フラワーギフトには定番の胡蝶蘭。実は生命力が強く、意外と育てやすい植物です。
しかし、胡蝶蘭の栽培は難しいイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。これは、普通の鉢植えとはちょっと違う水やりのコツがあるからかもしれません。実際、水やりがうまくいかずに胡蝶蘭を枯らしてしまうケースが多くみられます。
特に水のやりすぎによる根腐れは、胡蝶蘭栽培において最もよくみられるトラブルです。着生植物である胡蝶蘭は、鉢植え栽培において根のトラブルが生じやすいのです。
今回は、胡蝶蘭の根腐れについて解説します。調子が悪いように感じたら、まず根腐れを疑ってみましょう。根腐れの症状や、対処法もあわせてご紹介します。
[https://andplants.jp/collections/phalaenopsis]胡蝶蘭の根腐れ|症状
根腐れが起きるとまず根に異変が起きていますが、根は外からは見えづらく、発見が遅れることがほとんどです。葉や花の調子から根腐れのサインを見つけ、根を確認して根腐れを判断しましょう。
よくある根腐れの症状は、以下の4点です。
- 葉のシワ・しおれ
- 花が枯れる
- カビが生えている
- 根が変色している
ひとつずつ詳しく解説します。
葉のシワ・しおれ
通常、胡蝶蘭の葉は、濃い緑色でツヤがあります。また、水分をたくさん含んでハリがあり、ピンと上を向いています。
しかし根腐れを起こしているときは、葉にツヤがなくなり、シワが出てきます。
また、葉がしおれ、水をあげても治らない場合も根腐れを疑いましょう。葉が緑色のまましおれて落ちてしまう時も、根腐れの可能性が高いでしょう。
花が枯れる
胡蝶蘭の花は、1輪が2週間〜1ヶ月近く持ちます。
花が咲いたのにすぐ枯れてしまった、蕾がついたのに開かずに枯れてしまったなどの場合も、根腐れを疑ってみましょう。根が水分をうまく吸い上げられず、花まで届いていない状態です。
なお、水分不足の場合も同じ症状が出ることがあります。根の状態を確認して判断しましょう。
カビが生えている
茎や株の根元に白カビが生えている場合は根腐れを起こしている可能性があります。鉢がカビ臭くなることも。株から異臭がしてきたら根腐れかもしれません。
なお、置き場所や植え方によって通気性が悪く、植え込み材の表面にカビが生えるケースもあります。放っておくといずれ根腐れに繋がるので、早めに発見して植え込み材を取り替えましょう。
根が変色している
葉や花に上記のような異常があったときは、鉢から根を出して確認してみましょう。
健康な胡蝶蘭の根は、緑色〜クリーム色です。外側は水分を蓄えるために多肉層になっていて、細い根が通っています。状態が良い根は多肉層にたっぷり水分を含んでみずみずしくハリがあります。
根が黒く変色してドロドロになっていたり、多肉層がスカスカになっていれば根腐れが原因です。
胡蝶蘭の根腐れ|原因
胡蝶蘭は本来、根が空気中に剥き出しになっており、空気中から水分や養分を得て成長しています。わずかな水分や養分を効率的に取り込み、蓄える性質を持っているのです。
上記を踏まえると、胡蝶蘭栽培で起こりやすい根腐れの原因は主に以下の4つが挙げられます
- 水のあげすぎ
- 肥料のあげすぎ
- 風通しが悪い
では順に見てみましょう。
水のあげすぎ
根腐れの原因で多いのが、水のあげすぎです。鉢の中が常に濡れていると水分を取り込みすぎて、貯水タンクである根の多肉層が腐ってしまいます。
胡蝶蘭の水やりは10日前後に一度、植え込み材がしっかり乾いているのを確認してからするのが基本です。しかし、植え込み材の表面が乾いていても、鉢の中はまだ湿っているという状況がよくあります。
湿っていることに気づかず水やりをしていると、根腐れを起こしてしまいます。
肥料のあげすぎ
また、肥料のあげすぎでも根腐れを起こします。
胡蝶蘭は通常、空気中のわずかな成分から養分を作り出しているため、たくさんの肥料を必要としません。肥料の濃度が濃すぎたり、頻繁にあげてしまうと根が弱ってしまいます。
なお、胡蝶蘭栽培において肥料は、元気な株をさらに成長させるために使うものです。弱った株を復活させるために肥料をあげると、根の負担が増えて根腐れに繋がります。冬の休眠期にあげるのも、根にとっては負担です。
風通しが悪い
風通しの悪さも根腐れの原因です。胡蝶蘭の根は本来常に風が当たる環境にあり、風通しの良い場所を好みます。
代表的な植え込み材である水苔は、保水力が高い分、過湿状態にもなりやすい素材です。水苔で植える場合は、通気性の良い素焼き鉢に植えましょう。贈答用の胡蝶蘭などはビニールポットに入っていますが、根腐れを防ぐためにも早めに植え替えるといいでしょう。
胡蝶蘭の根腐れ|対処法
根腐れの対処法は植え替えです。
腐っている根を復活させるのに体力を使ってしまうので、早めに見つけて古い根を切除するのが大切。元気な根がまだ残っているうちは復活させるのも難しくありません。しかし発見が遅れてほとんど根がない状態になってしまうと、復活するのにも時間がかかります。
根腐れのサインを見極め、早めに植え替えましょう。植え替えの手順は次の3つです。
- 腐っている根を取り除く
- 植え替える
- 植え替えてから2週間後に水やりをする
では順番に解説します。
①腐っている根を取り除く
まず鉢から根を取り出し、植え込み材を取り除きます。根を傷つけないよう、ピンセットを使って丁寧に行いましょう。
次に、黒くなった根を切除します。
根を切る際は、ハサミを火で炙ってから使います。ハサミから雑菌が入らないようにするためです。切れ味の良いハサミがなければ、新しい刃に替えたカッターでもOK。ほかの根や茎を傷つけないように気をつけましょう。
[https://andplants.jp/products/sakagen-flower-shears]②植え替える
新しい植え込み材を用意し、よく洗って清潔にした鉢に植え替えます。
保水力の高い水苔で植える場合は、通気性の良い素焼き鉢が適しています。ビニールポットなどは群れて根腐れを起こすので、必ず素焼き鉢に植え替えましょう。
まず株を逆さに持って、水苔が根の下側にしっかり入るように抑えます。そのあとは周りに水苔を巻き付けます。鉢の中に入れ、鉢の周辺を指でグッと押し込んで固定します。
なお、低く植えるのも蒸れる原因になります。株元が鉢よりも高い位置にくるよう、少し高めに植えましょう。
③植え替えてから2週間後に水やりをする
通常、植え替えた後はたっぷり水をやるのが基本ですが、胡蝶蘭は植え替えてからすぐ水やりはしません。根が弱っている状態ですぐに水をやると負担になるからです。特に根腐れの場合は、根を乾かす必要があります。
夏場なら10日〜2週間、冬場は2週間は必ず空けてから水やりをしましょう。
その後も1〜2ヶ月は水やりを控えめにします。10〜2週間に1回、しっかり中まで水苔が乾いていることを確認してから水やりをしましょう。
胡蝶蘭の根腐れ|予防
胡蝶蘭は根腐れが起きやすい植物です。予防するには、以下の2つに特に注意しましょう。
- 水やりは水苔が乾いてから
- 肥料をあげる時期に気をつける
ひとつずつ解説していきます。
水やりは水苔が乾いてから
根腐れの一番の原因・水のやりすぎを防ぐには、水やりの目安をきちんと把握することが大切です。
保水力のある水苔は、表面が乾いていても鉢の中が湿っていることがよくあります。さらに素焼き鉢は外からは中の状態が分かりません。目視では水やり時が分かりにくいのがデメリットでもあります。
水やりをするときは、必ず水苔を触って確認しましょう。水苔を指で押してみて、湿り気を感じなければ水やり時です。特に水が乾きにくい冬は気をつけましょう。
このような水やりチェッカーを使うのもおすすめです。
[https://andplants.jp/products/watering_checker_sustee_medium_single]肥料をあげる時期に気をつける
胡蝶蘭の肥料をあげるときは、以下の3点に気をつけましょう。
- 肥料をあげるのは5〜10月まで
- 弱っている株にはあげない
- 用法・用量を必ず守る
胡蝶蘭の肥料をあげる時期は、5月頃から10月頃までです。気温が低くなると株が休眠期に入ります。植物は休眠期に肥料を与えられると根腐れを起こしてしまいます。
肥料は洋ラン専用の肥料を、適量を守ってあげましょう。
胡蝶蘭の根腐れについてよくある質問
ここからは、胡蝶蘭の根腐れについてよくある質問と答えをまとめてみました。
- 根がカラカラの原因と対処法は?
- 根腐れにメネデールは効果的なの?
- 水耕栽培で根腐れしたときの対処法は?
- 葉がない状態でも復活する?
- 根腐れしにくい胡蝶蘭の植え方はある?
ではみていきましょう。
根がカラカラの原因と対処法は?
根がカラカラになってしまう原因は、根腐れ・水不足・根の老化のどれかが考えられます。
根腐れの場合、過度な水分で根の多肉層が腐ってしまい、多肉層の水分がなくなってカラカラになります。カラカラになった場合は、傷んだ根を取り除いて植え替えを行いましょう。
逆に水分不足の場合も、根の多肉層の水分が干からびてカラカラになります。水をあげると復活することもありますが、完全にカラカラになった根は復活できません。
根腐れと同じように傷んだ根を取り除いたあと、葉水でしっかり水分を与えます。
根の老化の場合、新しい根と世代交代する自然現象です。新しい根がたくさん出ているようなら心配はありません。
根腐れにメネデールは効果的なの?
植物活力素・メネデールは、根腐れを起こして根が少なくなってしまった胡蝶蘭の新しい発根を促すのに有効です。
薄めたメネデール液をペットボトルなどに入れ、残った根の先だけを漬けます。
根がすべて傷んでいる場合、全部切除せずに、芯がまだ白く残っている根を残します。カラカラになった皮は取り除いて、芯をメネデール液に漬けておきましょう。
気温が低い時期は全体にビニール袋を被せて保湿しながら様子を見ます。
早ければ1ヶ月〜2ヶ月、長いと半年ほどかかることもありますが、緑色の根が出てきます。数本新しい根が揃ったら、5〜9月の暖かい時期に鉢に植え替えましょう。
メネデールが手元にない方は、下記の「植物が元気に育つ水」を活用しても効果的です。
[https://andplants.jp/products/evo_grawwell_plantwater]水耕栽培で根腐れしたときの対処法は?
胡蝶蘭は、水耕栽培でも育てることができます。水耕栽培は根が見えやすいので管理しやすく、植え込み材を使わないため準備物も少なく始められるのがメリットです。
根を水に漬けた状態で育てるため根腐れしそうですが、株元や葉が水に浸からなければ大丈夫。ただし雑菌が発生すると根腐れの原因になります。必ず毎日水を替えましょう。
水耕栽培で根腐れを起こしてしまったときは、根の傷んだ部分を取り除きます。芯が生きているようなら皮だけを取り除きましょう。花瓶を清潔に洗い、水をこまめに替えながら様子を見て育てます。
葉がない状態でも復活する?
根腐れを起こして葉がすべてなくなってしまった場合でも、株元の茎が硬く、元気な根が残っていれば復活の可能性があります。
植え替えなどを行うと株が弱る原因になるので、植え替えせず、水やりを控えながら様子を見ます。特に冬の間はほとんど水を与えず、4月頃から霧吹きなどで表面がややしっとりとする程度に水やりをします。
株の体力が残っていれば、夏までには芽が出ることがあります。
根腐れしにくい胡蝶蘭の植え方はある?
胡蝶蘭栽培には、主に以下の方法があります。
植え込み材の種類 × 鉢の種類 | メリット | デメリット |
水苔 × 素焼き鉢 | 保水性が良い | 根腐れしやすい |
水苔 × 板(板付栽培) | 栽培環境に近い | こまめな水やりが必要 |
バークチップ × プラスチック鉢 | 排水性が良い | 害虫が発生しやすい |
水耕栽培 × コップやペットボトル | 手軽 | 毎日水替えが必要 |
水苔を使う栽培は保水力が高いですが、その分根腐れしやすいのがデメリット。しかし、こまめに水やりできない、ほったらかし気味に育てたい人にはぴったりの栽培方法です。
板付栽培やバークチップ栽培は排水性が良いため、水苔栽培に比べて水やりの頻度は高めです。水耕栽培も毎日水替えする必要があるため、まめにお世話できる人に向いています。
どの栽培方法にもメリットとデメリットがあります。ライフスタイルやお世話の頻度に合った方法を選ぶことが、根腐れ予防にもなります。
まとめ
過酷な環境に適応して繁殖してきたため、生命力は強く丈夫な胡蝶蘭。根腐れして、根がほぼなくなってしまった!という状態でも復活するケースは少なくありません。
そして適切に育てれば、初心者でも簡単にお花を楽しめます。成長も早いため、花芽や根がぐんぐんと伸びる姿は愛おしく、育て甲斐のある植物です。花が咲けば華やかで、お部屋をぱっと明るく見せてくれます。
根腐れしてもあきらめず、復活に挑戦してみてくださいね。
[https://andplants.jp/collections/phalaenopsis]