日本人に馴染みが深い花であるキク。日本ではお供え用の花として親しまれますが、多種多様な色や咲き方が楽しめ、用途は広がりを見せています。
キクの花言葉は「高貴」「高尚」「高潔」です。古くから高貴な花として扱われていた歴史がうかがえます。
また、色の種類が豊富であることから色別にも決められた花言葉があり、大切な人へ贈る際には参考にしたいものです。
今回はキクの花言葉をはじめ、キクの名前の由来や歴史、キクが用いられる行事などについて解説していきます。お供え用だけではないキクの魅力を知っていただけると嬉しいです。
キクの花言葉|「高貴」「高尚」「高潔」
キクの花言葉は「高貴」「高尚」「高潔」です。日本の皇室や宮家の紋章に用いられているため、気品ある花言葉となっています。
キクはお供え用の花として一般的に知られているので、花言葉も亡くなった方にたむけるような意味があるのではないかと思われやすいですが、そのような花言葉が含まれていません。
品格を重んじる日本人を表すような花言葉となっています。
キクの色別の花言葉
色の種類が豊富なキクには色別の花言葉が存在します。色別の花言葉は、色のイメージが反映されていることが多いですが、キクにはどのような花言葉がつけられているのか見てみましょう。
- 赤いキク|「愛情」「あなたを愛しています」
- ピンクのキク|「甘い夢」
- 白いキク|「慕う」「誠実な心」
- 黄色いキク|「長寿と幸福」「わずかな愛」
- 紫のキク|「私を信頼してください」「夢が叶う」
赤いキク|「愛情」「あなたを愛しています」
情熱的で強さと美しさをもつ赤のキクの花言葉は「愛情」「あなたを愛しています」です。赤の花には、バラをはじめとして愛にまつわる花言葉がつけられていることが多く、キクも同じです。
赤のキクは和柄に用いられることも多く、鮮やかな色が衣装に映えます。赤と一言で言っても、朱色系、えんじ系と色のニュアンスが種類によって異なるので、実は色の幅が広く、奥が深い色です。
ほかにも愛に関係する花言葉や植物が知りたい方は、「愛」の花言葉を持つ植物の記事で紹介しています。
ピンクのキク|「甘い夢」
ピンクのキクの花言葉は「甘い夢」です。ピンクの可愛らしいイメージからつけられた花言葉ではないかと考えられます。
ピンクのキクは咲き方も可愛らしい品種が多く、ダリアによく似た花型のものもあります。成人式や結婚式では髪飾りに用いられたり、和装用のブーケに使用されたりと、ピンクのキクは人気です。
普段なかなかプレゼントで贈ることがないキクですが、可愛らしいピンクのキクはプレゼントで贈りやすく、お供え用の花でも「仏花っぽくない可愛らしい花を供えたい」と思うときにもおすすめです。
夢に関係する花言葉や植物が知りたい方は、「夢」に関する花言葉の記事で紹介しています。
白いキク|「慕う」「誠実な心」
白いキクの花言葉は「慕う」「誠実な心」です。お供え用でよく用いられる白いキクは、故人を慕う、心に嘘偽りなく式を執り行うという意味が込められています。
また白は、何色にも染まっていない無垢な色とされているので、冠婚葬祭に用いられます。他の色の中でも特にお供え用のイメージが強い色なので、プレゼントをする際には注意が必要です。
黄色いキク|「長寿と幸福」「わずかな愛」
黄色いキクの花言葉は「長寿」「わずかな愛」です。ポジティブな意味とネガティブな意味の両面を併せ持ち、中国ではキクは長寿の象徴であるため、花言葉に反映していると考えられます。
また、黄色は明るいイメージがありますが、花言葉においてはネガティブな意味を含むこともあり、注意が必要なことが多いです。
観賞用以外で黄色のキクは、食事の飾りつけで用いられたり、食用キクとして出回ることもあります。鮮やかな色が食卓を彩ります。
紫のキク|「私を信頼してください」「夢が叶う」
紫のキクの花言葉は「私を信頼してください」「夢が叶う」です。上品で凛とした大人な雰囲気が魅力の紫のキクには、ポジティブな意味が込められています。
日本ではかつて紫は位の高い人しか身につけることが許されない高貴な色とされてきました。貴重な色であり、大切に扱われてきた色です。
故人に敬意を表して供える色に相応しいといえるかもしれません。
キクの誕生花|9月9日
キクの誕生花は9月9日です。他に10月1日、11月3日、11月23日、11月27日、12月1日も誕生花がキクとされています。
誕生花は1年365日に特定の花が当てはめられています。古来より、花や植物には神秘的な力が宿るものとされてきました。
ギリシャ、ローマでは日々を司る神がいると信じられており、日々の神々と花を結び合わせて暦にしたものが、誕生花といわれています。
誕生花を贈ることで、贈られた相手は神から守られ、幸福、愛、富がもたらされると信じて、始まったとされています。
キクの花言葉によくある質問
キクの花言葉によくある質問を紹介します。花言葉にはポジティブな意味だけでなく、ネガティブな意味も含まれることがあります。
キクには怖い花言葉があるのか気になる方も多いかもしれません。花言葉に興味がある方、気になる方はぜひ参考にしてみてください。
- キクに怖い花言葉はある?
- キクは日本の国花?
- キクは縁起が悪い?
キクに怖い花言葉はある?
キクに怖い花言葉はありませんが、黄色のキクの花言葉に「わずかな愛」に加えて「破れた心」の花言葉があります。花言葉では黄色の花にネガティブな意味が含まれることもあります。
黄色のキクを人に差し上げる場合には、注意しましょう。
怖い花言葉が気になる方は、怖い意味の花言葉一覧の記事で紹介しています。
キクは日本の国花?
日本では法定の国花はないですが、皇室の紋章であるキク、もしくは広く親しまれているサクラが事実上の国花として扱われています。
キクを図案化した菊紋のうち、花を中心に図案化した家紋のことを菊花紋章といいます。この菊花紋章はパスポートの表紙に使用されていることで有名です。
国を代表する伝統的な花であることが理由で、国の紋章代わりに使用されています。
キクは縁起が悪い?
キクは縁起の悪い花ではありません。しかし、お供え用として亡くなった方へたむけることから、縁起が悪いと感じてしまう方もいるかもしれません。
プレゼントにキクを贈ると「亡くなった人に贈る花をプレゼントされた」と不快に感じる方もいます。相手との間柄にもよりますが、お祝い事、お見舞いの場面などに贈るのは控えた方が良いかもしれません。
キクの由来と歴史
キクの名前の由来と日本での歴史について解説します。皇室の紋章に用いられる理由や、古典文学で登場してきた歴史などから、古くから愛されてきたことが分かります。
- キクの名前の由来
- 皇族の紋章
- キクが仏事に用いられる理由
- 古典文学に登場するキク
- キクが「マム」と呼ばれる理由
キクの名前の由来
キクは奈良時代末期に中国から伝わり、名前は漢語が語源となっています。漢字で表記される菊はかつて「クク」と呼ばれていて、日本語に転化し「キク」と呼ばれるようになりました。
また、キクは一年の最後に咲く花とされていたことから「窮まる(きまわる)=物事がこれが果てというところまでくる」といった意味が由来ともいわれます。
日本にキクが伝わった当初は、観賞用としてだけでなく、薬草としても用いられていました。
皇族の紋章
キクが皇室の紋章に用いられるようになったのは、平安時代末期から鎌倉時代初期に即位していた後鳥羽上皇が菊をこよなく愛していたからです。
後鳥羽上皇は、衣装や刀にキクの紋章を使用していました。後々の天皇である後深草天皇、亀山天皇、後宇多天皇に継承されたことにより、「キクの紋章=皇族の紋章」として定着していきました。
キクが仏事に用いられる理由
キクがお供え用の花として定着した理由はいくつか考えられます。
キクは皇室の紋章に使われているように格式高い花です。故人への敬意を表す意味を込めてキクをたむけるようになったのではないかといわれています。
また、キクはとても日持ちが長いので、長く飾っておけること、戦後にはキクが1年中栽培されるようになり、手に入りやすくなったことなども理由とされています。
日本での生産率はとても高く、栽培は盛んです。日本の気候がキクの栽培に適していることも関係しており、安定して出荷されることがお供え用に用いられるようになった要因のひとつとなっています。
古典文学に登場するキク
奈良時代末期に中国から伝わったキクは、万葉集ではまだ登場しませんが、「古今和歌集」、清少納言の「枕草子」、紫式部の「源氏物語」の時代になって頻繁に登場するようになります。
古今和歌集では、キクの優雅な美しさを読んだ和歌が多く登場しているのが特徴です。
キクの原産地である中国では、古くからキクが栽培されており、儒家の始祖である孔子の書で登場します。紀元前3世紀の詩集「楚辞(そじ)」では、キクの花が食用にされていたことが記されているようです。
キクが「マム」と呼ばれる理由
キクは「マム」と呼ばれることもありますが、マムは洋菊を指す言葉です。マムの言葉は学名である「Chrysanthemum(クリサンセマム)」の略からきています。
「スプレーマム」「ピンポンマム」などと呼ばれるものもあり、和菊の類である輪菊、小菊以外はほぼマムと呼ばれるものに分類できます。
キクの特徴
植物名 | キク |
学名 | Chrysanthemum morifolium |
科名 | キク科 |
属名 | キク属 |
原産地 | 中国 |
開花時期 | 9月~11月 |
キクはキク科、キク属の1年草、または多年草の植物の総称です。一般的な開花時期は9月~11月の秋で、春菊(5月~7月)、夏菊(8月~9月)、寒菊(12月~1月)と季節ごとに咲く品種もあります。
日本でつくられた品種は「和菊」、欧米でつくられた品種は「洋菊」と呼ばれます。日本では江戸時代に品種改良が盛んに行われ、たくさんの「和菊」と呼ばれる種類が誕生しました。
現在は咲き方の種類のバリエーションが豊富な洋菊が花屋さんで販売されていることが多いです。
キクの学名「Chrysanthemum(クリサンセマム)」は、ギリシャ語の「chrysos(黄金)」と「anthemon(花)」が語源になっています。
9月9日は重陽の節句
9月9日は五節句のひとつ「重陽(ちょうよう)の節句」です。3月3日の桃の節句や5月5日の端午の節句と並ぶ五節句のひとつですが、知らない方も多いかもしれません。
重陽の節句とはどのような行事なのか、どのような楽しみ方があるのか解説するので、ぜひチェックしてみてください。
- 重陽の節句とは
- 中国でキクは長寿の花
- 重陽の節句の楽しみ方
重陽の節句とは
重陽の節句は別名「菊の節句」ともいわれ、キクを飾って邪気を払い、健康長寿を願う行事です。
中国では奇数が縁起の良い「陽数」とされ、奇数でも一番大きい陽数である9が重なる9月9日はとても縁起が良いとされており、陽が重なる「重陽の節句」とされました。
重陽の節句の時期はキクの旬の時期とも重なります。美しく咲く旬のキクを楽しみながら過ごせる行事です。
中国でキクは長寿の花
古来より中国でキクは「仙堺に咲く霊薬」とされ、邪気を払い、長寿の効能があると信じられてきました。
また、4世紀の不老長寿を説く道教書には、キクが群生している谷を下って、水を飲んだ人たちが長寿になったという「菊水伝説」が記されています。
この逸話が受け継がれ、キクの香りを移した水を飲むことで、長寿になるといわれています。
重陽の節句の楽しみ方
重陽の節句には、キクを飾って愛でるのが一般的です。
キクを愛でながら、お酒にキクを浮かべた「菊酒」、キクの上に真綿をのせて、朝にキクの香りと露を含んだ綿で体を拭いて無病息災を祈る「菊の着せ綿」という風習もあります。
さらに、キクを湯船に浮かべた「菊湯」、乾燥したキクの花びらをつめた「菊枕」で眠る風習などもあったようです。
いつもの生活にキクを取り入れながら、キクの香りで邪気を払い、無病息災を祈っていたことが分かります。
補足:キクの旬は秋
キクは今や一年中出回りがあるので、花屋さんでも季節を問わず販売されていますが、本来の旬の時期は秋です。
秋を代表する花であり、秋になると「菊花展」が盛んに行われ、風物詩となっています。
切花では、秋のキクは品質が良く、他の時期よりも種類が多く出回ります。重陽の節句でキクを多く入荷してコーナーを展開する花屋さんもあるので、秋にはぜひお気に入りのキクを見つけて飾ってみてくださいね。
キクを用いる行事
キクを用いる行事といえば、お盆やお彼岸を一番に思いつく方も多いと思いますが、実はお正月やお月見でキクが活躍しています。
日本の行事にはキクが用いられることが多く、和の雰囲気を楽しみながら過ごすことができます。
- お正月
- お月見
お正月
お正月にはお家にきれいにお花を生けて、新年を迎える方が多く、お正月用に縁起物の松や千両にキクを合わせて飾られます。
お正月といえばやはり和風の花が飾られることが多いので、キクがよく用いられ、他にも葉ボタン、南天、サザンカなども一緒に飾られます。
花屋さんではお正月用に花を組み合わせた束がよく販売され、お世話になった方へ年末のあいさつにお花を持って行く方も多いでしょう。
お月見
お月見には、黄色いまん丸の「ピンポンマム」をお月様に見立てて、ススキやりんどうなど季節の花と一緒に飾って楽しみます。
十五夜のお月見は、一年で一番月が美しい日とされており、暦上毎年日付は異なります。美しい月を愛でる風情ある日本の風習です。
お月見に花を飾るイメージはあまりないかもしれませんが、筆者が花屋に勤めていた際、お月見用に販売していたブーケはとても人気がありました。お家に飾って楽しめ、贈り物にしても粋なプレゼントになります。
お月見は年齢も性別を問わずに楽しめる行事なので、ぜひ花を飾ってゆっくりと楽しんでもらいたい行事です。
お供えだけではもったいないおすすめのキクの品種
キクは、仏花のイメージが強く、自宅に飾ったり、プレゼントに贈ったりすることが一般的に少ない花ですが、品種改良が進み、可愛らしい品種がたくさん誕生しています。
仏花としてだけでなく、自宅用や贈り物にしてほしいキクの品種を紹介します。お供え用だけではもったいなく感じる種類なので、ぜひ注目してみてください。
- ピンポンマム
- ロサーノシリーズ
- アナスタシアシリーズ
ピンポンマム
キクの種類の中でもよく親しまれているのが「ピンポンマム」です。まん丸のフォルムが可愛らしいので、ウェディングのシーンでもよく使用されるようになりました。
和装の結婚式の会場装花、成人式の髪飾り、和風のブーケなどによく使用されます。和風のものだけでなく、洋風のアレンジにも取り入れやすい特徴があります。
色のバリエーションも、白、グリーン、ピンク、赤、黄色、紫などと豊富で組み合わせも楽しめるのが良いところです。
ロサーノシリーズ
ロサーノシリーズはピンクの「ロサーノシャルロッテ」という品種が代表的で、大輪で存在感がありながら、上品で華やかさのあるキクです。
「ディスバッドマム」と呼ばれる種類に分類され、洋菊の1本のキクを大きく仕立てたものを指します。
色がバイカラーのものもあり、ピンクやオレンジの花びらにグリーンが入るのが特徴です。
花びらの付き方はキクらしいですが、可愛らしくおしゃれな見た目に、一見「キクではないと思った」と感じる方もいるようです。
アナスタシアシリーズ
アナスタシアシリーズもディスバッドの種類に分類される洋菊で、豪華な咲き姿が魅力のキクです。
代表的な色はグリーンで、細い花びらの先がカールするように咲くのが特徴的です。スタイリッシュな印象で、カッコいい雰囲気が好みの方におすすめできます。
色は、グリーン、白、黄色をはじめ、ブロンズといった絶妙なカラーもあります。年末のお正月が近づく時期やお盆、お彼岸の時期にお店で見かけることが多いので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
キクの花言葉について解説しました。キクの花言葉は「高貴」「高尚」「高潔」です。平安時代末期、後鳥羽上皇がこよなく菊を愛したことから、高貴な花として扱われて、皇室の紋章に用いられています。
日本で古くから愛されてきた歴史があり、人々の生活にも根付いている花です。品種改良が進んでいることで、キクの品種はバリエーションが豊富で、多彩な種類が楽しめます。
重陽の節句やお月見など秋にはキクを楽しめる行事があるので、ぜひいつもの生活にもキクを取り入れて楽しんでみてください。
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