お花の仕入れや配達など、花屋にとって欠かせないのが車。しかし、いざ選ぶとなると見た目や性能、コストなど、いろいろ悩みますよね。
小さい車は小回りが利きコストも抑えられますが、仕入れるお花の量や運びたい商品の大きさによっては大型の車がないと不便です。
運搬できれば何でもいいのか、花屋の宣伝にも使いたいのかで、選ぶポイントも変わってくるでしょう。
また、車は購入時だけでなく維持にもお金がかかるため、毎年どれだけの費用が必要なのかも理解しておくことが必要です。
そこで今回は、長年に渡り花屋で働いていた筆者が、花屋で使う車について解説します。
花屋用の車を選ぶ時の注意点や、おすすめの車のタイプも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
花屋で車が必要なシーン
花屋で車が必要なシーンは、主に次の3つです。
- 花や資材の仕入れ
- 商品の配達
- 移動販売
花や資材の仕入れ
花屋でもっとも車が必要なシーンは、花材や資材の仕入れのときです。生花市場で購入した花材をお店に持ち帰るためには、車が欠かせません。
花材や資材はかさばるので、荷室が広いタイプや高さのある車が便利です。
花屋の規模や仕入れの量によって、専用の車を使っている花屋もあれば、日常使いの車を仕事にも使っている方もいます。
商品の配達
花束やアレンジメント、フラワースタンドなど、商品の配達にも車を使用します。スタンド台など高さがあるものを運ぶには、荷台の広さや高さ、奥行きも必要です。
また、ブライダルや葬儀の装花の搬入には、大きさの異なるいくつもの装花を積めるような工夫もいるでしょう。
配達に使う場合は、商品が運搬時にズレたり倒れたりしないよう、フラットで安定感のある荷室がある車がベストです。
移動販売
移動販売は車自体が店舗になっていて、住宅街やオフィス街、駅前やイベントスペースなどで販売する形態です。
常設店舗を持たずに、車での移動販売のみで営業する花屋もあります。仕入れから配達、販売まで、すべて車一台で行うことも可能です。
移動販売用に車をカスタマイズする方法もありますが、購入した車をそのまま使う場合は、ワンボックスでスライドドアのあるタイプが使いやすいでしょう。
花屋の仕事で使う車を選ぶポイント
次に、花屋の仕事で使う車を選ぶポイントを解説します。ポイントは次の6つです。
- 積載量
- 荷物の載せやすさ
- 車の大きさ
- 使い勝手の良さ
- コスト
- デザイン
積載量
花屋が車を選ぶときに一番重要なのが、積載量です。積載量とは、車に載せることができる荷物の重量のことを言います。
車の外形が大きくても積載量が小さいと、見た目ほど荷物が載せられません。積載量が大きければ荷物を載せるスペースが広くなるので、かさばりやすい花材や商品を運ぶのに便利です。
車を探すときは、カタログの最大積載量や実際の荷室の広さをチェックしましょう。
荷物の出し入れや載せやすさ
お花は繊細なので、荷室への出し入れや載せやすさも大切です。
花材は箱入りもあれば、ELFバケットのまま運ぶ場合もあります。また、アレンジメントなどの商品が運搬中に破損しないよう、注意を払うことも必要です。
狭いスペースでは、サイドドアやバックドアを十分に開けられないこともあります。
花材や商品をスムーズに出し入れするためには、スライドドアで開口部を広く開けられる車が便利です。
車の大きさ
車の必要な大きさは、花屋の規模やどのくらいのボリュームの荷物を運搬する必要があるかによります。
大きい車であれば、荷物が多くても少なくても対応が可能です。しかし、コストがかかったり駐車スペースに困ったりと、デメリットもあります。
どのくらいの大きさがあれば十分なのか、維持管理の面も含めて考えましょう。
使い勝手の良さ
仕入れや配達などで頻繁に車を使うのであれば、使い勝手の良さも大切です。
車を選ぶときは、運転者が扱いやすいかどうかもチェックしましょう。
例えば、シートの座りやすさ、ハンドルの取り回しのしやすさ、計器類の操作のしやすさなどは、運転時のストレスに影響します。
いろいろなところに配達に行くならナビが、生花市場が遠くて高速道路を利用するならETCがないと不便です。
コスト
車は買うときだけでなく、維持にも費用がかかります。ローンで購入する場合は、月々の支払いも必要です。
花屋の専用車なら全額を、日常的にも使うなら一部を経費で落とすことができます。しかし、購入に資金が必要なことには変わりません。
花屋の運営資金の中でいくらまでなら車の購入費に充てられるかもしっかり検討しましょう。
デザインや色
車を店頭に置いてディスプレイにも使ったり、移動販売で使ったりする場合は、見た目も気になりますよね。
会社や店名の入った車やラッピングカーをよく見るように、車は仕入れや配達で走っているときも広告塔の役割をしてくれます。
必ずしもこだわる必要はありませんが、簡単に買い替えられるものではないので、デザインや色にも気を配りましょう。
花屋が使う車を購入するときの注意点
花屋用の車を選ぶポイントを解説してきましたが、ほかにも車を所有することで生じる注意点があります。注意点は、主に次の2つです。
- 駐車スペースは十分か
- 維持やメンテナンスはしやすいか
駐車スペースは十分か
車を購入するときは保管場所を届け出る必要があるので、駐車スペースがあることが前提になります。そのうえで、荷物の出し入れのしやすさなどを考慮した駐車スペースがあることが理想です。
お店の裏口すぐに駐車スペースがあると便利ですが、駐車場が離れた場所にしか用意できないケースもあるでしょう。その場合、お店の出入り口付近に一時的に停車しても差し支えないか、道路状況や近隣への配慮も必要です。
維持やメンテナンスはしやすいか
車を維持するには、定期点検や部品交換が欠かせません。点検費やメンテナンス代は、メーカーや車種によって異なります。
また、購入したディーラーでのメンテナンスは安心感がありますが、民間の整備工場と比較すると高くなりがちです。
比較検討した車の購入資金にそれほど差がなくても、後々の維持管理費で大きく差がつくこともあります。
国産車と輸入車の違い
輸入車は、デザインやカラーがおしゃれな車も多いですよね。しかし、国産車と輸入車では、メンテナンス費用に大きく差がでます。
国産車はディーラーだけでなく、個人の整備工場やチェーン店など、たいていどこでも点検やメンテナンスが可能です。一方で、輸入車はNGのところもあるため、お願いできるところが限られます。
交換部品も高額で、在庫がない場合は待たされる期間も長いです。走行に支障がでる部品の場合、1ヶ月以上預けっぱなしということもありえます。
車を選ぶ基準はそれぞれですが、選ぶ車によって違いが出ることも理解しておきましょう。
花屋におすすめの車のタイプ
ここでは、花屋におすすめの車のタイプを4つ紹介します。
- ワンボックスカー
- ミニバン
- 軽バン・軽ワゴン
- 軽トラック
ワンボックスカー
ワンボックスカーは、普通車の中で一番大きく車内も広いことが特徴です。トヨタの「ハイエース」、日産の「キャラバン」などがあります。
特に、荷物を運ぶことに特化しているバンタイプは、荷室が広く積載量が大きいので、たくさんの花材や大きな商品を運びたい花屋におすすめです。
開口部が広いバックドアやスライドドアは、荷物の出し入れもスムーズです。使用している花屋も多く、生花市場でもたくさんのワンボックスカーを見かけます。
ガソリン車とディーゼル車がありますが、燃費が気になる方はディーゼル車を選んでもいいでしょう。
ミニバン
出典元:ルノーWEBサイト「カングー」
ミニバンは、一般的にはワゴンタイプで3列シートのある車のことです。ワンボックスカーとは、エンジンの位置等で区別されています。
ミニバンはメーカーや車種によって特徴があるため、積載量だけでなくデザインも重視したい方におすすめです。
ミニバンで探すときは、後部のシートをフルフラットにできるタイプや、サイドドアがスライドドアのものが使いやすいでしょう。
ルノーのカングーは、本国のフランスでは商用車としても使われているため、見た目のデザインだけでなく荷室の使いやすさでも人気があります。
軽バン・軽ワゴン
軽自動車は、普通車と比べて購入費や維持費が抑えられることがポイントです。商用の軽バンや軽ワゴンは、荷室の広さや高さもしっかりあります。
個人経営で、それほど多くの荷物を運ぶわけではないのであれば、軽自動車を選択肢に入れるのもいいでしょう。
ダイハツのハイゼットカーゴは、広い荷室だけでなく、豊富なカラーバリエーションも魅力です。花屋のイメージにあわせて、ボディカラーを選べます。
軽トラック
出典元:スズキWEBサイト「キャリィ」
移動販売用にカスタマイズしたいという方には、軽トラックもありです。
荷台にフレームを取り付け、テントを張るだけでも使えます。オリジナルのデザインで、本格的にカスタムするのもいいでしょう。
あまりコストをかけたくないという方は、DIYでもカスタムできます。
スズキのキャリィは、グレードやカラーバリエーションが豊富です。グレーやカーキなどの色もあるので、簡単なDIYでもおしゃれに見せることができるでしょう。
車の保有にかかる費用
車の保有には、さまざまな費用がかかります。必要な費用は、大きく分けて次の3つです。
- 購入費
- 維持費
- カスタマイズ
ここでは、それぞれの費用について具体的に解説します。
購入費
購入費の内訳は、次の3つに分けられます。
- 車両代金
- 法定費用
- 諸経費
車両代金
車両代金は、車本体の金額です。購入時にオプションでETCやドライブレコーダーなどを追加する場合は、車両代金に加算されます。
法定費用
法定費用は、車に関する税金(自動車税、自動車重量税)や自賠責保険、リサイクル料金のことです。これらは、法律により納付や加入が義務付けられています。
ただし、中古車の場合、購入するタイミングによっては、自動車税や自動車重量税が必要ないこともあります。
諸経費
諸経費は、車の購入費から車両代金と法定費用を除いたものです。車庫証明や検査登録、希望ナンバー申請の手続き代行費用や、納車費用などが含まれます。
維持費
車は維持にも費用がかかります。主に次の4つが必要な維持費です。
- ガソリン代
- 任意保険
- 自動車税
- 車検代・メンテナンス費用
ガソリン代
月々のガソリン代は、走行距離や車種によって異なります。
一般的な国産車はレギュラーガソリン、ディーゼル車なら軽油ですが、輸入車はほとんどがハイオクです。
選ぶ車や使用頻度によって、ガソリン代に差が出ます。なるべく費用を抑えたいなら、購入時に燃料の種類や燃費もチェックしましょう。
任意保険
任意保険は、自賠責保険ではカバーできない範囲を補うために入るものです。事故時の自分のケガや、車の修理費などの補償が受けられます。
何かあった場合、仕事に支障をきたしかねないので、入っておくのが安心です。
自動車税
自動車税は、毎年1回、5月末に車の所有に対して支払う税金です。普通車は排気量に応じて、軽自動車は一律で金額が決まっています。
車検代・メンテナンス費用
車を安全に乗るためには、定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスには、点検費や交換する部品やオイル代、作業費がかかります。
また、車検は新車登録から3年目、以降は2年おきに必ず受けなければなりません。その際には、法定費用(自動車重量税、自賠責保険料、印紙代)と、検査費用、整備費用などが必要です。
花屋仕様にカスタマイズする場合
車を購入したときのまま乗っていても差し支えありませんが、せっかくなら宣伝も込みで花屋仕様にカスタマイズしたいですよね。
カスタマイズには、ボディにロゴやデザインを施す方法や、車自体を改造する方法があります。
ロゴステッカーやカーラッピング
カスタマイズで一番簡単なのは、花屋のロゴのステッカーを作り、車に貼り付ける方法です。車に花屋の名前をつけて走ることで宣伝になります。
カーラッピングは、車の一部や全体に専用のフィルムを貼ってデコレートするものです。車全体の色を変えたり、ボディ全体にロゴやイラストなどのデザインを施したりするのに向いています。
移動販売用に改造
移動販売用への改造は、業者に依頼する方法と自分でDIYする方法とがあります。
キッチンカーだと厨房設備を設置する必要がありますが、花屋の移動販売車はそういった設備が必要ありません。
車のタイプによっては特に改造をすることなく、ディスプレイだけでも十分おしゃれに見せることが可能です。
花屋の車についてのよくある質問
最後に、花屋の車についてのよくある質問を3つ紹介します。
- 花屋の車はおしゃれなほうがいい?
- 花屋の車は中古でも大丈夫?
- 花屋の移動販売は許可が必要?
花屋の車はおしゃれなほうがいい?
花屋の車がおしゃれなほうがいいかどうかは、どういった用途で使うのか、車に何を求めるのかによるでしょう。
車を使った移動販売なら、おしゃれな車のほうが人目を惹きますし、センス良く見せることができます。しかし、仕入れや配達などの運搬に使うだけなら、車の見た目に気を使う必要はありません。
おしゃれな車や見栄えのいい車は、その分コストもかかります。見た目なのか費用なのか、選ぶときにどちらを優先するのか考えて決めましょう。
花屋の車は中古でも大丈夫?
花屋の車は、中古でも問題ありません。
ただし、中古車の場合は、花屋の車を選ぶときのポイントに加えて、修復歴がないか、しっかりメンテナンスされているか、初年度登録から何年経っているかをチェックしましょう。
修復歴とは、車の骨格部分を事故等で修理したときにつく修理の履歴です。修復歴があると車が歪みやすいため、頻繁に使う花屋の車にはおすすめしません。
また、メンテナンスが疎かだと、購入してすぐに故障したり、高額な修理費用を取られたりしてしまいます。初年度登録のチェックをするのは、古ければ古いほど故障や部品交換の確率が上がるためです。
実際に、中古で車を買ってすぐに故障し、修理費に50万円かかった花屋のオーナーを知っています。
中古車を選ぶときは、新車とは違う目線でのチェックが重要です。
花屋の移動販売は許可が必要?
移動販売で花屋をやること自体は、特に許可を必要としません。花屋を開業するのに、資格や免許は必要ないからです。
ただし、移動販売車を停めて営業するには、その場所の管理者の許可が必要になります。また、道路に駐車しての販売は、道路交通法の違反になるのでNGです。
一般的に、移動販売は広い駐車場や空きスペースなどで行います。独自に交渉して場所を確保したり、移動販売車が集まるイベントに参加したり、やり方はさまざまです。
まとめ
花屋では、花材の仕入れや商品の配達で車が欠かせません。店舗を持たずに、車での移動販売のみを行う花屋もあります。
車は購入時のコストだけでなく、維持管理にも費用がかかります。そのため、先々に必要な費用のことも考えて選ぶことが大切です。
また、大きい商品やかさばる物を載せることも多いため、荷室の広さや出し入れのしやすさなども考慮する必要があります。
どのようなタイプの車が使いやすいかは、花屋の規模や目的、使い方によって異なります。
この記事で解説した選び方のポイントや注意点を参考に、使い勝手がよく維持しやすい車を選びましょう。
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