都内にアトリエを構え、ウェディングや展示会等の装飾をメインに活動している「Maison Calme(メゾン カルム)」オーナーの大輪 友樹さん。
花との出会いから現在の活動、想いやご自宅での花の楽しみ方などを伺いました。
花と一緒に穏やかな心を届けること 独自のスタイルが生まれるまで
− まず、お花を始めたきっかけや今に至るまでのことをお聞かせください。
大輪さん:お花の業界に入ったのは2010年の22歳の時で、それまではホテルで結婚式場の演出や音響の仕事をしていました。その流れでお花を目にする機会が多く、だんだん興味が湧いてきて「お花をやってみたいな」と。
そこで、勤めていたホテルのお花屋さんに勤めました。 最初の店舗で基礎的なことを学んで、その後別のお花屋さんに勤め、2018年に「Maison Calme(メゾン カルム)」として独立しました。
− ホテル業界からの転職だったんですね。最初のお花屋さんで修業されていた時はどんな感じだったのでしょうか。
大輪さん:それこそ無知のままお花の世界に飛び込んだので、最初は花瓶のお水の交換やバケツ洗いなどからのスタートでした。だんだんとお花に触れる機会が増えていった感じです。一番最初に勤めたお花屋さんがパリをイメージしているお店だったので、そこでパリスタイルと言うものを一から学んでいきました。
− 「Maison Calme」というブランドについて、どんな意味や思いで立ち上げたのですか。
大輪さん:ショップの名前に入っている「Calme(カルム)」は、フランス語で「穏やか、落ち着いた」という意味で自分自身も穏やかな気持ちで花・植物に触れ合い、その花を贈る方も受け取る方も穏やかな気持ちになってくれたらいいなという思いがあります。

季節のお花をメインに使い、パリスタイルで培ってきたエレガントさをベースに植物本来の自然な動きをプラスして作っています。
− 季節の花を束ねたブーケやウェディング装飾など、どれも本当にすてきです。現在はウェディングのお仕事が多いのですか。
大輪さん:土日はほぼ毎週ウェディングのお仕事をさせていただいています。平日はアパレルなどの展示会装飾をしたり、結婚式場の広告撮影のお花をデザインさせていただいています。

− Instagramを拝見すると、シンプルでも華やかな作品から色をふんだんに使った作品まで大輪さん独自のスタイルがあると思います。
これは今までのお花屋さんでの経験から、だんだん自分がそういう志向性になっていった感じなのですか。普段参考にしているものや、好きなものを知りたいです。
大輪さん:そうですね。今まで学んできスタイルに、自分らしさをプラスしていった感じです。華美な中にも自然な表情や動きのある感じが好きなので、抜け感を意識してお花を生けています。
好きなものはファッションやフレグランス。嗅覚で感じるものってすごく大きいので、 香りはいつも意識してるかも。お花の邪魔にならない様な物をセレクトして使っています。
− 他にもブランドを持つ上で大事にしていることはありますか。

大輪さん:なんだろう…色合わせかな。一番最初に勤めたお花屋さんが色の組み合わせにはすごくこだわりを持っていて。
最近メイクでよく聞くブルーベース・イエローベースを当時から取り入れ、それを軸に色合わせをしていました。「この色は春色だからこの夏色と混ぜたら合わない」など徹底的に教わったので、市場でお花を選ぶときもそれを考えて仕入れ、組み合わせるようにしています。
− メイク以外でもパーソナルカラーが取り入れられるんですね。今までたくさんのウェディング装飾を手掛けて来たと思いますが、どんな感じで進めていたり、こだわっていることはありますか。

場所・長野/軽井沢 会場名・RUZE Villa
大輪さん:まずはご新郎様・ご新婦様のご希望をお伺いします。今は情報が溢れているのでお二人が画像を沢山集めてきてくれます。それを参考にお話を進めていくのですが、その画像のままだとせっかくのお二人の結婚式なのにそれと同じ事をするのはとっても勿体ないなと思うんです。
以前、『ナチュラルにしたい』と画像を集めてきてくれたお二人がいらっしゃいました。自分は『では、そうしましょう』で終わらせずに、どうしてナチュラルな感じにしたいのかなど一歩踏み込んでお話をさせていただきました。
すると『デートで行っていた公園のお花がイメージなんです』と。実際にその公園のお写真を見せていただくと、確かに華美ではなく野に咲くナチュラルなお花の印象でした。では、その公園を再現しましょう!!となりメインテーブルで使用する椅子は木のベンチにし、下からお花が生えている様なイメージでアレンジメントを置き、まるでお花畑の中にお二人が座っている様なデザインにしました。

場所・長野/軽井沢 会場名・RUZE Villa
この様にすると、ご希望の世界観がぐっと広がるのでいつも一歩踏み込んでお話をさせていただいています。お二人にとって、こんなに沢山のお花を飾る機会は少ないと思うのでお互いに全力で向き合っていきたいと思っています。
店舗を持たない花屋を選んだ理由
− 現在、店舗を構えずに活動をされていますね。店舗のない花屋というスタイルを選んだのはどういったことからですか。
大輪さん:独立するときにはウェディングのお仕事が決まっていて、 そうなるともし店舗を構えたとしても開店できる時間がないなと。なのでショップは構えずにアトリエとして運営するスタイルにしました。

− 作業されているアトリエはどんな雰囲気なのでしょうか。
大輪さん:アトリエは「美しい作品を作る場所」ということを前提に空間を作りました。壁紙も好きなものを選び、床もちゃんと張り替えて、自分のテンションが上がるような内装にしています。
花との暮らしの第一歩はお気に入りの花瓶選びから
− 日常的にお花を購入して楽しんでいる方もいらっしゃれば、観葉植物は育てているけれどお花はあまり買ったことがない方もいると思います。お花を取り入れやすいアイデア・アドバイスをいただきたいです。
大輪さん:お花を買うのに慣れていない方からしたら敷居が高いと思うので、花瓶から入るのも全然ありかなと思います。お気に入りの花瓶があるとお花を生けていなくてもインテリアとしてあるだけでテンションが上がり、お花を買う機会も増えるはず。
− お気に入りの花瓶を探してインテリアとして始めるのは、取り入れやすいかも。花瓶選びのコツはありますか。

大輪さん:個人的には春のみずみずしいお花と夏の暑い時期には、清涼感を出すためにガラスの花瓶を選んで。秋のこっくりした色・冬の針葉樹や実ものはマットなテクスチャーの陶器ものを選ぶなど、シーズンごとに変えるのもおすすめです。

− 今度はお花を普段から楽しんでいて、お花との距離感が近い方への楽しみ方はどんな感じでしょうか。
大輪さん:これはオーダーをいただいた花束を発送するときに思うことで、そのまま花瓶に入れて飾っていただくのもいいけど、ばらして好きに生け直して飾るのも楽しいかなと思います。
− え、そうなんですか?! それはなんでそう思うのですか。
大輪さん:その花束は自分のバランス感で束ねているので…ご自身のお好きな様に愛でていただけると嬉しいです。

− その発想はなかったです。大輪さんの作品をまず楽しんで、ばらして自分なりに生けてみる。幾通りもの楽しみが生まれますね。ちなみに、 大輪さんご自身はご自宅でお花をどう楽しんでいますか。
大輪さん:洗面台に必ずお花を飾るようにしています。1日の始まりに行く場所で、1日の終わりにも行く場所。身だしなみを整えてすっきりしたいスペースなので、1種類のお花でさらっと飾ることが多いです。
嗅覚で楽しみたいときは、ローズマリーやゼラニウムなどハーブを生けて楽しむときもあります。
アトリエから次のステップ 花を通して日々に潤いを
− 最後に、大輪さんがこれからやっていきたいこと、目指していることをお聞かせください。
大輪さん:基本外に出るお仕事が多いことから、なかなか一般のオーダーをお受けするタイミングが少なくて。なので、なるべくオーダーを受けられるようにするのと、お客さまと直接お会いできる機会を増やしていきたいです。

大輪さん:アトリエも手狭になってきたので引っ越しを考えています。次はショップ兼アトリエみたいなことができたらいいなと。そこでCalmeのお花に少しでも触れていただいて、日々の生活に潤いをプラスできるようなことを提供できたらいいなと思っています。
− お店がどんな空間になるのか、今から楽しみです。
大輪さん:次のステップとしては、Calmeの世界観を共感できるスタッフと共にもう少しお仕事の幅を広げていけたらいいなと考えています。
AFTER INTERVIEW編集後記
穏やかとは「静かさや、落ち着いている」という意味を持つ言葉。その通り、終始穏やかな様子の大輪さん。その柔らかな雰囲気はただふわっとしているのではなく、しなやかさを感じました。それはきっと大切にしている想い、しっかりとした芯があるからこそ強く、美しい。それは野に咲く花のよう、たくさんの方の心を動かしていくのだと思います。Instagram:https://www.instagram.com/maison_calme/