病院やクリニックを開業する、またはリニューアルや雰囲気のチェンジをするにあたって装飾してみたい観葉植物。数鉢置いてあるだけで院内は明るく見え、清潔感のある空間を演出します。
しかし、患者さんと接する病院やクリニックには「観葉植物は危険なのではないのか」「そもそも置いても大丈夫なのか」と疑問や不安が浮かぶこともあると思います。
病院やクリニックでは院内の見栄えや雰囲気を考慮しつつ、患者さんにとって良い空間で機能面にもフォーカスした観葉植物選びが大切です。
今回は病院に置くおすすめの観葉植物の種類を詳しく紹介します。
もし、どんな観葉植物が病院に良いか迷ってしまったときは、筆者個人的にはサンスベリア・ゼラニカがおすすめです。高い空気清浄効果があるといわれ、院内でも役立つ観葉植物です。
病院に置く観葉植物の選び方
患者さんが来る病院やクリニックでは、観葉植物選びが大切です。植物の種類によって特性や性質が違い、育てられる場所が限られる・育て方が難しい・ゴミが出やすいなどの違いがあります。
ここでは、病院に置く観葉植物の選び方について詳しく解説します。
- 虫が寄り付きにくいもの
- 葉が落ちにくいもの
- スペースを広く取らないもの
また葉や花の香りが強いものなどは、患者さんの気分を害してしまう場合もあるので、できるだけ避けるといいです。
虫が寄り付きにくいもの
観葉植物には害虫が付くこともあります。どんなに管理に気を付けていても、多くの患者さんが来れば、葉や幹などに付いて繁殖してしまうことも。できるだけ害虫が寄り付きにくい観葉植物を選んで、清潔感のある院内をつくりましょう。
薄い葉を出す植物よりも、比較的厚みのある植物や多肉植物の方が虫が付きにくく、病院の観葉植物におすすめです。
ただし、コバエは土の匂いで寄り付きやすく、土の中に卵を産みつけて繁殖することもあります。植物の種類とはあまり関係がないので、鉢の表面にココナッツファイバーやウッドチップを被せたり、赤玉土などの無機質な土を敷き詰めたりして、土の匂いをカバーしましょう。
葉が落ちにくいもの
清潔感のある病院を演出するなら、葉が落ちにくい観葉植物を選びます。観葉植物の枯れた葉がたくさん落ちてしまうと、ゴミが散らかりやすく、不衛生に見えることもあります。
基本的に観葉植物は、冬に葉を一斉に落とさない常緑性の多年草や樹木です。生理現象や生長の流れによって春から夏頃にかけて葉が入れ替わる特徴があり、植物によって葉が入れ替わる量が違います。
大きい葉が出る植物と比べると、小さな葉がたくさん出るものは落葉しやすく、ゴミがたくさん出やすいです。
全ての植物が該当するわけではありませんが、大きな葉・長細い葉・硬い葉を出す植物は、落葉しにくいのでおすすめです。
スペースを広く取らないもの
患者さんや看護師など、多くの人が行き交う病院やクリニックでは、スペースをあまり取らない観葉植物を選びましょう。
枝葉や幹が横に広がりやすい観葉植物は、鉢の大きさよりも株が数倍大きくなり、空間を物理的に狭くしてしまうこともあります。人の肩や腰に当たって転倒させてしまう場合もあるので、スペースにあわせた植物選びが大事です。
病院におすすめの観葉植物
ここでは、病院におすすめの観葉植物を5つ紹介します。
- ドラセナ・ソングオブインディア
- カラテア・マコヤナ
- サンスベリア・ゼラニカ
- アンスリウム
- トックリラン
①ドラセナ・ソングオブインディア|小スペースでも置ける

日当たり | 日当たりのよい置き場所(直射日光は避ける) |
温度 | 最低10℃以上をキープする |
耐寒性 | やや弱い |
耐暑性 | 強い |
水やり | 春夏:土の表面が乾いてから 秋冬:土の表面が乾いてから2〜3日後 |
黄味がかった白い幹が、地面から軽やかな曲線を描くように伸びるドラセナ・ソングオブインディア。幹の先端からは、縁(ふち)に黄色い斑が入る緑の葉を花が咲くように展開します。細身のスタイルなので小スペースでも置けて、空間が狭くなることもあまりありません。
マダガスカルやインドを中心に自生しているドラセナ・ソングオブインディアは、20℃以上の場所で元気よく育つ観葉植物です。気温が10℃を下回ってしまうと、寒さで生長が緩やかになり水やりの頻度が減ります。
水を与えるタイミングがわかりにくくなり、管理が難しくなってしまうので、できるだけ冬は日当たりの良い暖かい場所で管理してください。
[https://andplants.jp/collections/songofindia]
②カラテア・マコヤナ|日陰になりがちな場所に置ける

日当たり | 日当たりのよい置き場所(直射日光は避ける) |
温度 | 最低10℃以上をキープする |
耐寒性 | やや弱い |
耐暑性 | 強い |
水やり | 春夏:土の表面が乾いたら 秋冬:土の表面が乾いてから2〜3日後 |
ラテアートのようなかわいい模様が葉に入るカラテア・マコヤナは、個性的でインテリア性が高く、印象深い空間を仕上げます。日陰への耐性が高いので、日当たりがあまり良くなく、日陰になりがちな場所でも生長します。植物を育てにくい環境の病院にもおすすめです。
ブラジルを原産とするカラテア・マコヤナは、多湿な環境を好むので、定期的な水やりが欠かせません。春夏は水切れに注意をし、土を極端に乾かさないようにしましょう。一方で秋冬は、気温が低い場所で管理していると生長が緩やかになるので、土を乾かし気味にします。
また、生長が鈍くなったり止まったりすると、水やりや肥料やりの頻度が変わって難しくなってしまう場合もあります。できるだけ15℃以上で一定の暖かい環境をつくって管理するといいです。
[https://andplants.jp/collections/calatheamakoyana]
③サンスベリア・ゼラニカ|枯れにくい

日当たり | 明るい日陰 |
温度 | 最低10℃以上をキープする |
耐寒性 | やや強い |
耐暑性 | 強い |
水やり | 春夏:土の表面が乾いてから2〜3日後 秋冬:葉の表面にしわが寄ってから(10月以降はほぼ断水) |
サンスベリア・ゼラニカは、地面からしゅっと長く伸びる剣(つるぎ)のような濃緑の葉に、白い斑がしま模様に入る特徴のある観葉植物。複数で伸びるスリムな葉はスタイリッシュで、スペースを無駄に取ることもあまりありません。
熱帯アフリカやマダガスカルなどに自生するサンスベリア・ゼラニカは、観葉植物の中でも特に枯れにくいといわれ、忙しくてケアがあまりできない病院・クリニックにおすすめです。初心者の管理方法でも枯れることがあまりないので、植物を育てたことが1度もない人や、管理に自信がない人にもおすすめです。
厚みのある葉にたくさんの水分を含んでいるサンスベリア・ゼラニカは、暑さや乾燥にとても強く水切れを起こしにくいです。季節や置く場所によって違いますが、水やりは1ヶ月に1〜2回のペースで乾燥気味に育てるといいです。
基本的に直射日光が当たる場所でも育ちますが、土が湿った状態では蒸れやすく根腐れを起こしやすいです。水やりから数日後に、陽の当たる場所に移動させましょう。
[https://andplants.jp/collections/sansevieriazeylanica]
④アンスリウム|色味がある

日当たり | 日当たりのよい置き場所(直射日光は避ける) |
温度 | 最低10℃以上をキープする |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
水やり | 春夏:土の表面が乾いたら 秋冬:土の表面が乾いてから2〜3日後 |
赤、ピンク、白など光沢のある仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる葉と黄色い円筒状の花を咲かせるアンスリウム。緑鮮やかなハート型の葉を展開する姿も美しく、色や模様のパターンなどバリエーションも豊富で、色合いを楽しめる観葉植物です。
熱帯アメリカから西インド諸島に生息するアンスリウムは、樹木や岩に根を下ろす着生植物です。そのためミズゴケやハイドロカルチャーでも育てられるので、土を使わずに済み、院内を清潔に保つことができます。
また日陰でも生長してくれるので、日当たりが確保できなくても安心して育てられます。定期的に日光浴をさせ、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)のバランスの取れた緩効性化成肥料か、リン酸・カリウムの多い肥料を与えると次の年にも花を咲かせます。
[https://andplants.jp/collections/anthurium]
⑤トックリラン|水やりが少なくておすすめ

日当たり | 日当たりのよい置き場所 |
温度 | 最低5℃以上をキープする(成熟株は外でもOK) |
耐寒性 | やや弱い |
耐暑性 | 強い |
水やり | 春夏:土の表面が乾いてから1〜2日後 秋冬:土の表面が乾いてから4〜5日後 |
幹の株元が太くてトックリ(徳利)のような樹形になるトックリラン。細長い緑の葉がカールを巻くように生長する姿もユニークで、個性あふれる観葉植物です。生長スピードがとても遅いため、樹形が大きく乱れることが少なく、長く同じ状態を保ちやすいです。
メキシコ東南部のサバンナ地帯に自生するトックリランは、寒さに耐性があり、氷点下8℃程度までなら耐えることができます。そのため、夜は気温が低くなる場所でも枯れにくくて育てやすいです。
トックリランは、株元の太い幹には水をタンクのようにたくさん貯えていて、極端に乾燥した場所でも水切れを起こしにくいです。ただし水やりは控えめにし、できるだけ土を乾かしましょう。
[https://andplants.jp/collections/ponytailpalm]
病院に観葉植物を置くときに考えるべきこと
病院やクリニックに観葉植物を置くときは、以下の3つのポイントについて考えてみてください。
- 観葉植物を育てられる環境であるか
- 導線やスペースがあるか
- 植物の名前がわかるように表示しているか
育てる環境・人・インテリアに着目することで、より洗練されたシンプルさで院内をコーディネートできます。
観葉植物を育てられる環境であるか
病院内の美観を清潔に保つためには、観葉植物を育てる環境を良くしましょう。
育てる植物に適した環境ではないと、葉が変色したり落ちたりして、清潔感のない院内に見えてしまうことも。日当たりや風通し、温度や湿度など、植物が育ちやすい環境が整っているかを確認してください。
さらにはケアができる時間があるか、人がいるかなど条件にも着目して観葉植物を選び購入するといいです。
導線やスペースがあるか
待合室やホールなどで多くの人が行き交う病院やクリニックでは、できるだけスペースを広くあけ、人が歩きやすい空間にすることを心がけましょう。
基本的に住宅やオフィスの観葉植物・家具のコーディネートにおいては、ゾーニング(配置)計画が大切です。はじめにどこに植物やものを置くか決めて配置しておくことで、人が歩く導線を決められ、歩きやすい空間に仕上げることができます。
導線がしっかりと決まれば、無駄なスペースを取られることが少なくなり、有効的に余ったスペースを使うこともできます。待合室の座席数や人との距離を確保できるので、適切な数で観葉植物を購入することもポイントです。
歩くスペースが広くなれば、観葉植物が肩や腰に当たらなくなるので、株や人を傷付けることも少なくなります。
植物の名前がわかるように表示しているか
病院の待合室で待っている間は、患者さんの中には不安や退屈さを感じる人も多く、ストレスとなる場合もあります。待っている少しの間でもストレス軽減となるように、飾ってある観葉植物に手書きの名札を付けてみてください。
植物名やその植物の特徴・性質、さらには花言葉や誕生花など、細やかな情報を見やすく書いてあるだけで、目に止まった患者さんは気を紛らわすことができるかもしれません。
その植物に興味を持たせることで、張り詰めていた緊張感や心の苦しさを緩めることができ、ストレスを感じにくくなります。
お店のポップのようなかわいいデザインやカラフルな名札が目立ちやすく、より心がほっと温かくなるかもしれませんね。
病院に置く観葉植物の育て方
より清潔でクリーンな病院であることが見てはっきりとわかるように、観葉植物のケアはしっかりと行いましょう。
ここでは、病院に置く観葉植物の育て方について、基本的なポイントを4つ紹介します。
- 葉水を定期的に行う
- 水やりをする週を決めておく
- 日当たりや光を調整する
- 大きくなったら植え替えと剪定を行う
関連記事:観葉植物の育て方|コツや管理法について
掃除をしてきれいにする
病院で育てる観葉植物には、チリやホコリが積もりやすく、汚くなって見た目が悪くなることもあります。また、葉に付いた汚れによって光合成がしにくくなり、植物は生長不良を起こす場合も。
清潔感が失われないように、日頃からハンドモップやタオルなどで掃除をし、植物をきれいにしましょう。
さらに定期的に葉水も行って、常に葉がみずみずしい状態を維持するといいです。植物は極端に乾燥しにくくなり、葉焼けや水切れを起こすことも少なくなるので管理がしやすいです。
水やりをする週を決める
水やりがうまくできていないと、観葉植物は乾燥して水切れを起こしたり、過湿になって根腐れを起こしたりして枯れてしまいます。
水を与える前に一度、土の中の乾燥具合を確かめてから水やりをしましょう。また、病院やクリニックの場合は、水やりをする週を決めておくのもおすすめです。忙しい日が続いてしまうと、だれが行ったのか、何回水を与えたのか、わからなくなってしまうこともあります。
たとえば、観葉植物の生育が旺盛になる春から夏の暖かい時期は、水をたくさん必要とします。春は1〜2週間に1度、夏は1週間に1〜2度のペースで水を与えます。
気温が低くなって観葉植物の生育の流れが落ち着く秋から冬にかけては、月に1〜2度のペースで土の乾燥具合を確認しながら水を与えましょう。
ただし、環境や観葉植物の種類・品種によっては水を吸収する量が違うので、あらかじめ温度や育て方をチェックしておくといいですよ。
日当たりや光を調整する
直射日光の当たり過ぎや日照不足は、観葉植物の生長不良の原因となります。できるだけ院内に置く観葉植物は、日当たりの良い場所に置き、育てる植物にあわせて光の入り具合を調節しましょう。
基本的に多くの観葉植物は、午前中に光合成を活発に行い、午後になるにつれ活動が鈍くなります。午前中に陽の光が当たって、午後には日陰となるような半日陰な場所に置くのが最適です。
また、日中に直射日光に当たり過ぎてしまうと、葉焼けや水切れを起こしたり、鉢の中が蒸れて根腐れを起こしたりする場合も。特に夏の西日の当たり過ぎは観葉植物を弱らせ、生長の流れを悪くさせることもあります。
院内に直射日光が差し込む場合は、鉢を移動させるか、カーテン・ブラインド・すだれなどで日陰をつくり光の当たり具合を調節するといいです。
大きくなったら植え替えと剪定を行う
鉢植えで育てる院内の観葉植物は、基本的に2年に1回のペースで植え替えや剪定をします。
根鉢がパンパンに固くなってしまうと、土中の酸素濃度が薄くなるため、植物の根が窒息状態に陥りやすくなります。根詰まりを起こして枯れてしまう場合もあるので、鉢底・土の表面から根が出たときにも植え替えをしましょう。
剪定は、植物の生長をコントロールするのと環境を良くするために行うものです。枝葉がたくさん伸びて大きくなり過ぎたときや、株の内側に光や風が当たりにくくなったときにも行うといいです。
ただし、植物によって生長スピードが違うので、生育にあわせて植え替えと剪定の頻度を変えてくださいね。
まとめ
病院やクリニックなど、院内のインテリアに明るさをもたせ、温かみのある空間を演出する観葉植物。植物の種類や品種を選びケアの仕方をしっかりと把握していれば、常に清潔感のある院内をつくれ、より患者さんが来院しやすい雰囲気になるでしょう。
また、観葉植物が院内にあれば、心理的に患者さんの緊張を緩め、待ち時間によるストレスなどを軽減させることもできるでしょう。見栄えだけではなく、気持ちを楽にさせるような役割が観葉植物にはあります。
今回紹介した観葉植物で、どれが病院やクリニックに良いか迷ってしまったときは、サンスベリア・ゼラニカを選んでみてください。筆者個人的には、忙しくて定期的に管理がしにくい病院などでも枯れにくく、鮮やかな緑を維持できるのでおすすめです。