都内近郊で築40年68平米の中古マンションをリノベーションし、一人暮らしをしている細野さん。マンションリノベをするきっかけやインテリア、通販で植物を購入するとき気にしていることなどお話を伺いました。
アートディレクターが家をセルフディレクションしてみたらどうなるのか
細野さん:以前は1DKに10年間住んでいて、引っ越しを考えるようになりました。昔から登山が趣味で、景色の良い、大きなテラスのある家に住みたいなと思って家を探しました。
アートディレクターの仕事をしているため、普段から様々なディレクションを行い、物作りに携わっています。自分以外のディレクションはしているけれど、「自分自身が好きなものを思いっきりセルフディレクションしてみたらどうだろうか」と考え、それがリノベーションをするきっかけとなりました。
− 実際にこの家をセルフディレクションしてみて、どうでしたか。
造作の棚にはCDやレコードが並ぶ
細野さん:色々と考えてみた結果、とても楽しかったです。最初は、躯体を全体的に現すこと(下地や壁紙などを貼らずにコンクリートの壁や梁などを剥き出しのままにすること)をしたかったのですが、間取りが変わった形をしていたので全体的にはできないことがわかりました。
キッチンまわりなど一部は下地が残っている。これもまた趣深い
細野さん:じゃあ、どうしようと壁のイメージを探していて見つけたのが今の壁です。「木毛セメント板」というものを使っています。後に雑誌を見ていて気づいたことなんですが、この壁、細野晴臣さんのスタジオの壁と同じだったんです。
細野晴臣さんのレコード「HOSONO HOUSE」
− 偶然「HOSONO HOUSE」になったとは驚きですね。細部までこだわって作られたと思いますが、特に気に入っているところはありますか?
細野さん:気に入っている部分は「全部」と言いたいところですが、強いて言うならスピーカーの音が活かせるようになったことですね。
レコードプレーヤーもスピーカーも前の家から愛用していたもので、前の家では音量を小さめにして使っていました。どちらも活かせていなかったと思います。
細野さん:この前、実家の部屋から、初めての一人暮らしの家と歴代の部屋を知っている20年以上付き合いのある親友が初めてこの家に来て。
その時に「本、CD、レコードに絵。どれも前の家より輝いている、すごくいいものに見える」と言われて。めちゃくちゃ嬉しかったですね。
IKEAのディッシュスタンドをブックスタンドにしている
アイデアは真似したい
植物は”ほぼ全滅”からの再スタート
細野さん:この家への引っ越しは、植物を育てることを前提に考えました。ここに引っ越す前から植物は好きで、チランジアとかいろいろ育てていました。でも、ほぼ全滅させてしまったんです。仕事が忙しくて管理ができなかったためです。また、風通しが悪かったことも原因のひとつでした。
− 管理ができないほどとは、大変な時期をくぐり抜けてきたことが伝わります。忙しさから抜けた時に植物を見たら虫がついていたり、葉が焼けていたりということ、私もありました。植物を見ることもできないほどバタバタしていたんだなあと。あらためて、植物のある日常が戻ってきて、変化はありましたか。
細野さん:まず、朝の時間が変わりました。前は朝起きたら支度してすぐ会社に行っていました。今は水やりをするための時間が作れるようになったと思います。今は調子良く育っています。
ネットで植物を購入するときのコツや気にかけていること
− 植物と暮らすことは、自分を整えるという点につながっていますね。細野さんは普段どういう風に植物を選んでいますか。
細野さん:置きたい空間に合わせて選ぶことや、見た目がちょっと個性的なものを選んでいるのかなと。
黒いガラスの前にはそこそこ存在感のある植物を置きたくて。アンスリウム・フーケリーを選びました。サイズもちょうど良かったです。大きすぎても通れなくなっちゃうので。
左:アンスリウム・フーケリー
右:オーガスタ どちらも葉が大きく存在感抜群。
[https://andplants.jp/products/birdofparadisetree-l]細野さん:お店はセレクトショップで見ていました。タンクブロメリアが好きなんですが、扱っているお店が少ないこともあって今はほぼネットで購入しています。
− たしかに、定番人気の観葉植物というよりはちょっとユニークなセレクトですね。ネットで植物を購入するときのコツや気にかけていることを知りたいです
ネオレゲリアは窓辺に吊るして日光を確保
細野さん:購入するときは、まず内容を確認して写真が「見本」ではなく「現品」を選んでいます。サイトの掲載写真が現物なので届いたときに「なんか違う」というようなことは今のところないですね。
− 植物は生きものだから、多少の違いはあるとしても、どんな植物が届くか気になってなかなか踏み切れないことがありました。レビューとか見てしまうとなおさら。気になるならば、1点ものを吟味して選ぶことが良さそうですね。
左:ビルベルギアは流木に着生したものはハンギング。
憧れに、思い出。インテリアは「アーカイブ」のひとつ
細野さん:テーブルは初めて就職したデザイン事務所の会議室で使っていたもので、かっこよかったんです。当時まだ20代前半で、憧れていましたね。いつか自分の家にこのテーブルを置けたらいいなというのがありました。この家に引っ越すタイミングで迷わず買いました。
テーブルはPacific furniture serviceのOPERATION B TABLE
細野さん:シルバーのテーブルは学生の頃によく行っていたアートスタイルマーケットのもの。バイトしてみたいと思うくらい好きでしたね。昔から好きなものが変わらないのかなって思います。「自分アーカイブ」じゃないけれど、そういう部分もあるのかもしれません。
細野さん:日常の中で見ているものの中でも、なにかしら心に残っているものが集まってきている。アーカイブとはそう云う部分もあるのかなと思いました。
あとはデザインや名作の復刻のものもあります。デザインした人や 物にちょっとしたストーリーがあるほうが惹かれます。
ディーター・ラムスの「ABW30」を再現したBRAUNの時計
左:スター・ウォーズのフィギュアなどは玄関近くの棚に並ぶ
右:歴代のipodやiphoneもディスプレイ
− これから買い足すならばどんなアイテムを足していきたいですか。狙っているアイテムがあれば教えて下さい。
細野さん:家具は一通り落ち着いたから...植物育成ライトです。リビングは南向きで日当たりが良いから問題ないのですが、デスクがある北側の方にも植物をもう少し置きたいので。
階段の上段にあるワークスペース。壁ではなく階段で空間を仕切っている。
− これからもまだまだ植物は増える予定なんですね。
細野さん:今だとダクトレールにまだいけるなと。吊るせて飾れるようにハンギングを狙っています。あと、バルコニーもこれからですね。
ダクトレールには様々な植物が並ぶ。
− 置き場所や空いているスペースがあると、まだいけるってなります。そしてどこまで飾れるのかなとも。
細野さん:今の職場に昨年「dスタ」という撮影スタジオができて、そのスタジオも植物だらけにしたいなと企んでいます。ちょっとずつ、増やしていこうかなと。
− ご自宅だけではなく、職場も緑化しているとは。どこにいても植物と過ごせるのは最高ですね。どちらも数ヶ月後はどんな感じになっているのか楽しみです。ありがとうございました。