植物名 | ビカクシダ(コウモリラン) |
学名 | Platycerium |
英名 | Common staghorn fern |
科目/属性 | ウラボシ科ビカクシダ属 |
原産地 | アフリカ、アジア、オーストラリアの熱帯地域 |
日当たり | 日当たりのよい置き場所 |
温度 | 最低10℃以上をキープする |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
水やり | 春夏:土や水苔の表面が乾いてから 秋冬:土や水苔が乾いてから2~3日後 |
肥料 | 緩効性肥料、液体肥料 |
剪定時期 | 5~10月 |
育てやすさ | ★★★☆☆ |
ビカクシダ(コウモリラン)の特徴
ビカクシダは鹿の角のように伸びる独特な葉姿をもつシダ植物で、その形状からコウモリランとも呼ばれます。そのため、ビカクシダとコウモリランは同一です。

株元にぴったりと張り付くように広がる「貯水葉」には、水分や養分を蓄える性質があります。
一方、角のように前方へ伸びる「胞子葉」は、シダ植物としての胞子をつくる重要な役割を担っているのです。

品種によって葉の形や質感はさまざまで、おしゃれなインテリアグリーンとして多くのファンを魅了しています。
私自身、このユニークな造形には心を奪われており、室内に一鉢置くだけで空間全体が洗練された雰囲気になると感じます。
適切な湿度や光量を確保しながら世話をする手間はありますが、その分育てている実感がわき、愛着もひとしおです。
さらに、個体ごとに成長の仕方や葉の形状が微妙に異なるため、同じ品種でも唯一無二の存在感を楽しめるのも魅力のひとつです。まるで生き物と対話しているような気分になれるビカクシダは、観葉植物好きとして外せない存在だと思います。
ビカクシダ(コウモリラン)の種類
ビカクシダには18種類の原種があります。自生地の環境に影響を受けており、葉の色や形、育ち方に違いがあることが特徴です。
世界的にも人気のある植物であるため、園芸品種として品種改良が進んでいます。これからも種類が増えていくでしょう。
以下の6種類は人気のビカクシダになります。
- ビフルカツム:最もポピュラーな品種で暑さ寒さに強く育てやすい
- ネザーランド:ビフルカツムの改良品種で、より強健でグリーンが美しい
- ウィリンキー:白い胞子葉が細長く垂れ下がる
- ビーチー:生長すると細めの胞子葉の葉先が割れる
- スパーバム:大型の品種で日本の気候でも育てやすい
- エレファントティス:切れ込みのない胞子葉がゾウの耳に似ている
それぞれの品種は個性的な姿をしており、成長するほど魅力が増していきます。ぜひ、好みの葉姿を見つけて育ててみてはいかがでしょうか。
ビカクシダ(コウモリラン)の育て方
ビカクシダの育てるポイントは、直射日光を避けた明るい日陰で管理をすることです。週1〜2回の水やりで貯水葉をしっかり湿らし、適度な湿度をキープしてください。
また、風通しをよくして、葉裏にも霧吹きで葉水を行うのも大切です。以下、さらに詳しく5つのポイントを解説するので、メモをとりながら読み進めるとよいでしょう。
- 日当たりと置き場所
- 温度
- 水やり頻度
- 肥料
- 剪定
育て方の確認の前に、ビカクシダのおしゃれな姿を見たい方は、以下のリンクをチェックしてみてください。
①置き場所と日当たり
ビカクシダは日当たりのよい室内の環境を好みます。ただし、夏の直射日光に当たると葉焼けすることもあるため注意が必要です。

暗すぎる場所では生育が悪くなり枯れる恐れもあるので、明るい窓際で育ててください。
屋外で育てる場合は、気温が下がり始める秋以降に室内へ入れることが重要です。
ただし、屋内・屋外を行ったり来たりすると、ビカクシダが浴びる紫外線量に変化が生じるので、基本は室内で育てましょう。
②温度
ビカクシダは寒さに弱い植物です。最低10℃以上をキープして育ててください。
品種によって耐寒性に違いがありますが、最低10℃以上をキープすることが美しく育てるポイントです。屋外の明るい日陰で育てている場合は、気温の下がる秋に室内の明るい窓際に移動させましょう。
ただし、冬の窓際は屋外と変わらないくらいに冷え込みます。冷え込む夜から朝は窓から離した明るい場所に置き、暖房の風が当たらないように管理してください。
③水やりの頻度
ビカクシダの水やり頻度は、春夏と秋冬で異なります。具体的には以下の通りです。
- 春夏:土や水苔の表面が乾いてから
- 秋冬:土や水苔の表面が乾いてから2~3日後
鉢植えの場合、春夏の生育期には、土や水苔の表面が乾いたら鉢底から水が流れるくらいに水やりしてください。貯水葉に水がしっかりかかるように水やりします。ただし、水のやりすぎや受け皿の溜め水は根腐れの原因になります。
水苔は完全に乾燥すると水をはじくので、水やりには注意が必要です。完全に乾燥している場合は、バケツに水を溜めて腰水で鉢底からじっくり吸水させましょう。
コルクやヘゴなど木の板に着生させ育てている場合は、大きなバケツに水を溜めて、そのまま浸水させます。バケツに入らない大きなビカクシダは、屋外に出してシャワーで優しく水苔と株全体を湿らせることがポイント。
冬は土や水苔の表面が乾いてから2~3日後に水やりしてください。乾燥気味に管理すると根腐れ防止だけでなく、植物体内の水分含量を減らし凍傷を防ぐことができます。
水切れのサインは「胞子葉が垂れる・しわしわになる」
ビカクシダは水切れすると、胞子葉に張りがなくなり、しわしわになり始めて垂れ下がってしまいます。
水切れ状態が続くと、胞子葉の葉先が茶色く枯れ、ビカクシダ全体の色もくすむため、水切れには注意してください。貯水葉が土や水苔を包み込むように、しっかりと巻いている場合は、水切れが起きにくいです。
貯水葉が大きく成長していない子株ほど、水切れしやすいため、サインを見逃さないようにしてください。葉の状態や色をこまめに観察して、水切れしないように育てましょう。
④肥料
ビカクシダには、植え替えの時に長期間ゆっくり効く緩効性肥料を、土に混ぜ込んでおくだけで十分です。土に肥料を混ぜ込んでいない場合は、置き肥や液肥を貯水葉の間に与えてあげてください。
ビカクシダは、本来あまり肥料を必要としません。しかし、肥料を与えると生育が早くなるので、大きくしたい方は肥料を与えてみると良いでしょう。
生育期の5~10月に2か月に1度置き肥を置くか、水に薄めた液肥を2週間に1度のペースで水やり代わりに与えてください。コルクやヘゴなどの木の板に着生させている場合は、薄めた液肥を与えます。
筆者は、大きい株にしたかったので、春夏の生育期に貯水葉の隙間に固形肥料を挟んでいました。例年よりも大きくなったのを覚えています。
生育が緩慢な冬に肥料を与えると根傷みで枯れる恐れがあるので、冬は肥料を控えてください。
[https://andplants.jp/products/evo_solid_fertilizer_for_green]⑤剪定方法
剪定時期は生育期の5~10月ですが、基本的にはビカクシダに剪定は必要ありません。古くなって枯れた胞子葉を切り取る程度で十分です。
株元に張り付くように出る貯水葉は水分や養分を蓄えるスポンジの役割があるため、枯れても切り取らないでください。
よって、ビカクシダの剪定作業は枯れた胞子葉を切り取る程度です。ほかの観葉植物と比べると剪定作業が簡単なので、初心者の方も悩むことは少ないでしょう。
黒くパリパリになった胞子葉を以下の剪定ハサミで切り取ってあげてください。
[https://andplants.jp/products/sakagen-flower-shears]ビカクシダ(コウモリラン)を購入した方からのレビュー
AND PLANTSのビカクシダを購入した方からのレビューを下記にまとめました。
「ビカクシダのオンライン購入が不安…」「ビカクシダって実際のところどうなの?」と思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。




お部屋のインテリアグリーンに人気のビカクシダ。おしゃれなプレゼントとして新築祝いや引っ越し祝いとしても選ばれています。
ビカクシダの姿かたちにこだわりたい方は、樹形選択サービス(有料)をご活用いただけますと、より好みの姿をしたビカクシダに出会えるかもしれません。
ビカクシダ(コウモリラン)のよくあるトラブルと対処法
個性的な姿で人気のあるビカクシダですが、トラブルも存在します。
ここではトラブルが起きたときの対処法を解説していきます。あらかじめ対処法を知っておけば、いざ何かあっても安心です。
植物や虫のトラブルに対処できるケア用品をまとめました。詳しくは下記のページからご覧になってみてください。
根腐れ
根腐れでは、以下の症状が見られます。
- 水をあげても元気にならない
- 土がなかなか乾かない
- 葉が落ちやすい
- 葉が茶色・黄色に変色している
- 幹や幹の根元が柔らかい
- 土から腐敗臭がする
- 土の表面にカビが生えている
- 根黒く変色している
根腐れは、土の中の酸素濃度が低下して土中の細菌叢が変化し、有機物の腐敗が進むことで有害なアンモニアが発生し、土壌環境が悪くなることで発症します。
また、常に土が湿っている状況では根が呼吸することができず、細胞が死んでしまいます。これが原因で、根から水を吸い上げることができなくなり、植物体に水を供給することができなくなることで死んでしまう現象です。
根腐れの対処法は以下。
- 鉢から植物を抜き、悪い土を落として水はけのよい土に交換する
- 根の傷んでいる部分、腐っている部分をカットする
- 少量の水を与え、風通しがよく明るい日陰で管理する
※1週間を目安に水が乾くコンディションで管理する - 発根剤を与えてみる
- 傷んだ葉を取り除く
- 枯れた枝を切り取る
根腐れが起こった場合は、鉢を入れ替えて土の環境を変えることが大切です。傷んでしまった根は取り除き、健康な状態が取り戻せるような環境を与えてあげましょう。赤玉土・ゼオライトなどを用土に混ぜ込むことで、水はけと根腐れを防止することができます。
枝先がダメになっている場合は、生きている部分までカットし、新しい葉を出すことで回復させます。根元から腐っている場合は、無事な部分で切り取り、挿し木にして発根させて回復させましょう。
根腐れが起こると、新芽を残すように古い葉を落とす現象が見られます。重度の根腐れの場合は、新芽や枝の先から枯れることがあるので注意が必要です。
関連記事:観葉植物の根腐れ|対処法や見分け方の紹介
葉焼け

ビカクシダは強い日差しを浴びすぎると、葉が傷んで「葉焼け」というトラブルが発生します。葉焼けでは、以下の症状が起きます。
- 葉の色素が抜けて白くなっている
- 葉の一部が茶色く枯れている
葉焼けの症状に気がついたら、早めに置き場所を検討し直すことが必要です。
対処法は以下。
- 直射日光が当たっている場合はカーテンなどで遮光する
- 葉焼けした部分はカットする
葉焼けが起こるということは、日光が当たりすぎている可能性が高いため、直射日光に当てないような措置を取りましょう。
また、一度焼けてしまった葉は二度と元に戻りません。傷んだ葉はカットし、新しい健康な葉が生えてくるのを待ちましょう。
関連記事:観葉植物の葉焼け|原因や対処法の紹介
ハダニ
ハダニの症状は以下。
- 葉にクモの巣のような糸がついている
- 葉の裏に小さな虫がついている
- 葉に斑点や傷がある
- 葉の色が薄くなり枯れている
ハダニは繁殖力の強さと、薬剤耐性を持つとても厄介な害虫です。
放っておくと糸を張って大量発生する危険性もあるので、早めに対処を行いましょう。
対処法は以下。
- 傷んだ葉はカットする
- 葉の表裏、付け根や茎も水で洗浄する
- ハダニに効果のある液体を噴霧する(2倍に薄めた牛乳、重曹と水を混ぜたもの、濃いコーヒー、10倍に薄めた酢、殺虫剤)
ハダニが湧いてしまったら、市販の殺虫剤(ベニカファインスプレー・オルトラン)を使用するのが効果的です。2倍に薄めた牛乳などの液体を噴霧する対処法もありますが、匂いが気になる方には水で洗い流す方法もおすすめです。
そもそもハダニは、こまめな霧吹き・葉をふき取りきれいにすることを怠らなければ発生しません。
常にきれいな状態を保つために、霧吹きの購入は必須といえます。月に一度はシャワーで洗い流すなどの管理も必要です。
ビカクシダ(コウモリラン)の育て方に関するよくある質問
最後にビカクシダのよくある質問とその答えを以下にまとめました。
- ビカクシダの苔玉の育て方は?
- 鉢植えで育てる際に適した土は?
- 鉢植えで大きくしたい場合は?
- ビカクシダが大きくなりすぎた時は?
それでは具体的に見ていきましょう。
ビカクシダの苔玉の育て方は?
ビカクシダの苔玉も、鉢植えと同様の育て方です。ただし、苔玉は鉢植えよりも乾燥が早いので、生育期の春~秋の水切れに注意します。
苔玉は、ビカクシダの根に水苔を巻いている状態です。内部まで完全に乾燥すると、水やりをしてもなかなか吸水しません。
その場合は、バケツや深い受け皿に水を溜めて苔玉にじっくり吸水させてください。吸水し水苔がしっかり湿ったら、元の場所に戻して管理しましょう。
鉢植えで育てる際に適した土は?
ビカクシダに適した土は、水はけと通気性のよい土です。適度に水分を保ちながら、根が呼吸できるように空気も入り込む団粒構造を意識しましょう。
「ピートモス:パーライト:小粒軽石=7:2:1」が良いとされていますが、上記の条件に当てはまる土であれば問題ありません。環境や鉢の材質によっても土の乾き方が変わるので、育ち方を確認しながら土を作ると、ビカクシダをより楽しめます。
ビカクシダの鉢植えは、インテリアとして床に置くだけでもおしゃれです。プラントハンガーで吊り下げたり、プラントスタンドで高い位置に置いたりすると、枝垂れる葉がよりおしゃれな空間を演出してくれます。
鉢植えで大きくしたい場合は?
鉢植えでビカクシダを大きく育てたい場合は、生育期の5~10月にかけて肥料を与えます。
元肥として植え替え時に土に混ぜ込んでおくのもおすすめです。すでに鉢に植え付けられているビカクシダの場合、与え方は以下の2通りあります。
- 土が見える場合:置き肥を2ヶ月に1回置く
- 貯水葉で土が隠れている場合:バケツで吸水させる際に液体肥料を薄めておく
ビカクシダに霧吹きで葉水をする際に、液体肥料を薄めて葉面散布する方法もあります。ただし、葉面散布する場合は、通常よりも液体肥料を薄めておかないと逆効果になるので、注意してください。
ビカクシダが大きくなりすぎた時は?
ビカクシダが大きくなりすぎた時は、植え替えしてください。コルクやヘゴなどの板に着生させて育てている場合は、より大きな板を使用して再び板付けします。
ビカクシダはよほど大きくならない限り、植え替えしない植物です。目安として、貯水葉が鉢や着生させている板を包み込むほど成長したら植え替えます。
また、大きくなると胞子によって子株ができやすいので、株分けして小さい姿から育てることが可能です。大きくしたくない場合は、肥料を与えずに育てるとよいでしょう。
大きなビカクシダは、インテリアとしても非常に観賞価値があります。置き場所を移動させて、立派に育て続けてください。
ビカクシダ(コウモリラン)のまとめ
ビカクシダは明るく風通しの良い室内であれば、一年を通して簡単に育てることができます。品種によって個性的な葉姿があるため、おしゃれなインテリアグリーンとして活躍するでしょう。
筆者もビカクシダを育てていますが、新しく出てくる胞子葉や貯水葉の美しさに惚れ惚れしています。水切れさせると、美しい葉姿に悪影響がありますので、紹介している水切れサインには注意しましょう。
この記事で紹介した育て方を参考に、素敵なビカクシダに育ててみてください。木の板に着生させたりプラントハンガーで吊るしたりと、素敵なインテリアグリーンとして飾り付けるのもおすすめです。
[https://andplants.jp/collections/platyceriumbifurcatum]