平和の象徴であるオリーブの木。屋外でのシンボルツリーとして人気があり、鉢植えや地植えでも楽しめます。
オリーブの木の楽しみ方は育てるだけではありません。「挿し木」と呼ばれる方法で、増やす楽しみもあります。
今回は、オリーブの挿し木について解説します。時期や方法を詳しく知ると、挿し木の成功率が上がるため、挿し木をより楽しめるでしょう。
さらに、オリーブの木が大きくなりすぎたり弱ったりしたときに、小さな姿から再スタートさせることができます。オリーブの挿し木にはコツがあるので、ぜひ参考にしてみてください。
オリーブの木の挿し木時期は2回ある
オリーブの木の挿し木時期は、大きく分けて「6~7月」「2~3月」の2回あります。初夏と冬の期間なので、枝に違いがある点が特徴です。
- 6~7月|緑枝挿し
- 2~3月|休眠枝挿し
それぞれ詳しく見ていきましょう。
6~7月|緑枝挿し
6~7月に行う挿し木を、「緑枝挿し(りょくしさし)」と呼びます。緑枝挿しは、成長中のオリーブの木から枝を剪定して挿し木する方法です。
新芽が出ている枝先を使用して、挿し木を行うため、1~2か月程度で発根する特徴があります。ただし、初夏の季節は気温が高いため、水切れしやすいです。
挿し木した状態で水切れすると、発根しません。さらに、水やりタイミングによっては、水が暖められて挿し木苗を傷めてしまう危険があります。
2~3月|休眠枝挿し
2~3月に行う挿し木を、「休眠枝挿し(きゅうみんしさし)」と呼びます。休眠枝挿しは、オリーブの木を強剪定で切り落とした際の、直径5㎝以上の太い枝で行う挿し木方法です。
休眠枝挿しに使う太い枝は、なるべく若い枝を使用するのがポイント。気温が低いため、発根に時間が掛かりますが、土が乾きにくいので初心者でも挿し木の管理が簡単です。
休眠枝挿しは、強剪定で切り落とした枝を使うと便利ですが、寒冷地であれば4~5月の寒さが和らぐタイミングで行った方が発根率が高くなります。
オリーブの木の挿し木に必要な道具
ここでは、挿し木に必要な道具を紹介します。
枝葉を切る剪定ハサミは清潔で切れ味のよいものを準備しましょう。不清潔で切れ味の悪い剪定ハサミを使うと病原菌が入ったり、切り口の組織が潰れたりして発根が阻害される可能性があります。
挿し木する土は、「INLIING 観葉植物の土」がおすすめです。国内産の土を熱処理で硬質化しており、水はけ・通気性がよく、雑菌の繁殖を抑える水質浄化効果を強化しています。
有機物無配合なので、肥料分による発根阻害の影響もありません。通常の観葉植物の土としても利用できるので、発根後は肥料を与えながらそのまま育てることができます。
挿し木時には床が汚れないように、園芸用シートがあると作業がしやすいです。園芸用シートの代わりに新聞紙やビニールシートでも代用できます。
オリーブの木の挿し木方法
オリーブの木の挿し木に必要なものを準備したら、実際に挿し木に挑戦してみましょう。挿し木方法は以下の5つの手順で行います。
- 挿し穂を作る
- 挿し穂の葉を2~3枚にする
- 1時間ほど切り口を水に浸ける
- 挿し木用の土に植える
- 明るい日陰で管理する
それぞれの手順を解説します。
①挿し穂を作る
オリーブの木の緑枝挿しの場合は、枝先から10~15㎝の長さで剪定した枝を挿し穂とします。休眠枝挿しの場合は、直径5㎝以上の枝を10~15㎝の長さで切ってください。
挿し穂は若い枝ほど、発根がしやすいです。そのため、根元に近い幹や年数の経った枝ほど挿し木の成功率が下がるので注意しましょう。
緑枝挿しの場合は、オリーブの開花と重なるかもしれません。花が咲いていない枝先を選んで、剪定して挿し穂を作ってください。
休眠枝挿しの場合は、強剪定した枝を利用すると手間が少なくて済みます。
オリーブの木は難発根性樹種であるため、他の観葉植物に比べ、挿し木が成功しにくい植物です。そのため、挿し木をする際には、あらかじめ多くの挿し穂を準備してください。
②挿し穂の葉を2~3枚にする
オリーブの木の枝を切ったら、枝についている葉を2~3枚だけにしましょう。葉を減らすことで、葉から水分を放出する蒸散をコントロールして、乾燥による枯れを防げます。
葉を半分に剪定して蒸散量を減らすと、さらに効果的です。挿し穂には元気の良いしっかりした葉を残します。
ただし、切り口に近い葉は土に挿し込むときに埋まってしまうので、剪定しておいてください。
③1時間ほど切り口に水を浸ける
挿し穂の葉を整理したら、水を溜めた容器に挿し穂の切り口を1時間ほど浸けて吸水させます。しっかりと水分を吸収させることで、挿し木後に枯れにくい挿し穂になるためです。
また、植えるまでに切り口の乾燥を防ぐこともできるので、結果的に発根しやすくなります。さらに、吸水させる水に発根剤を薄めておくと、挿し木後の発芽率がより上がるでしょう。
吸水させる前に、挿し穂の切り口部分をV字に切って吸水面積を広くしておくと、より効率的に吸水できます。
④挿し木用の土に植える
挿し木を挿す鉢に、植え替えと同様に鉢底網を敷いて鉢底石を入れます。その上から「INLIING 観葉植物の土」を入れてください。
または、挿し木挿し芽用の土や小粒の赤玉土でも問題ありません。
挿し木用の土に細い棒で深さ5㎝~10㎝程の穴を複数あけて、それらの穴に挿し穂をそれぞれ入れて優しく植えます。
鉢に土を入れる際に、鉢の上ぎりぎりまで土を入れると、水やりの時に土が溢れてこぼれてしまいます。鉢の縁から2~3㎝ほどウォータースペースを取っておくことで、水やりした時に土が溢れにくいです。
⑤明るい日陰で管理する
挿し穂を土に植え付けたら、鉢底から水が流れるくらい水やりして、明るい日陰で管理してください。挿し木したばかりのオリーブの木は発根していないので、直射日光に当てると枯れる可能性が高いためです。
明るい日陰で、水切れしないように1~3か月ほど管理すると発根して、新芽が出てくるでしょう。休眠枝挿しの場合は、3か月以上かかる可能性もあります。
新芽が5枚以上になったら、優しく鉢から取り出して一鉢ずつ植え替えて育ててください。新芽が1~2枚出てきても十分に発根していない場合があるので、すぐに掘り上げないのがポイントです。
また、挿し木を始めたら、挿し穂を抜き差ししないようにします。途中で土から引き抜くと、伸び始めた細根を切ってしまう恐れがあるため注意してください。
オリーブの木の育て方|挿し木成功後
オリーブの木の挿し木成功後は、新芽や根が出始めたばかりです。そのため、慎重な育て方をしてください。
挿し木が成功しても、その後の育て方が悪いと枯れる恐れがあるためです。以下の4つのポイントに絞って解説します。
- 植え替え
- 置き場所と日当たり
- 水やりの頻度
- 肥料
関連記事:オリーブの木の育て方
①植え替え|小さめの鉢に植える
オリーブの木の挿し木成功後は、それぞれ一鉢ずつ小さめの鉢に植え替えます。まずは、3号(直径9㎝)ほどの大きさの鉢に植え替えるとよいでしょう。
このときに鉢が大きすぎると、水やり後に土が乾燥せず根腐れする可能性があるので気を付けてください。鉢には鉢底網を敷き、その上に鉢底石を入れて観葉植物の土と一緒に植え替えます。
「INLIING 観葉植物の土」の土で挿し木をしている場合は、そのまま育てるための土としても利用可能です。
発根して時間が経っていないオリーブの木の挿し木苗は、根が繊細なので植え替える際に切れたり折れたりしないように気を付けてください。
②置き場所と日当たり|柔らかい光に当てる
オリーブの木の挿し木苗を植え替えた後は、直射日光の当たらない明るい日陰で管理してください。植え替え直後に、直射日光に当てると葉焼けする恐れがあるため注意が必要です。
オリーブの木は、基本的に屋外で育てる植物なので、室内には置きません。室内で挿し木苗を育てると、徒長したり株が弱ったりするため注意してください。
新芽がどんどん出てくると、土の中で新しい根が順調に伸びてきている証拠です。そのまま、元気なオリーブの木を育てましょう。
③水やりの頻度|水切れに注意する
植え替え後のオリーブの木には、土の表面が乾燥したらたっぷり水やりしてください。この時に、発根剤を水に薄めて水やりすると、発根が促進されて生育がよくなります。
ただし、受け皿に水を溜めたり、土が湿っている状態で水やりしたりしないでください。土が常に湿ってしまい、発根したばかりの根が腐ってしまうかもしれません。
しかし、発根したばかりの根は乾燥に弱いので、水切れの状態が長く続かないようにも注意しましょう。植え替え後は、長期的な土の乾燥に気を付けつつ、適切に水やりすることが重要です。
もし土の乾燥具合がわからない場合は、水やりチェッカーを使用すると、一目で土の乾燥具合がわかります。水やりタイミングに悩んでいる方は、ぜひ使ってみてください。
④肥料|成長に合わせて与える
植え替え後のオリーブの木には、成長に合わせて肥料を与えてください。ただし、発根したばかりの挿し穂に肥料を与えすぎると、根傷みをする可能性があります。
3号ほどの鉢であれば、2か月に1回置き肥を一つ与えるくらいで問題ありません。液肥であれば、規定よりも薄く作って週に1回水やり代わりに与えましょう。
その後、徐々に大きくなって4~5号(直径12~15㎝)に植え替えた際には、置き肥を増やしたり、規定通りの薄め方で液肥を与えたりしてください。
関連記事:オリーブの木の肥料|時期と与え方について
オリーブの木の増やし方|挿し木以外
ここでは、オリーブの木の挿し木以外の増やし方について解説します。挿し木以外の増やし方は以下の2つです。
- 水挿し
- 取り木
それぞれの手順を解説します。
①水挿し
水挿しとは、挿し木同様に準備した挿し穂を水に浸けて発根させる方法です。水を溜めた容器に、挿し穂の切り口が浸るように入れて、直射日光に当たらない明るい場所に置きます。
生育期の5月~7月であれば、1ヶ月~3か月で発根するでしょう。水は土と違い、腐敗物を分解する微生物がいません。
そのため、容器の水は少なくとも2~3日おきに交換してください。水を交換せずにそのままにしておくと、水が濁ったり腐ったりすることもあるので注意します。
オリーブの木の場合は、水挿しで発根しても水栽培で育てることは難しいです。発根を確認できたら、土に植え替えてください。
②取り木
取り木とは、樹皮を剥がした幹や枝に水苔を巻いて発根させたのち、切り取って増やす方法です。オリーブの木の枝節のすぐ下を環状にカッターで切り込みを入れて、皮を1周するように剥ぎ、その部分に湿らせた水苔を巻きます。
湿らせた水苔が乾燥しないように、上からビニールなどで包んでおくと管理が簡単です。その後1か月ほどすると、枝節の部分から根が出てきます。根を切らないように枝や幹を切り取り、そのまま新しく植えてください。
取り木は、大きくなりすぎたオリーブの木を見栄えのする大きさで再スタートさせるのに、向いている増やし方です。
小さな挿し木苗から大きくするのでなく、あらかじめ大きな状態で増やしたい場合に挑戦してみてください。
オリーブの木の挿し木によくある質問
最後にオリーブの木の挿し木によくある質問とその答えを以下にまとめました。
- オリーブの木は10月に挿し木できる?
- オリーブの木の挿し木成功率は高い?
- オリーブの木の挿し木が発根しない原因は?
- オリーブの木を挿し木した後に葉が落ちるのは大丈夫?
- オリーブの木の挿し木に失敗する原因は?
それでは具体的に見ていきましょう。
オリーブの木は10月に挿し木できる?
10月の挿し木は発根率が低く失敗する可能性が高いため、おすすめできません。オリーブの木の挿し木時期は「5~7月」「2~3月」であるためです。
10月はオリーブの木の長く伸びた枝を切る最後の剪定タイミングですが、この時期の枝先は挿し木には向いていません。気温も下がり続けるので、挿し木苗が枯れやすいです。
剪定で出た枝を使って挿し木するのであれば、数か月待って2~3月の強剪定時期の枝を使うとよいでしょう。
オリーブの木の挿し木成功率は高い?
オリーブの木の挿し木成功率は高くありません。そもそもオリーブの木は難発根性樹種であるため、他の観葉植物に比べ、挿し木が成功しにくい植物です。
そのため、挿し木をする際には、あらかじめ多くの挿し穂を準備してください。緑枝挿しは発根しやすいですが、管理が難しいため初心者には不向きです。
休眠枝挿しは管理が簡単ですが、発根に非常に時間が掛かります。どちらの方法にもメリットデメリットはありますが、挿し木を成功させるためにはより多くの挿し穂を準備して、挿し木しておくことが重要です。
オリーブの木の挿し木が発根しない原因は?
オリーブの木の挿し木が発根しない原因は、「気温」「水やり」「日当たり」が考えられます。挿し木の適期は「5~7月」と「2~3月」です。
5~7月の緑枝挿しは、気温がしっかり上がったタイミングで行い、2~3月の休眠枝挿しは寒さが和らぎ始めるタイミングで行うのがポイント。特に、休眠枝挿しは1月の真冬に行わないようにしてください。
また、挿し木をしている間は、土の乾燥と直射日光に気を付けましょう。挿し木後に土が乾燥したり直射日光に当たったりすると、挿し木が傷んで発根しにくいためです。
挿し木を成功させるためにも、気温や水やり、日当たりに気を付けて管理してください。
オリーブの木を挿し木した後に葉が落ちるのは大丈夫?
オリーブの木を挿し木した後に葉が落ちるのは、良い状態ではありません。直射日光や乾燥によって、オリーブの木の挿し穂が弱っている可能性が高いためです。
挿し木を適切な時期に行っているのであれば、温度による影響は少ないと考えられます。挿し穂の吸水が不十分、または置き場所や水やりが悪いのかもしれません。
空気が乾燥するようでしたら、こまめに霧吹きで葉水を与えるとよいでしょう。葉が落ちても挿し穂がしっかりしていれば、復活する可能性は高いため、注意して育ててください。
オリーブの木の挿し木に失敗する原因は?
オリーブの木の挿し木に失敗する原因は、「挿し木時期」「乾燥」「直射日光」が考えられます。
挿し木は、適切な時期に行うことがポイントです。緑枝挿しなら5~7月に、休眠枝挿しなら2~3月に行いましょう。
挿し木したばかりのオリーブの木には根がありません。土や空気が乾燥していると、体内の水分を維持することができずに、枯れてしまいます。
新芽が出てくるまで、土が乾燥しないように管理してください。直射日光に当たることも乾燥につながります。
葉焼けすると、根のない挿し穂はそのまま枯れるため、明るい日陰での管理は挿し木を成功させる重要なポイントの一つです。
まとめ
オリーブの木は、葉だけでなく、花や実も楽しめる人気の観葉植物です。シンボルツリーとして鉢植えや地植えで育てている方は、「剪定した枝を使って増やしてみたい」と思うことも多いでしょう。
オリーブの木は挿し木の成功率は低いですが、コツを掴めば初心者でも挿し木で増やすことはできます。挿し木が上手くできずに悩んでいる場合は、今回ご紹介した挿し木方法をぜひ試してみてください。
挿し木苗を増やすことができれば、ベランダで楽しめる小さな植木として楽しめますし、元の株が枯れたときも安心です。いつもお世話になっている方へプレゼントすることもできます。
ぜひ、オリーブの木の挿し木にチャレンジしてみませんか。