ガーデンデザイナーの森田さんは、都内のマンションを購入しリノベーションし暮らしています。生活が変わるきっかけから、リノベーションのことなどをお聞きしました。植物のプロが実践する植物の飾り方のコツは必見です。
森田 紗都姫
高知県出身、東京都在住。大学卒業後出版社に就職。その後室内外のグリーンのメンテナンスやランドスケープデザイン・施工を手がける会社での勤務を経て、ユニバーサル園芸社に入社。同時にグリーン選びのサポートをする「studio YAMAMORI」を2018年に設立。町田ひろ子アカデミーでガーデニングプランナー科の講師を務める。
Instagramアカウント
暮らしをガラリと変えたモロッコ旅行
森田 紗都姫さん:今の家に住むきっかけは、旅行でモロッコとスペインに行ったことです。 そのエリアに「リヤド」という中庭のある住居があるんです。そのリヤドをリノベーションし、宿泊者向けに貸し出している宿泊施設があって、そこに宿泊しました。
緑が溢れているリヤドの中庭
森田 紗都姫さん:リヤドはアラビア語で「庭、邸宅」という意味があって、部屋にも植物がたくさんあったり、中庭やテラスがついていたり。リヤドで過ごすうちに「⽇常に中庭、テラスがある暮らしってとても豊かだな」と感じたんです。 当時は利便性を優先し、駅徒歩5分以内の物件で暮らしていたんですが、⽇当たりも ⾵通しも良くなくて。帰国後、光が⼊る南向きで⾵通しが良いバルコニーがついたところで暮らしたいなあと思い、探していたら今の物件が⾒つかったんです。
バルコニーの施工前(左)と
施工後(右)芝とウッドデッキを設置
− 早速、念願の庭のある暮らしに近づいたんですね。
森田 紗都姫さん:ベランダとバルコニーが⼀体になっていて、南向きで⾵通しもよくて、視線も気にならないという条件を満たした物件です。
ベランダとバルコニーが⼀体になっていて、
南向きで⾵通しもよくて、
視線も気にならないという条件を満たした物件です。
− バルコニー優先で探されたんですか?
そうですね。都心のマンションで庭のある暮らしができるか実験の意味もありました。 マンションでの植物のある暮らしについて相談されることも多いので、実際どんな感じなのかを試したくて。室内はスケルトンにしてリノベーションする予定だったのでそこまで重要視はしませんでした。
バルコニーの鉢やテーブル、ハンモックも
モロッコを意識してブルーでコーディネート
バルコニーには植物の他に、コンポストを設置。
− 青い壁がとても印象的です。これも旅からのインスピレーションからですか。
アイランドキッチンの側面の鉄板は
ご主人がDIYして仕上げたもの
森田 紗都姫さん:家全体のインテリアのコンセプトはリヤドの雰囲気と自然の色彩です。 壁の色味は「海のように時間帯によって⾊の変化があって、⾃然に馴染み、浅くも深くもある⻘」にしたいと思い、業者さんにイメージを伝えるため、主⼈とPhotoshopでその⾊味を作って対応してくれる工場を探しました。施⼯の時はベテランの⼥性職⼈さんが、その場で⾦銀銅の粉を⻘い粉とブレンドして、⻘の表現をしてくれたんです。
− 光の加減でグラデーションかと思ってましたが、そうなっているんですね!
近くで見るとキラキラと輝いている青い壁。
ライティングや日の入り方で様々な表情を見せてくれる
森田 紗都姫さん:水の波紋が広がるようなムラのある表現にしてくれました。とても感謝しています。 他では、雑貨やラグも旅⾏の時に購⼊したものを置いたり、植物も現地で⾒た種類 を選んだりしています。
モロッコ旅行で買ってきたポットと器
ストレスのない暮らしを実現したリノベーション
森田 紗都姫さん:あと、極⼒ストレスをなくすように設計しました。主⼈も私も本当にズボラなので家事を減らしたくて。
棚や収納は備え付けにし、お掃除ロボットがスムーズに動けるように床をフラットにして、置き家具は必要最低限のみ、極⼒物を置かないようにしています。植物を除いてですが。
(左)施工中の様子
(右)植物は窓際にまとめて配置
南の窓にはドライフラワーをカーテン代わりに。
− 本当に手がかからない仕組みでできているんですね。
森田 紗都姫さん:植物は普段の動線に集中して置いています。ベランダにホースがあるので窓を開けたら⼀気に室内外の⽔やりができるように固めて配置しました。とにかく⼿間が減り、引っ越してからの暮らしが変わりました。
窓周りは直接植物を植えられるように設計。
窓を開ければ外から水やりできる
エアプランツを飾っている格子状のシェードはDIYしたもの。
かぶぞうくんのおうちにも植物を添えて
[https://andplants.jp/products/sansevieriazeylanica-l?variant=39931659583656]飾り方のコツは「点・面・線」と「山」を作る
− たくさんこだわりの詰まったお部屋がすっきりしているのは、そういうことだったんですね。それもあって、大きなシンボルツリーがとても目を引いていて素敵です。こなれた感じに見える植物の飾り方のコツを知りたいです。
中央にシンボルツリーを置いて、
左に面→点→線で山型になっています
森田 紗都姫さん:1つ目は、葉の形を「点(葉が⼩さめ)」と「⾯(葉が⼤きい)」 と「線(縦のライン)」の3種類を組み合わせることです。 そして、2つ目に漢字の「⼭」になるように3つの植物を配置すること。 この2つを応⽤して⼭を複数作れば⼤きい森になります。⼭の形を意識することで、飾るのが苦⼿な⽅でもまとまりよく飾れると思います。 また、シンボルツリーを選ぶ時は天井の3分の2程度の高さを⽬安にするのがおすすめです。樹形や高さは初めから理想のサイズで買うのがポイント。 部屋をどんなテイストにしたいのかを決めておくことと⽇当たりはどれくらいで、 スペースがどれくらいあって、⾵通しはよいのかも確認しておくと良いですよ。
(左)小さなサボテン、多肉植物はキッチン横の窓辺へ
(右)「面」の葉として飾っているカラテア
編集者からガーデンデザイナーへ。異業種への転職
− 森田さんは大学を卒業後に出版社へ就職されてから、ランドスケープのお仕事へ転職してるのは、元々植物がお好きだったんですか?
森田 紗都姫さん:そうですね。⼦供の時からテーマパークより、ガーデンセンター の⾏くほうがテンションあがってました。 学⽣時代、国際協⼒や環境問題について学んでいて、その流れで出版社に⼊社しました。そこではじめに農家さんを取材する仕事をし、いろんな体験をさせてもらいました。 当時は今のように植物を手段に仕事にする、というイメージは全くなかったのですが、ちょうど仕事で東京ビックサイトへ⾏くことがあり、休憩中に植物をお手入れしている方がいたので話しかけてみたんです。「何されてるんですか?」って。 植物をメンテナンスするお仕事があるんだと知ったのはそこで。
趣味であった植物について、そこで初めて仕事になるんだということを知り、 「植物のお⼿⼊れができるようになったら私、幸せかもしれない」 転職しよう と。 そこからランドスケープの会社に転職してメンテナンススタッフや、ランドスケープの仕事に関わるようになりました。
(左)虫眼とアニ眼は何度も読み返している一冊
(右)環境問題やデザイン、植物の本などが並ぶ本棚
− ⾃分が「幸せ」と思えることにチャレンジして、今があるんですね。次のステッ プとして今後はどんなことをやってみたいですか。
森田さんの著書。観葉植物やハーブなど、
ジャンル別にわかりやすく紹介されています。
森田 紗都姫さん:都市に緑を還して行きたいと思っています。 急にそんなことを言っても伝わりづらいと思うので、まずは身近な暮らしの中で植物を取り入れてもらうことで好きになる、関心を持つきっかけを増やしたいです。そうすることで植物の全体量を増やしていきたいと思っています。直近の目標としては多様な人や動植物が集える公園を作りたいと思っています。