャー)でも育てることができます。しかし、アンスリウムは着生植物でもあることから、水の中では根腐れしやすいため注意が必要です。
なるべく水は少なめにして管理することがポイント。水耕栽培には、水だけで育てる方法とハイドロボールのような無機質素材を使用して育てる方法の2通りがあります。
水耕栽培の場合は、根元まで水に浸けず、根の先端だけ水に浸すようにするとよいでしょう。また、水耕栽培は土の環境と異なるため、植え替えの際に根を整理して植え替えてください。
土の環境で育った根では、水耕栽培に順応しないためです。新しく水耕栽培用の根を伸ばしてあげましょう。植え替え方法は基本的には、上記で説明した植え替え方法と同様で、土が水や無機質素材になったと考えてください。
アンスリウムの植え替えによくある質問
最後にアンスリウムの植え替えによくある質問とその答えを以下にまとめました。
- アンスリウムの植え替えは冬にしていい?
- アンスリウムの植え替えに失敗したら植えなおしても大丈夫?
- アンスリウムの気根は植え替え時に土に埋めたほうがいい?
- 幹が伸びて気根がたくさん出ているアンスリウムの植え替え方法は?
- アンスリウムを植え替える鉢を大きくしたくない場合はどうすればいい?
それでは具体的に見ていきましょう。
アンスリウムの植え替えは冬にしていい?
アンスリウムは寒さに弱い観葉植物なので、冬の植え替えはしない方がよいでしょう。植え替え適期は5月~9月です。
特に5月~7月は、気温が徐々に上がる時期で新芽も多く伸びてきます。この時期は、植え傷みからもすぐに回復できるので、初心者が植え替えをする場合は5月~7月がおすすめです。
8月~9月に植え替える場合は、猛暑日を避けて植え替えてください。熱帯地域原産の植物と言えども、植え替え直後に高温にさらされると、その後の生育期に悪影響を及ぼします。
アンスリウムの植え替えに失敗したら植えなおしても大丈夫?
アンスリウムの植え替えに失敗した時は植えなおしても大丈夫です。ただし、速やかにやり直してください。
イメージ通りに植え付けられない場合もあると思います。その場合は、植え付け直後の水やり前に、鉢から優しく掘り上げて最初から植え付けてください。
植えなおしに時間がかかると、根が乾燥して傷んでしまいます。また、植え替えるときにあらかじめ、高さや向き、植える位置は土を入れる前に確認しておきましょう。
アンスリウムの気根は植え替え時に土に埋めたほうがいい?
アンスリウムの気根は、植え替え時に土に埋めても埋めなくても問題ありません。ただし、幹が伸びて不安定な場合は、気根も植えて根付かせた方が安定します。
気根をそのまま伸ばしてワイルドに仕立てても、アンスリウムはかっこいいです。もし、気根を切って安定しない場合は、支柱で支えてあげるとよいでしょう。
幹が伸びて気根がたくさん出ているアンスリウムの植え替え方法は?
幹が伸びて気根がたくさん出ているアンスリウムの植え替え方法は、気根を土に埋めて植え替えるとよいでしょう。
幹立ちしたアンスリウムは不安定であることが多いため、気根を埋めて根付かせることで安定しやすいためです。
あまりに幹が伸びすぎて恰好が悪い場合は、気根を付けた状態で剪定して挿し木として植える方法もあります。その際に、剪定した元の株に緑色の幹部分が残っていれば、新芽が出てくる可能性もあるので、そのままにしてください。
挿し木として植え替えた場合は、直射日光の当たらない明るい場所で育てます。剪定された元の株は、日当たりの良い場所で発芽を促してください。
アンスリウムを植え替える鉢を大きくしたくない場合はどうすればいい?
アンスリウムの植え替えで鉢を大きくしたくない場合は、枝葉や根を切り戻して同じ鉢に植えます。根を短く切ることによって同じ大きさの鉢でも、新たに根が伸びるスペースを確保できるためです。
また、枝葉も根の量とバランスがとれるように剪定することで、アンスリウムの負担にならないようにします。根が少ないにも関わらず、枝葉が多いと水分や養分を補うことができないので気を付けましょう。
同じ鉢に植えるためには根を短く切りますが、太い根を切ると株に傷みが蓄積されて枯れる恐れがあります。なるべく細い根だけを切り戻してください。
まとめ
アンスリウムは、ハート型の葉や仏炎苞が可愛らしい観葉植物です。初めて植物を育てる方にも人気ですが、適切な植え替えをしていない方は多いかもしれません。
アンスリウムは2~3年に一度、植え替えます。また、鉢底から根が出てきたり土の吸水が悪かったり、葉色が薄いときも植え替えが必要です。
タイミングを見逃さずに植え替えて育てることで、アンスリウムは元気に成長します。定期的な植え替えを心がけることで、長年育ったのちにかっこいい幹立ち姿になることも。
ぜひ、植え替えを行いながら、元気なアンスリウムを育ててください。
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