切り花はわたしたちの生活に彩りを添え、特別な日だけでなく日々の生活にも喜びを与えてくれます。
部屋の中に一輪の花があるだけで、心が和むのを実感できるのではないでしょうか。しかし、切り花を美しいまま長く楽しむためには、適切なケアが必要です。
花屋の店員として長年働いてきたわたしは、多くのお客様から「どうしたら花を綺麗に長持ちさせられるの?」という質問を受けてきました。
そこでこの記事では、わたしたちプロが日々行っている切り花を長持ちさせるための簡単なコツを、みなさんにもわかりやすく伝授したいと思います。ぜひこれから紹介する方法を試して、花の美しさを最大限に引き出してみてください。
切り花が早く枯れる原因
切り花がなぜ早く枯れてしまうのか、その主な原因を知ることは花を長持ちさせる第一歩です。
切り花が早く枯れる主な原因として次の3つが挙げられます。
- 水切れ
- 部屋の環境
- 栄養不足
これらを理解し、適切な対処法を実践することで花の鮮度を長く保てます。それぞれについて具体的な方法を解説します。
水切れ
花にとって水切れは最大の敵です。花瓶の水が少なすぎると、花は必要な水分を吸い上げられずしおれてきます。
特に暑い日や直射日光が当たる場所では、水の蒸発が早まるので注意が必要です。
しかし、花の種類によっては花瓶の水が少ない方が適しているものもあります。その花によってどれくらいの水の量が適量なのか知っておくことも大切です。
部屋の環境
切り花は高温の環境を嫌います。温度が高いと、水の蒸発が早くなり、花がストレスを受けやすくなるためです。
そして、直射日光やエアコンの風が直接当たる場所、乾燥しすぎている環境などでも長持ちしません。直射日光を避け、風通しの良い涼しい場所に置くのが最適です。
直射日光が当たる場所に置く際には、レースのカーテンで日光を遮断しておきましょう。
栄養不足
切り花として加工された花は、土から栄養を受けられなくなっている状態です。
意外と見落とされがちですが、切り花にも栄養が必要です。花瓶の水には市販の栄養剤を加え、花に栄養を与えましょう。
これらの少しのポイントを理解することで、花にとって適切なケアができ、切り花をより長く美しく保てます。
切り花への正しい水やりの方法
切り花への正しい水やり方法のポイントは以下です。
- 清潔な水をたっぷりと
- 水の交換は毎日
- 花瓶も洗う
水やりは花を美しく保つための基本中の基本です。
まず、花瓶には常に清潔な水をたっぷりと入れておきましょう。そして、水を毎日交換することはもちろん、花瓶も綺麗に洗わなくてはいけません。
水が汚れているとバクテリアが繁殖し、花が悪くなる原因となってしまいます。切り花を美しく長持ちさせるために、正しい水やりを覚えておくましょう。
切り花を長持ちさせる3つの方法
切り花を長持ちさせるための方法は、プロが当たり前にしている「特別だけど簡単なポイント」をおさえて実践することです。
次の3つのポイントを押さえることで、切り花の寿命を格段に伸ばせますよ。
- 水揚げを正しく行う
- 延命剤を活用する
- 毎日水換えする
以下で説明していきます。
水揚げを正しく行う
水揚げとは、花が綺麗に咲き続けるために水を吸い上げる力を引き出す手法です。植物は本来、根から水を吸い上げますが、切り花になっているため茎の切断面から吸い上げる必要があります。
店頭で売られている花は、市場からかえってきた花をしっかり水揚げした状態で並べられています。
水揚げの方法は複数あり、花屋ではその花種、状態に最適な水揚げの方法がとられています。ここでは、水揚げの方法を複数紹介しますが、まずは、どの方法でも水切りが適切にできればOKです。
水切り
一般的な水揚げ方法のため、ご存じの方も多いかもしれません。
深めのバケツに水を張り、水を張った中で、茎を斜めにカットする方法です。
ポイントは、できるだけバケツの深いところでカットすることと、切り口から2〜3センチのところをカットすることです。
水圧の効果で水をたっぷり吸ってくれるようになります。カットした花はすぐに花瓶に移すのではなく、そのまま1時間くらい浸けておきましょう。
湯揚げ
100℃くらいの熱湯を準備し、切り花の先端を1センチほどカットしたものを熱湯の中に30秒ほど浸け、その後水に浸ける方法です。
湯揚げをすることによって、茎の中に入っている空気が抜け、細菌も死滅する効果があることから、水切りでは水が上がりにくい花に向いています。
焼き揚げ
茎の先を焼く方法です。茎の先端の1センチほどのところをカットして、炭状になるまで焼きましょう。
その後、水につけて水がしっかり上がってきたら、黒くなってしまった部分を切り落とします。湯揚げ同様、切り口を熱で殺菌でき、空気も排出できます。
折る
ハサミやナイフは使わず、切り口から2〜3センチのところを手で折る方法です。
その場で折ってもいいですが、水切りと同じように深い水の中で折ると効果的といわれています。折ることによって、茎の断面がほぐれて水の吸水力が上がります。
割る、裂く
桜などの枝物の水切りに適した方法です。茎の切り口を3センチくらいまでハサミで十字に切り込みを入れます。茎を割ったり裂いたりすることによって、水を吸い上げる面積が広がります。
色々な水揚げ方法をご紹介しましたが、ご自宅で湯揚げや焼き揚げなどをしようとするとレベルが高いかと思います。
実際筆者自身は、仕事以外で水切り以外の水揚げの方法をしたことはありません。
まずは、水切りのポイントを正しく押さえて実践するところから始めてみましょう。
延命剤を活用する
市販されている切り花用の延命剤を使用することで、花を綺麗に長く保てます。
延命剤には、一般的にバクテリアの繁殖を抑える抗菌剤や、栄養成分が含まれているため、正しい量の延命剤を水に加えることによって、花を長く楽しめます。
しかし、使用する量が多すぎると逆効果になるため、希釈をしっかり守ることが大切です。
切り花を長持ちさせる方法として「漂白剤を入れる」「水の中に10円玉を入れる」「砂糖を入れる」などを耳にし、実際試している方もいらっしゃるかもしれません。
実際、漂白剤には殺菌作用があり、花瓶の中の雑菌が繁殖するのを遅らせる効果があります。ただし、漂白剤の量はほんの1滴でいいほど、ごく少量しか必要としません。入れすぎると花が枯れる原因になるので注意しましょう。
10円玉は銅イオンを発生するため、殺菌作用があり水が汚れにくくなるといわれています。しかし、ピカピカの銅を入れたとしても、数枚入れただけではあまり効果は感じられません。
また、花は糖をエネルギーとして成長するため、水の中に砂糖を入れると花を綺麗に咲かせてくれるといわれます。一方で、砂糖はバクテリアの栄養にもなってしまうことが難点です。水が汚れやすくなるため毎日の水換えしていても汚れやすくなってしまいます。
延命剤以外をおすすめしないというわけではありませんが、栄養も与えつつ、バクテリアの繁殖を抑えてくれる延命剤を活用することは、楽に花を長く楽しめる一つの方法です。
毎日水換えする
古い水にはバクテリアが繁殖しやすく、茎を詰まらせて水の吸収を妨げる原因となります
新鮮な水は花にとって不可欠であり、定期的な水の交換は、花が美しく長持ちする重要な鍵となります。
水が冷たすぎると植物が常温と水温の差でくたびれやすくなるため、常温に近い水を使うようにしてください。
あわせて、水換え時に茎の切り口を綺麗にすることで水の吸収もよくなります。花瓶は内側も洗い、バクテリアの繁殖を防ぎましょう。
切り花を新鮮に保つための日々のお手入れ方法
切り花を長持ちさせるには、なんといっても日々のお手入れが非常に重要です。毎日するお手入れはポイントを押さえてやると時間もかからず、どなたでも簡単に出来ることばかりです。
日々のお手入れの中で、花や葉のチェックは大切なポイントなので欠かさず行いましょう。
枯れた花びらや葉、水に浸かってしまう部分の葉は、早めに取り除くことが大切です。そのままにしておくと、バクテリアの感染源になる恐れがあります。
また、あまりにも小さな蕾は、咲くことはありません。あらかじめ摘んでおくことで他の花へしっかり水分が行き渡ります。
それぞれの花に適したお手入れポイント
切り花は、それぞれの花種に適したお手入れをすることで、より長い間楽しめるようになります。
次の花のお手入れのポイントについて具体的に紹介します
- バラ
- チューリップ
- ガーベラ
- ヒペリカム(枝もの)
バラ
バラの花を綺麗に保つためには、しっかり水を吸わせる必要があります。
いらない場所の葉はしっかりと取り除き、茎は斜めにカットし水を吸い上げる力をアップさせてあげましょう。
定期的にカットすることで、茎の先端を綺麗に保てます。延命剤を入れて、栄養を与えることも大切です。
バラの適温は15〜25℃といわれており、エアコンの風が直接当たると、バラが乾燥して水分がぬけてしまうため、できる限り涼しい場所で、エアコンの風が直接当たらないところに飾りましょう。
チューリップ
チューリップは切り花になっても成長し続ける特性があります。
花瓶に生ける際は、大きな葉はとって生けましょう。真っ直ぐ生けていても光に向かって茎が伸びていくため、生け方が難しく感じるかもしれませんが、飾った時とは違った顔を見せてくれる点もチューリップの楽しみ方です。
ガーベラ
ガーベラは水中に浸かっている茎の腐敗に注意しなくてはいけません。
そのため、ガーベラを生ける時には3センチほどの水の深さに生けるようにしましょう。茎の切り口を清潔に保つため切り戻しをすると長く楽しめます。
ガーベラは茎が柔らかく水が汚れてしまいやすい花なので、毎日の水換えを忘れないようにしましょう。
ヒペリカム(枝もの)
桜などの枝ものは、水揚げの際叩いたり裂いたりする方法で水揚げを行います。ヒペリカムもより長持ちさせるために、同じように十字に切り込みをいれ裂き、樹皮を削いで水揚げの効果を高めましょう。
生ける際には、茎についている葉が水に浸かった状態だと水が腐りやすくなります。水に浸かる部分の葉は取り除きましょう。
実が変色し黒くなってきたら早めにカットすることで、他の実や枝に栄養が行き渡りより長く楽しめます。
まとめ
切り花が早く枯れる原因ををはじめ、日々の水やりや専門的な技術、特定の花ごとのケアなど、切り花を少しでも長持ちさせるための簡単なポイントを紹介しました。
ポイントを押さえて花のケアをすることで、より一層花の魅力が引き立つでしょう。まずは、水を毎日取り替えることや水揚げを正しく行うなど、できることから取り入れてみてください。
ぜひこの記事を参考に、お気に入りのお花をより美しく、より長く楽しんでいただければ幸いです。