コスメブランドのビジュアルやアパレルブランドとのコラボレーションなど、あらゆるジャンルで植物画を制作、活躍しているボタニカルペインターのSaori Ohwadaさん。アトリエを彩るお気に入りのインテリアアイテムからまもなく開催される個展のことなどをお聞きしました。
植物と一緒に育まれた、掛け替えのない感覚
− Saoriさんが描く植物は、リアルさや繊細さだけではなく、どこか力強く生命力もあるような気がします。それはSaoriさん自身が植物に触れ、育てていることが関係したり、影響されていたりするのでしょうか。
アガベとサボテンを描いている様子。色合い、影、質感も一筆ずつ描写し、表現している
店舗内壁画の制作風景
Saori Ohwadaさん:力強さや生命力という部分は私が一番伝えたいものでもあるので、そう言っていただきとても嬉しいです。植物を実際に育てることはもちろん、私自身の中で一番大切にしていることや伝えたいことが影響あるのかもしれません。
旅先でも植物に触れ合い、スケッチをしている様子。
日々変化する植物の成長を観察していると、こちらが沢山のことを学ばされてる感覚になります。植物たちはただ純粋に成長し、子孫を残すために花を咲かせ種を付ける。そのシンプルな生き方がとても逞しく、そして美しく感じます。その感覚を作品に投影するように描いています。
200種ほどの植物との暮らしと、アトリエのこと
− ご自宅でもたくさん植物を栽培している様子をSNSでも拝見しました。主には絵で描いているようなサボテンや多肉植物などなんでしょうか。購入する時は、モデルとして選ぶのか、それとも直感で選んでいるのでしょうか。
Saori Ohwadaさん:そうですね。自宅で育てている植物はサボテンや多肉植物が主です。賃貸ですが自宅には庭があるので、軒下にスチール棚3台を置き、そこで管理しています。常に天気予報をチェックし、晴れの日は日光が当たる位置にトレーを移動させ、雨の予報が出るとすぐに軒下に戻す。この作業を日々しております笑
幸い、庭には一日中、日が入るのでサボテンやアガベのような日光を好む植物が元気に育つ環境なので、その種類が多いです。
[https://andplants.jp/products/peruvianapple-l?variant=39931659255976]多肉植物とサボテンは専門店やイベントなどで、手にとってセレクトしたものたち
Saori Ohwadaさん:購入する際は、「今日は欲しい植物を探す!」と決めて選んだり、「モデルとして探す!」で選んだり。自分なりのスイッチがあるのでそれを元に選んでいます。
前から欲しいと思っていた株に出会った時は何も考えずに買いますね。モデルにする際は視点がちょっと変わり、葉の形や色味や株の特徴によってこの植物を描いてみたい!と思う植物を選んでいます。
instagramでは、作品の他に植物を楽しんでいる様子なども発信。
− 作業部屋でお気に入りのインテリアアイテムを教えてください。
Saori Ohwadaさん:まず、タイ在住の作家YARNNAKARNさんの蝶々の陶器作品。
まるで壁にとまってるような蝶々の躍動感がとても素敵です。他にもセミの抜け殻やカブトムシといった昆虫作品もあるので、いつかコレクションに追加したいです。
昆虫標本美しい配色や模様のある昆虫が特に好きで、制作の休憩時によく眺めています。これからもコレクションしていく予定です。
古書店やアンティークショップに行くとよく置いてあるので、好きな植物が描かれている切手を購入し、自分で額装したものです。世界の植物画切手自生している植物の国で実際に使用された植物画切手です。 国によって絵のテイストやタッチに違いがあり、面白いです。自分の作品が切手になったら……なんて妄想しつつコレクションしています。
アンティークのボタニカルアートも、古書店やアンティークショップで好みの植物モチーフを見つけると思わず集めてしまうくらい好きですね。いつも目に入る作業部屋に飾っています。
− 絵を飾るとき、おすすめの場所とかがあれば知りたいです。またはSaoriさんは普段どんなところに飾っていますか?
Saori Ohwadaさん:ふと目に入った瞬間にモチベーションが上がったり、刺激をもらえたりするので、常に目に入る位置に絵を飾ります。実は自分の絵は家に飾っていないんです笑
他のボタニカル作家さんの作品ばかり飾っています。自分の作品を常に見てしまうとどうしても自分なりに評価しがちで.…..。ここはもっとこうした方が良かったとか笑
すぐ反省会が始まるので、自分以外の作品を飾っています。
− SNSでは、植物だけではなく、昆虫もお好きなんですね。昆虫を描くことはあるんですか?
Saori Ohwadaさん:昆虫はとても好きです。幼少期はよく一人で遊んでいたこともあり、昆虫との思い出が多いです。
公園でカエルの卵を拾ってきてカエルになるまで育ててみたり、キャベツ畑からモンシロチョウの卵をもらって育てたり、様々な昆虫と常に戯れていました。子供の頃、夢中でワクワクしていた感覚が蘇ってきているので、今後、昆虫も描いてみたいと思っています。今はまず昆虫と戯れることを優先にしています。
− 昆虫だけではなく、巨木もお好きですよね。今まで訪れた巨木スポットの中でおすすめのところを教えてください
Saori Ohwadaさん:はい、巨木や古木がとても好きです。植物にモチーフを絞る前は樹木をモチーフに描いていました。国内だと王道ですが、やはり屋久島ですね。立派な巨木が多くテンションが上がってしまい、森を歩くたび写真を撮っていたので、なかなか前に進まなかった思い出があります笑
あとは熱海にある来宮神社の御神木も好きです。樹齢推定2000年以上の歳月を生き抜いてきた姿は本当に圧倒されます。海外だとセコイア・キングスキャニオン国立公園に自生している世界最大の樹木、ジャイアントセコイアもオススメです。
セコイア・キングスキャニオン国立公園のジャイアントセコイア
− 今後描いてみたい、育ててみたい植物を教えてください。
Saori Ohwadaさん:まだまだ描いたことがない植物がたくさんあるので選ぶのが難しいですが、熱帯雨林系の植物をもっと描いてみたいですね。シダを始め、綺麗な色合いの植物を描きたいです。
育ててみたい植物も熱帯系ですね。部屋の中では植物を育てていないので水槽で管理するパルダリウムのような感じで育ててみたいと思っています。
ズボラな性格なので管理が難しそうで中々チャレンジできてませんが……いつかチャレンジしたいです。
− Saoriさんが考える、植物の魅力とはどんなところでしょうか。
Saori Ohwadaさん:冒頭でも話しましたが、やはりシンプルな生き方を見せてくれるところが魅力的です。雑念もなくただシンプルに生きる姿を見せてくれると、自分があれこれ悩んだりしてることがどれほど小さいことかと気付かせてくれてます。もっとシンプルな思考で日々過ごさないと!と常に喝を入れられてる感覚です笑
− 開催されている個展、いつも伺っています。今回の個展はどんな感じなのでしょうか?
Saori Ohwadaさん:ありがとうございます。
奇妙なフォルム、奇抜な配色、どこか宇宙的な魅力を放つ珍しい植物たちこの植物たちが持つ計り知れない美しさ、逞しさ、そして力強い生命力を作品に込めた植物画を展示いたします。
今回の個展も珍しい植物をメインにキャンバスと紙に描いた作品を展示しています。
− 今回も原画作品は購入できますか?
Saori Ohwadaさん:はい。原画作品は購入できます。他にも新作のアートワークをモチーフにしたTシャツやマグカップを始め、アガベモチーフをメインとしたポスター、ポストカード、ステッカーと様々なグッズを用意しました。ぜひ会場で、手に取ってもらえたら嬉しいです。
− ありがとうございました!個展で新作を見ることを楽しみにしています。
個展「植物を愛でる展」詳細情報
開催期間:2022/7/26(火)〜7/31(日)
時間:11:00〜19:00(最終日のみ17:00まで)
会場:弘重ギャラリー(恵比寿駅徒歩6分)
入場無料
※ワンドリンク制となるため入り口にてドリンクのご注文をよろしくお願いいたします。
AFTER INTERVIEW編集後記
個展のタイトルにも使われている「愛でる」とは、大切なものを愛するということでもあります。日々植物はもちろん、昆虫に巨木と自然を愛し、大切にしている様子が伝わりました。その思いが、一筆一筆に込められ、ひとつひとつの作品に愛が溢れているからこそ多くの人の心を動かしているのではないでしょうか。個展はもちろん、これからの活躍も楽しみです。