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東京・世田谷の花屋malta  オーナー布山瞳さんが紡ぐ、街と人、そして花とのストーリー DATE : 2025.06.30
LIFESTYLE

東京・世田谷の花屋malta オーナー布山瞳さんが紡ぐ、街と人、そして花とのストーリー

東京・世田谷区、新代田駅から徒歩4分。落ち着いた住宅街に佇む花屋「malta(マルタ)」。今回はオーナーの布山瞳(ふやま ひとみ)さんにインタビューを行い、花との関わりや日常に花を取り入れるヒントについてお話を伺いました。

 

布山 瞳さん

malta オーナー

Instagram:https://www.instagram.com/maisonmalta/

幼い頃から続く、ものづくりへの熱い想い

− まず、お花に興味をもったきっかけや独立するまでの経緯などをお聞かせください。

布山さん:もともと手を動かすことが好きで、子どもの頃から職人のような仕事に憧れていました。ただ、家族はそういった職業に縁がなく、「高校卒業後は大学へ行って会社に勤める」というのが自然な流れという家庭でした。
私は専門学校に進学したくて家族に交渉もしたんですが、結局大学進学を選びました。それでも「ものづくりを続けたい」と思い、雑誌作りのようなクリエイティブな学科を選びました。

学生時代にはファッションショーの企画や舞台美術など、さまざまなものづくりに関わっていました。でも就職活動のとき、「私にできる“技術”ってなんだろう」と立ち止まって。
お花がすごく好きというよりは、色を合わせたり、花同士の組み合わせを考えたりするのが好きでした。大学に入ってから華道と茶道も習い始めていたので、「花の道かもしれない」と思い、テレビ番組のお花の装飾を手がける制作会社に就職しました。
その後、ウェディング装飾やショップディスプレイを行うアトリエに転職し、装飾を中心に仕事をしてきました。

− 装飾から始まったんですね。アトリエから独立をするきっかけは何かあったのですか。

布山さん:30歳になる頃、ものづくりよりも人をまとめたりすること、店長さんみたいなことやってもらいたいというお話になって。私は手を動かしてることの方が好きだし、人をまとめるとしたら自分の会社でやる方がいいんじゃないかなと思い、独立することにしました。
20代があっという間に過ぎていったこともあって、何歳で独立するか期限を決めていなかった中で、たまたまのきっかけをいただいたと思います。自然と流れついた感じです。

− まずはご自宅で活動されて、2017年から店舗を構えられましたが、その変化の背景にはどんな思いがあったのでしょうか。

布山さん:自宅ではひと部屋改装してお花専用の部屋にしていて、スタッフと作業していましたが、もうそのキャパを超えてお仕事いただけるようになってきたんです。

お店というよりは、自分たちが好きなことを見てもらえる場所で、作業場として自宅から近くで良い場所がないかなって思って散歩していたら、たまたま見つかったのがここでした。

余白の中に咲く 自然の美しさを届けたい

− ホームページには「花と緑から感じ取る季節の美しさと、そこから生まれる“余白”を大切に」とあります。
実際にお店を訪れると納得できるのですが、「余白」という言葉をまだ来店したことのない方に説明すると、どのような意味になりますか。

布山さん:羽根木は都内でも植物の多いエリアだと思います。だからナチュラルなブーケやアレンジを想像される方も多いですが、実際はそういうわけでもなくて。考え方もあまり縛られたくないっていうのがあります。

今日の服はたまたま黒ですが、古着もきちんとした服も好きですし、それらを混ぜて楽しむのも好き。家のインテリアもシンプルなところがあれば、古い花瓶が雑多に並ぶ空間もあります。 「今はこれが好き」という感覚があっても、それ以外を嫌いになったわけではなく、広く“好き”がある感じです。

お店で扱うものも、何か1つのテーマに縛られず、その時その時に好きなもの、作家さんや物と出会い、時に信頼する方から勧めてもらい良いなと感じたものを選んでいます。

− 自然にその時好きなものを、楽しむ。その縛りのない感じが、余白に繋がっているということなんですね。

布山さん:私自身、自然豊かな環境で育ち、家の庭にいくつも花が咲いていました。その様子は主役の子だけが目立つのではなく、控えめ、素朴な雰囲気で横や後ろを向いていたりする花もいて。そういった脇役たちも大切な存在だと思います。
主役も脇役もみんなが同じ向きを向くんじゃなく、どこがいい表情をしているかなって探して「ちょっと抜け感があった方がこの子が引き立つよね」とか、一緒にものづくりするスタッフとも話します。

− お店を始めて、企画や装飾など様々な作品に関わってきていると思います。その中でも印象深かったこと、エピソードはどんなことがありますか。

布山さん:どれも本当に思い入れのあるものばかりなんですけれど、その中から一つあげるならお店でやったイベントのことです。

お店の並びにある「羽根木の森」という建築家の坂茂さんが設計した集合住宅があって、その中に事務所を構えているフォトグラファーさんとそのお弟子さんたちで「羽根木の森展」という写真展を開催しました。展示の写真は羽根木をテーマにポラロイドカメラで撮影した写真を並べ、展示販売という内容です。

写真はアートとして高額になることが多いですが、「もっと気軽に、部屋に飾ってほしい」という想いがありました。
イベントには感度の高い方々だけでなく、いつもお花を買いに来てくださる近所の方々も見に来て下さったんです。すごく温かい雰囲気でした。

ターゲットを絞るのではなく、流行に敏感な方たちだけではなく、この街で暮らしている方々にも届き、幅広い人たちに観てもらい、気に入ってもらえたことはすごくよかったなと思います。

日常に花を取り入れるための、やさしいヒント

− 布山さんにとってのお花の魅力、お花の持つ力はどのように感じていますか。

布山さん:絶対に飽きないところですね。特に日本は四季があって、生きた素材である花は日々表情が変わります。同じ花でも昨日と今日では違う。モダンなものを作る時も、物としてではなく“生き物”として捉えたいという気持ちがあります。

− お花に対して「いいものだと思うけれど、自分で買ったことがない」、「どう飾ったらいいのかわからない」というお花初心者に何かアドバイスはありますか。

布山さん:季節を感じられて変化があるものもおすすめです。毎日、花に触れている私でも、朝起きて昨日とはまた違う花の姿を見た時に「今日も綺麗だな〜!」って思わず声が出ちゃうくらいです(笑)

観葉植物の場合、多肉植物は水やりの回数が少なくても育ちますが、水をいつやればいいかわかりにくいところもありますよね。なので、水やりをしないと萎れてしまう、水やりのサインが見えやすいもの、変化がわかる観葉植物をおすすめしています。
マジックアマリリスのように水やりしなくても花が咲き管理しなくても楽しめるものは導入としてはいいのかなと思います。

もうひとつはドライフラワーにしやすい花をご案内することもあります。生花は日持ちしないからとためらう方も、ドライにできれば長く楽しめるので、導入として良いと思います。

− ドライフラワーになっても楽しめるとなると、やってみようかなともなりますし、長く楽しめるとわかっていると買いやすいかも。
逆に普段からお花を定期的に飾っている方へ、おすすめの花の楽しみ方はどういった感じですか。

布山さん:お客さまの中には「この花瓶に花を生けたいです」と家にある花瓶の写真を見せてくれる方もいます。ご自宅用に数本購入される場合に、1つの花瓶に生けるだけでなく2つの花瓶を組み合わせて飾ることを提案することもあります。

関わる人たちも気持ちよく、花のある日常を

− 花瓶を増やすだけでも印象はガラリと変わりそうですし、すごくハードルが高いわけでもなくチャレンジできそうですね。布山さんご自身は、普段自宅でどのように花を楽しんでいらっしゃいますか。

布山さん:自宅ではあまり作り込まずに、1種類をどさっと飾ることが多いです。また、職業柄「実験」のような気持ちで飾ることもあります。たとえば、日当たりの良い場所とそうでない場所での花の持ちを比べてみたり、水換えの頻度を変えてみたり。
その体験を通して「毎日水を換えるのが理想だけど、3日に1回でも大丈夫ですよ」みたいな、現実的なアドバイスをお店で伝えられたらと思っています。

− 最後にこれからのことを。お店のこと、布山さんご自身のことも含め、今後やってみたいことなどをお聞かせください。

布山さん:大きな野望はなくて、むしろ「できれば小さくしたい」気持ちはあります。30代は、とにかくお仕事をいただけることが嬉しくて、お断りは絶対にしませんでした。
でも今は、「お互いに気持ちよく仕事ができる関係」を大事にしたいなと感じています。
金額だけで「安いからmaltaさんにしたいです」と言うんだったら、うちじゃなくてもいいのかなって思う。たとえばウェディングのお仕事で「会場の都合でmaltaさんに」と言われるより、「maltaさんの装花があるからこの会場にした」と言ってもらえるのが本当に嬉しいです。

お金のためだけにあくせく働くというより、意味のある仕事を、気の合うお客様と。そんな関係性が少しずつ増えていったら、もっと楽しいと思います。


AFTER INTERVIEW編集後記
街、植物、人。それらを静かにつなぐ場所が「malta」。布山さんの言葉や佇まいから感じられるのは、"ぶれない芯"と"心地よい余白"。変化を楽しみながら、自分の感性を信じて、花を通して誰かの日常を少しだけやさしくする──そんな生き方とものづくりが、確かにここにありました。

店舗情報
malta(マルタ)
〒156-0042 東京都世田谷区羽根木1-21-27 亀甲新#ろ 59 
tel:03-6265-8966
アクセス:京王井の頭線 新代田駅より徒歩4分
HP: https://maison-malta.com/
営業時間:13:00-18:00
定休日:月・火

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