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花が育つ背景も、生産者の想いも伝える。東京・世田谷区の花屋「uto」松永 佳純さんインタビュー DATE : 2024.10.19
LIFESTYLE

花が育つ背景も、生産者の想いも伝える。東京・世田谷区の花屋「uto」松永 佳純さんインタビュー

東京・世田谷区にある花屋「uto(ウト)」。
小田急線経堂駅と千歳船橋駅の間にあります。ギャラリーのような内装の店舗は、澄んだ空気の店にしたかったというオーナー・松永さんの意図が反映された特別な空間。
心地よい余白と存在感のある展示台、そして主役の花が並ぶ店内にてお話を伺いました。


松永 佳純さん

uto オーナー

Instagram:https://www.instagram.com/uto_flower/

よい時も、そうでない時も寄り添える花屋でありたい


− まず、花屋として心掛けていることやコンセプトをお聞かせください。

松永さん:「よい時も、そうでない時も寄り添える花屋でありたい」ということと、花が育つ背景や、ちょっと踏み込んだところも伝えられるような花屋でありたい。
この2つのことはずっと掲げています。



松永さん:花屋を使う時はお祝いや贈り物といった「良い場面」だけじゃないと思う。
「昨日、彼と喧嘩して……」とか落ち込んでいる時でも来てほしい。誕生日などお祝い事とかだけではなく、メンタルの支えになれたらなと。

そう思って、まずはお客さまの緊張をほぐすところから始めます。人によってどういうお花を求めているかって全然違うので、まずは話を聞くことを心がけています。


− 実際に辛くて落ち込んでいるお客さまが来た時はどんな花をおすすめしたりするんですか。

松永さん:気分が沈んでいる時って、ナチュラルな感じや落ち着いた感じの色合いを求める人もいれば、逆に自分に自信をつけたくて明るい色とか、少し華やかな花を欲しいという人もいれば、私におまかせしますという人もいます。
本当に様々です。

花屋と生産者。二拠点で得た気づきと想い


− 松永さんが花に興味をもち、花屋さんになるきっかけはどういったことですか。

松永さん:花は子どもの頃から好きでしたが、大人になってから興味を持った入口はドライフラワーです。
インテリアとして飾ったら素敵だなって。視点や入口はきっとみなさんと同じなんじゃないかなと思います。

そこから中目黒にある花屋、farver(ファーヴァー)に通うようになりました。師匠が作るものが好きで「ここで学ばせてもらいたい」その一心でした。


ご縁があって大学生4年になる前くらいからアルバイトとして働きはじめ、以降6年在籍し独立しました。尊敬できる師匠に出会えたことは、本当に良かったです。

− 店舗でスタッフをされていた6年間はとても学びが多い時間だったことがわかります。

独立をされる前に生産にも携わっていたと記事で拝見しました。どういった経緯や意図で生産に取り組むことになったのですか。



松永さん:ひとつの道具として花を使う人もいれば、生産者のことを考える人など、お店や人、それぞれにいろんな考え方があります。
師匠は生産者、農家のことまで大切にしたいという思いのある人で定期的に花の生産地を訪れていました。

当時はまだスパイラルブーケも組むことができないくらいだった私も一緒に連れて行ってもらい、そこから毎年農家さんのもとへに伺うようになりました。
のちに独立が現実的になってきたタイミングで、いろんな偶然とご縁が重なり、1ヶ月のうち3週間を長野で生産に携わり、1週間は東京に戻りfarverで仕事をする生活をしていました。


− 店頭で生花をアレンジしたり、接客したりすることとは別に花を「育てる」という生産のお仕事を経験してみてどうでしたか。


松永さん:毎年伺ってはいたので、どういう風に花が育てられているのかは知識としてはあっても、実際に自分自身が身体を動かして経験するとなると全然違いました。
8ヶ月生産に関っても全部をわかることはできないし、わかった気になってはいけないとも思っています。

花がどうやって育てられているのか、農家さんの想い、苦労していることなど生産の背景を知ることで、より深く花のことを考え、伝えられるようになりました。

今までにないようなスタイルの花屋ができるまで


松永さん:この花はどこでどうやって育てられているのか、花の魅力など、対面じゃないと伝えきれないと思い、そこで「店を持つしかないな」と。
店舗は絶対に作るという考えでした。


− この店内の内装に潔さを感じました。とても素敵な空間の店舗で、随所にこだわりを持って店づくりとをしたと思います。

お店選びから、内装などこだわったところなどはどういった点ですか。


松永さん:花屋をやるだけならば正直こんなに広くなくてもいいかもしれませんが、人と物、人と人、物と物がつながる場にしたくて。
そこからギャラリースペースを設けられるような物件を探しました。


松永さん:内装に関しては一番は花が主役であるべきだと思っています。最初の内見時、物件に足を踏み入れた時にどこかスッと澄み渡るような感じがして。

その時に「澄んだ空気の店にしたい」と思いました。色彩は花が担ってくれるので、余計なことはしない。
削ぎ落としていって今の感じになりました。


そこからこの展示台を作ることになりました。台の上に物を置けば下に反転し、何も置いていない時には花台の上の花たちが映り込むという。
すごくかっこいい展示台になりました。

おかげさまでお店のアイコン的な存在になったなと思います。
建築関係の方やインテリアが好きな方だけではなく、たまたま来店した方も皆さんに褒めていただけて、作って良かったです。

農家さんの想いと花の自然の姿を大切に


− ブーケや作品で作る時に松永さんが心がけていることはありますか。

松永さん:まず一貫して大切にしているのは、農家さんの想い。

もうひとつは、花の持つ美しさを生かすこと。生産に携わって圃場(畑)での花が一番美しいことを知りました。

ハウスの中、露地で日光を浴びながらキラキラと輝く姿は本当に美しいと思います。その花の美しさを殺さず、生かす、そしてより美しく束ねることを心掛けています。

− アンドプランツでは「花をより身近に」をテーマにしています。
まだ部屋に花を飾る習慣がない人から普段から花を飾っているけれど、より素敵な飾り方をしてみたい人など様々な人がいると思います。
もっと身近な存在にお花できること、日常に取り入れられアイデアやアドバイスはありませんか。

松永さん:一番は気負わないこと。花を飾ることは難しいとか、ハードルの高いものと考えずに、気軽に1輪から楽しんでもらいたいです。

もうひとつ、よく言われることで「萎れるのがちょっとかわいそう」と。その儚さも含めて愛でてほしいなって個人的には思いますね。

とはいえ、花を買うからには、長持ちするかどうかを気にする方も多くいます。長く楽しめるお花の提案もできますので気軽にご相談ください。


− 花を日常的に取り入れていて飾り慣れていたり、学んでいたりする経験者の方へのおすすめな楽しみ方や花の選び方も知りたいです。

松永さん:旬を楽しんでほしいです。
普段から旬を意識して仕入れをしています。花持ちばかりを気にしていても、つまらないですし、食と同じでやはり旬のものが一番生き生きとしています。

旬のお花はあっという間に出回りが終わってしまいます。楽しめる時に楽しむ。四季のある日本ならではの楽しみ方です。家の中で四季を感じられたらより暮らしが豊かになると思います。


− 松永さんご自身はご自宅ではどういう風に花や植物を楽しんでいますか。


松永さん:家にも必ず花があるようにしています。どさっと飾る時もあれば、数本で飾る時もあります。
シェルフの上やテーブルに飾っています。その時々によって使う花瓶も様々。

みなさんと変わらないと思います。今日はこれ飾りたいなとか、新しい花瓶を買った時は、その花瓶に飾りたいからこれにしようとか。


− 特別なことはなくて、その時々で楽しんでいる感じですね。

松永さん:そうですね。あと、花がどういった経過を辿るのかを見るためでもあります。
店舗と自宅では環境が違うので、自宅で花を飾ってみて経過や花持ちなどを見ています。

− 暮らしの中で花がどう変化するのか。その様子を辿っているようですね。
では、最後にこの先数年後、こうなっていたいなどをお聞かせください。

松永さん:お店のことは私の意思はもちろんですが、仕事に関わる人たち、お客さまが導いていってくれることでもあるので。基本のスタンスとしては花に関わることは何でもやるスタンスです。

それからやっぱり店という場所はすごく自分にとって大事なので、まずはお店を長く続けていきたいです。

−お店のことも、これからのことも大切な人達や場所と育まれていくように感じました。
これからの活動、楽しみにしています。ありがとうございました。


AFTER INTERVIEW編集後記
松永さんがこの場所に初めて踏み入れた時に感じた澄んだ空気感は、しっかりとここにはありました。「主役は私ではなく、花たち」 土作りから花を育てることは決して簡単ではないこと。自ら経験したからこそ伝えたい想いがある。花を育てる生産者さんと花たちへの敬意をもって向き合う姿勢もこの凛として澄んだ空気をつくる要素のひとつだと思いました。

店舗情報
uto(ウト)
東京都世田谷区経堂4-33-21 1F
tel:03-6413-7410
mail:info@uto-flower.com
営業時間:Instagramにて最新の投稿をご確認ください。

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