泥の中からまっすぐに茎を伸ばす姿は美しく、各地で神聖視されてきたハス。
食用や鑑賞用、宗教的シンボルとして愛されるハスには、さまざまな文化や思想を反映した花言葉がついています。中には、少し怖い意味の花言葉もあるようです。
今回はハスの花言葉について、由来や色別の花言葉を詳しくご紹介します。
スイレンとの違いや、おすすめの飾り方や植え方も解説しています。
育ててみたい方や、プレゼントに検討している方もぜひ参考にしてみてください。
蓮(ハス)の花言葉と由来
ハスの花言葉は、主に以下の4つです。
- 「神聖」
- 「救ってください」
- 「雄弁」
- 「沈着」
それぞれの由来を見ていきましょう。
「神聖」
「神聖」は、古くからハスが神聖な植物であったことからついた花言葉です。
原産地インドでは、古代のインダス文明の頃から神聖視されていたことが分かっています。
ハスは水や大地の象徴と結びつき、のちに美と富と豊穣と幸運を司る女神ラクシュミーのシンボルになりました。また仏教では、釈迦が生まれた時に大地からハスのお花が咲いたと言われています。
ヒンドゥー教や仏教において、ハスがとても神聖なお花であったことがうかがえます。
泥沼の中から透き通るようなお花を咲かせる姿は、現代人から見ても神聖に感じられるのではないでしょうか。
「救ってください」
「救ってください」や「救済」の花言葉は、仏教において、ハスは人々を極楽へ導くお花と言われたことが由来です。
泥に汚れることなく美しいお花を咲かせるハスは、釈迦の教えや正しい信心の在り方に通ずるお花としてシンボリックに描かれてきました。
釈迦は、ハスの特徴を信心に例えた「蓮華の五徳」を生きている間に実践することで人は極楽に行けると説いたと言われています。ハスは極楽浄土に咲いているお花とされ、悟りを開いた状態を示すモチーフでもあります。
ハスの「救ってください」は、仏教を信じて極楽浄土を目指す人の気持ちを表した花言葉と言えるでしょう。
「救ってください」に関連する花言葉をもっと知りたい人は、「助けて」の花言葉の記事も参考してみてください。
「雄弁」
「雄弁」の花言葉は、ハスが古代エジプトの神オシリスに捧げられていたことからつけられました。
オシリスは死と復活の神とされ、冥界の王であり神聖な裁判官です。話上手だったオシリスの性格を表して「雄弁」の花言葉がついたそうです。
しかし、古代エジプトに咲いていたのはハスではなく、スイレンだったとも言われています。スイレンとハスはよく似ており、かつては同じ植物だと考えられていたため、花言葉の意味も混ざり合ってしまったのかもしれません。
また、ハスの姿は「蓮は泥より出でて泥に染まらず」のようなさまざまな教訓を感じさせます。そのため、人々を感銘させるような説得力のあるお花として「雄弁」の花言葉がついた説もあります。
「沈着」
「沈着」は、中国でのハスのイメージからついた花言葉です。
北宋時代の有名な学者である周敦頤(しゅうとんい)は、ハスのお花を愛でて「花の君子である」と言いました。君子とは知識も人格も優れている人のことで、ハスの凛とした姿を例えた言葉です。
周敦頤の言葉から、中国ではハスを「君子花(くんしか)」と呼ぶようになりました。君子のように動じない姿を表して「沈着」の花言葉がついたと言われています。
蓮(ハス)の怖い花言葉|「離れゆく愛」
少し怖い意味のようにも感じる「離れゆく愛」の花言葉は、ハスの短い開花期間を表現した花言葉です。
ハスは早朝につぼみが開き、昼頃にはしぼんでつぼみに戻ります。3日間開いたりしぼんだりを繰り返し、4日目に開いた後そのまま花びらが散ってしまいます。
花びらが1枚ずつ順番に散っていく様子を恋愛に例えて、「離れゆく愛」の花言葉がつきました。
中国語の「蓮(れん)」の音が「恋(れん)」と似ていることから、ハスは恋愛や恋人と結びついて表現されることがあります。また、レンコンは折ると糸を引くことから、未練心を表すこともあるそうです。
蓮(ハス)の色別の花言葉
ハスには、色別の花言葉もついています。主な花言葉は以下の通りです。
- 白|「純粋」「清らかな心」
- ピンク|「信頼」
- 黄色|「休養」
ひとつずつ詳しく解説していきます。
白|「純粋」「清らかな心」
「純粋」「清らかな心」は、白色の清純なイメージからついた花言葉です。
早朝の朝日に照らされて白いお花が開く姿は、清らかで純粋な印象を与えます。
ピンク|「信頼」
優しい温かみのあるピンク色の印象から「信頼」の花言葉がつきました。
ピンク色のハスは濃淡さまざまな品種があり、濃いピンクの品種は紅蓮花(ぐれんげ)と呼ばれます。紅蓮花はヒンドゥー教では女神ラクシュミーと夫ヴィシュヌ神を象徴するお花で、2人の愛を表現するお花としても知られています。
黄色|「休養」
黄色のハスには、クリーム色の柔らかなイメージから「休養」の花言葉がついています。
また、蓮のお花が開いたり閉じたりする様子が休んでいるように見えたことが由来とも言われます。
黄色のハスは北米が原産地です。日本や中国には自生してなかった品種で、花びらの先がやや丸い点が特徴です。
蓮(ハス)の名前の由来
ハスの名前は、花托(かたく)が蜂の巣に似ていることからつけられたと言われています。
蜂の巣を意味する「蜂巣(はちす)」が変化して、ハスになったそうです。
蓮の漢字は、花托にたくさんの実が連なっていることから「連」に「くさかんむり」をつけて「蓮」となった説が有力です。
蓮(ハス)の誕生花
ハスは、7月3日、7月8日、8月15日、9月26日の誕生花です。
ハスのお花は7月から8月頃が開花時期のため、7月3日、7月8日、8月15日の誕生花になりました。また、9月頃は実が収穫できることから、9月26日の誕生花にもなっているようです。
蓮(ハス)の特徴
ハスは、アジアやオーストラリア北部、北アメリカが原産のハス科ハス属の植物です。
しかし、よく似たスイレンと混同されたり、レンゲと呼ばれたりすることもあります。そこで、以下の2点からハスの特徴を紐解いてみたいと思います。
- 蓮(ハス)と睡蓮(スイレン)の違い
- 蓮(ハス)と蓮華(レンゲ)の違い
では詳しく見てみましょう。
蓮(ハス)と睡蓮(スイレン)の違い
ハスとスイレンはかつては同じ植物に分類されていましたが、現在ハスはヤマモガシ目ハス科、スイレンはスイレン目スイレン科に区別されています。
一般的なハスとスイレンの違いをまとめてみました。
ハス | スイレン | |
科目 | ヤマモガシ目ハス科 | スイレン目スイレン科 |
原産地 | アジアやオーストラリア北部、北アメリカ | 世界各地 |
お花の特徴 | 水面より30cm〜1m高い | 水面に近い |
お花の色 | 白、ピンク、黄 | 白、ピンク、青 |
葉の特徴 | 立葉、浮葉など種類がある | 水面に浮く浮葉 |
食用 | ◯生でも食べられる | △処理が必要 |
ハスはお花、実、地下茎(レンコン)を食用とし、生でも食べられます。
スイレンも同じようにお花や実、地下茎を食用や薬用にする地域もありますが、毒を含む品種もあるため処理が必要です。
蓮(ハス)と蓮華(レンゲ)の違い
ハスのお花を蓮華(レンゲ)と呼ぶのを聞いたことがある人もいるでしょう。蓮華は、ハスのお花、もしくはハスとスイレンの総称として使われている言葉です。
蓮華は仏教用語で、仏教伝来とともに日本に伝わった言葉です。蓮華は悟りを象徴するモチーフのひとつであり、仏像や仏画において釈迦はハスのお花の上に乗って描かれています。
元々はハスのお花を指していましたが、仏教が伝来し発展していく中でよく似たスイレンも含まれるようになったようです。
また、野に咲くレンゲソウはハスのお花に似ていることから名付けられており、ハスやスイレンとは別の植物です。
中華料理を食べる際に使われるレンゲの名称は、形がハスの花びらに似ていることが由来と言われています。
蓮(ハス)の育て方
大きなかめやタライ、穴の空いていない水生植物用の鉢で育てられます。
日光が好きで、半日以上直射日光が当たる場所が適しています。田んぼの土のような粘土質の土で植え付けましょう。
苗を土の中に植え、土から10cmから20cmの高さまで水を注ぎます。特に夏は水切れを起こしやすいので、水位20cmを保つようにしてください。
毎年春に植え替えると、お花が咲きやすくなります。新芽をつけたレンコンを2節半ずつに切り分け、土の中で芽が上を向くように水平に置いて植え付けましょう。
ハスには観賞用と食用の2系統があり、観賞用の品種は根茎があまり太りません。
蓮(ハス)のおすすめの飾り方・植え方
ハスは成長の過程における変化や造形が美しく、さまざまな形で鑑賞を楽しめます。自宅でハスを楽しみたい時におすすめの方法をご紹介します。
- ビオトープで育てる
- ドライフラワーを飾る
ではそれぞれ解説していきます。
ビオトープで育てる
ビオトープとは、自然の生態系を再現して植物や生き物を育てる方法です。
ハスのような水生植物とメダカやエビなどの生き物を一緒に育てることで、生育環境を自然に良い状態に保つ効果が期待できます。メダカはボウフラを食べてくれるので、蚊対策にもいいでしょう。
ベランダやテラスなどでも、自然らしい景観を楽しめます。子どもと一緒に育てるのも素敵ですね。
ドライフラワーを飾る
ハスの独特な花托は、ドライフラワーとしても人気です。
ハスは乾燥すると黒っぽくなり、彫刻的な造形が引き立ちます。さりげなく素敵なフラワーベースに入れるだけで、おしゃれなインテリアになるでしょう。
ほかの植物と合わせて作るスワッグもおすすめです。
[https://andplants.jp/products/lotus]蓮(ハス)の花言葉に関するよくある質問
ハスの花言葉に関するよくある質問と答えをまとめてみました。
- 蓮(ハス)は縁起が悪い?
詳しく解説します。
蓮(ハス)は縁起が悪い?
ハスは花言葉も美しく、世界各地で縁起のいいお花と言われています。本来は清らかで、仏心を象徴するようなお花です。
しかし日本では、ハスは縁起が悪いイメージを持つ人が少なくありません。
日本において仏教に関するものは、お葬式や法事のように死と関連したイメージが強い傾向があります。
そのため、お供えに使われるハスは慶事には向かないと考えられることが多いです。一般的にハス柄の着物は喪服であり、ハスのお花は結婚式には使われません。
ハスのお花やモチーフを取り入れる時は、シーンに気をつけたほうがいいでしょう。プレゼントの花束にも、あまり向いていないと言えます。
ハスのお花をプレゼントしたい時は、ハスを自宅で育てるキットはいかがでしょうか。また、インテリアとして気軽に取り入れやすいハスの実のドライフラワーもおすすめです。
まとめ
透き通るような色合いのハスは美しく、見ている人の気持ちも落ち着かせてくれます。
「神聖」や「沈着」の花言葉のように堂々とした姿は、心にゆとりを与えてくれるでしょう。また「雄弁」の花言葉が表すように、ハスの特徴や性質のひとつひとつが私たちに人生や在り方を語りかけてくるようです。
自分でハスを育ててみれば、よりハスの魅力に引き込まれるかもしれません。ぜひ栽培に挑戦してみてくださいね。