愛の言葉や美しい表現で、お花に意味を込める花言葉。しかし、ぞっとするような怖い意味の花言葉も存在します。
今回は、狂気的な花言葉のついた植物をご紹介します。
「死」や「呪い」に関する花言葉や、「執着」「異常な愛情」を表す花言葉を集めてみました。
中には、狂気的な花言葉が似合わないような、美しいお花を咲かせる植物もあります。人々を魅了する花々に、なぜ怖い意味の花言葉がつけられてしまったのでしょうか。
花言葉がついた由来や、込められた意味を解説していきます。
相手の「死」を願う狂気の花言葉
まずは、「死」に関する狂気の花言葉を4つご紹介します。
- スノードロップ|「あなたの死を望みます」
- 黒赤色のバラ|「死ぬまで憎みます」
- ハナズオウ|「裏切りのもたらす死」
- ベラドンナ|「男への死の贈り物」
白く可憐なお花を咲かせるスノードロップや、ビビットなピンクが美しいハナズオウからは想像できない花言葉ですね。
なぜ相手の「死」を願う花言葉がついたのでしょうか。順番に見ていきましょう。
スノードロップ|「あなたの死を望みます」
「あなたの死を望みます」の花言葉は、イギリスに伝わるケルマの伝説が由来です。
少女ケルマは、最愛の恋人を亡くしてしまいます。悲しんだケルマが恋人の胸にスノードロップを置くと、恋人は雪の雫となって消えてしまいました。
ケルマの伝説から、スノードロップは死を連想させると言われています。スノードロップを家の中に持ち込むと不幸が訪れ、異性に贈ると「あなたの死を願う」の意味が込められるそうです。
また、スノードロップの球根に毒が含まれている危険性を示しているといった説もあります。
一方、キリスト教では、スノードロップは天使が降らせた希望のお花です。
アダムとイヴが初めて迎えた冬の日、寒さに震えるイヴを可哀想に思った天使が降る雪をスノードロップに変えて慰めました。そのためスノードロップには、「希望」「慰め」の花言葉もついています。
関連記事:スノードロップの花言葉|色別の花言葉や誕生花、名前の由来
黒赤色のバラ|「死ぬまで憎みます」
黒赤色のバラには、「死ぬまで憎みます」「憎悪」「恨み」「永遠の死」などの花言葉がつけられています。
由来ははっきりしていませんが、暗い色が持つ不吉なイメージからつけられたと言われています。
愛の象徴であるバラが黒に近い色をしていることから、相手の「死」を望むような狂気的な花言葉がつけられたのでしょう。
バラは世界中で品種改良され、多種多様な色合いのお花が生まれています。中でも日本で生まれた品種のひとつである黒真珠は、ベルベットのような光沢のある深い黒赤色が美しいバラです。
黒赤色のツヤのある深い色合いは高級感があり、贈り物としても人気があります。
黒に近いバラを贈る時は、贈る相手やシチュエーションに気をつけましょう。バラ全般の「あなたを愛します」の花言葉を添えて贈るのもいいですね。
バラの花言葉が気になる人は、バラの花言葉の記事も参考にしてみてください。
ハナズオウ|「裏切りのもたらす死」
ハナズオウの「裏切りのもたらす死」は、キリスト教に登場するユダが由来の花言葉です。
ユダはキリストを裏切ったとされる、十二使徒の1人です。
当時キリストはユダヤの指導者を批判していたため、指導者たちはキリストを処刑したいと考えていました。欲に目が眩んだユダは指導者たちからお金をもらい、キリストの逮捕の手助けをしてしまいます。
後にユダは自分の過ちを反省し、ハナズオウの木の下で命を絶ったと言われます。そのため、「裏切りのもたらす死」「裏切り」「不信」の花言葉がつけられました。
なお、ユダの伝承に登場するハナズオウは、近縁種であるセイヨウハナズオウです。ヨーロッパでは、教会の中や街路樹など至る所に植えられています。
一方、日本で栽培されるハナズオウは中国原産で、セイヨウハナズオウよりも樹高が低い種類です。日本や中国では春の訪れを告げるお花とされるため、「喜び」「目覚め」の花言葉もついています。
ベラドンナ|「男への死の贈り物」
ベラドンナは有毒植物のひとつで、特に根と根茎に猛毒を持つことで知られています。過剰摂取するとめまいや幻覚を引き起こし、死亡に至ることもあるようです。
魔女の薬草と言われ、魔女が人を殺すための毒薬や、空を飛ぶ薬の材料として使っていたと言い伝えられています。魔女が登場する物語でベラドンナの名前を見たことがある人も多いでしょう。
ある時代には、女性が瞳を大きく見せるため、ベラドンナの汁を点眼していたとも言われています。
また、ベラドンナの名前は、イタリア語で「美しい女性」の意味があります。ワイン色の美しいお花や、ツヤのある黒い果実が由来だそうです。
「美しい女性」と名前がついたベラドンナが、死に至るような毒を持つことから連想して「男への死の贈り物」の花言葉がついたのでしょう。
しかし、ベラドンナの毒は用法を守れば有用で、現代でも薬に使われています。
「呪い」や「復讐」に関する狂気の花言葉
次は「呪い」や「復讐」に関する花言葉をご紹介します。
- クロユリ|「呪い」「復讐」
- クローバー|「復讐」「私を思って」
- ミヤコグサ|「怨みを晴らす」
- フキノトウ|「処罰は行わなければならない」
クローバーやミヤコグサは雑草としても知られ、道端で見かける機会も多いでしょう。クロユリやフキノトウは日本原産の植物で、古くから愛され親しまれてきた植物です。
狂気的な花言葉がつけられた理由をそれぞれ解説していきます。
クロユリ|「呪い」「復讐」
クロユリとはバイモユリの仲間で、網目模様が入った黒紫色のお花を咲かせる高山植物です。
「呪い」や「復讐」といった狂気を感じる花言葉は、戦国時代の武将・佐々成政(さっさ なりまさ)の逸話からつけられました。
成政は、早百合と呼ばれる美しい側室を格別に寵愛していました。しかし、早百合が身籠った際、成政の子ではないと噂が流されます。噂を信じて怒った成政は、真実を確かめることなく早百合を殺してしまいました。
恨んだ早百合は最期に「立山にクロユリが咲いたら、佐々家は滅びる」と呪いの言葉を残しました。
実際に成政は、不遇の結末を迎え、切腹を命じられて死んでしまいます。
一方でアイヌの人々は、美しいクロユリを恋占いに使いました。そのためクロユリには、「恋」「ときめき」の花言葉もつけられています。
クローバー|「復讐」「私を思って」
クローバーは、ヨーロッパの各地で古くから身近な植物として知られていました。
修道士のひとり聖パトリックが3枚の葉を信仰・希望・愛に例えたことから、幸福や希望の象徴として知られるようになったと言われています。
また、まれに4枚葉の個体が見つかる珍しさも、幸福のシンボルとしての意味合いを強めたのでしょう。「四つ葉のクローバーを見つけると願いが叶う」の言い伝えは、日本でもなじみ深いですね。
「復讐」「私を思って」の花言葉は、四つ葉のクローバーを見つけても願いが叶わなかった恨みを表現していると言われています。
欲を行き過ぎると狂気的になってしまうことへの戒めでもあるのかもしれません。
なお、クローバーの葉には枚数ごとに意味があるそうです。詳しく知りたい方はクローバーの花言葉の記事も参考にしてみてください。
ミヤコグサ|「恨みを晴らす」
ミヤコグサは日本全国の田畑や広い川沿いに自生する、マメ科の植物です。
「恨みを晴らす」の花言葉は、ミヤコグサが地を這うように茎を伸ばして繁殖する性質から連想してつけられました。じわじわと広がっていく様子は、確実に復讐しようとする狂気的な執着心にも感じられるのかもしれません。
ミヤコグサの名前は、かつては京都に多く見られたことからついたと言われています。そのため、京の都を想う様子を連想して「また逢う日まで」の花言葉もつけられています。
なお、近年はミヤコグサの近縁種であるセイヨウミヤコグサのほうが勢力を伸ばしているそうです。
見分け方は、1本の茎につくお花の数です。ミヤコグサは1本に1個〜3個ほどのお花をつけますが、セイヨウミヤコグサは1本の茎に5個〜7個ほどのお花が咲きます。
黄色いお花を見かけた時は、ぜひミヤコグサかセイヨウミヤコグサか、確かめてみてくださいね。
フキノトウ|「処罰は行わなければならない」
早春の雪解けととも顔を出すフキノトウ。
フキの若い花芽で、独特な風味がする春の山菜のひとつです。花が咲いた後に出る葉の葉柄は、古くから料理に使われます。
「処罰は行わなければならない」の花言葉は、フキが有毒成分ピロリジジンアルカロイドを持つことからつけられました。
フキの葉やフキノトウにもピロリジジンアルカロイドが含まれますが、アク抜きすれば毒性が減るため、大きな健康被害はないようです。適切に処理すれば、食べても問題はないとされています。
フキの中で毒性が強い部分は、地下茎です。誤食しないように気をつけましょう。
なお、フキの花言葉は「待望」で、怖い意味の花言葉はありません。フキノトウだけに怖い花言葉がついているのは、フキノトウのほうがより多く毒を含むからと言われます。
美味しい春の味覚に毒が含まれている意外性と驚きから、狂気的な花言葉がつけられたのかもしれませんね。
「執着」を感じる狂気の花言葉
次は、「執着」や「束縛」に関する狂気の花言葉です。
- 黒いバラ|「あなたはあくまで私のもの」
- テッセン|「縛り付ける」
- アイビー|「死んでも離れない」
- クロガネモチ|「執着」
黒いバラやテッセン、アイビーは、切り花や鉢植えとして出回っています。クロガネモチも、街路樹や庭木によく使われている身近な樹木です。
プレゼントする際は、贈る相手との関係性やシチュエーションに配慮が必要そうですね。相手を怖がらせないためにも、狂気的な花言葉の由来を知っておくといいかもしれません。
ではひとつずつ見ていきましょう。
黒いバラ|「あなたはあくまで私のもの」
「あなたはあくまで私のもの」は、黒色のイメージからつけられた花言葉です。
嫉妬や妬みのような感情を「黒い感情」と表現するように、黒色は渦巻く感情を表す色でもあります。
一方で、黒いバラには「永遠の愛」「決して滅びることのない愛」の花言葉もつけられています。黒色は色褪せにくいことから、「再生」や「永遠」の象徴とされることが由来です。
「永遠の愛」が黒い感情に支配されると、執着や束縛につながってしまうのかもしれませんね。
なお、黒に近い赤色の品種はありますが、真っ黒のバラは自然界には存在しません。黒いバラは、黒の染料を吸わせた生花やプリザーブドフラワーとして出回っています。
黒いバラはシックでエレガントな印象もあり、ウェディングブーケやプレゼントに選ぶ人もいます。黒色が好きな人へのプレゼントにおすすめですが、贈る際はよい意味の花言葉を添えて誤解を招かないようにしましょう。
テッセン|「縛り付ける」
「縛りつける」の花言葉は、つる性のテッセンがほかの植物に絡みつく様子からつけられました。
漢字で「鉄線」と表記されるテッセンは、鉄のように細くて硬い茎を持っています。また、全草に有毒成分を含むことでも知られています。
繊細なお花からは想像しにくい強さや毒性が、狂気的に束縛する様子を連想させたのでしょう。
テッセンは、クレマチスの原種のひとつです。中国原産で、日本では古くから栽培されてきました。
日本ではテッセンの名前が広く知られているため、クレマチス全般をテッセンと呼ぶこともあります。
つる植物の女王とも言われ、繊細な美しさが人々を魅了してきた植物です。お花の美しさから、「精神の美」「心の美しさ」「高潔」の花言葉もつけられています。
アイビー|「死んでも離れない」
「死んでも離れない」は、つる性植物のアイビーの性質を表してつけられた花言葉です。 つる性のアイビーは茎から気根を出し、ほかの植物や壁面などにしっかり絡みつきながら成長します。
剥がしても跡が残るほどの非常に強い吸着力から、「死んでも離れない」の花言葉が連想されたようです。
一方で、アイビーはヨーロッパにおいて古くから「繁栄」や「裕福」のシンボルとされています。アイビーが絡みつく家は繁栄して裕福になると言われ、好んでレンガの壁面にアイビーを絡ませたそうです。
アイビーには「永遠の愛」の花言葉もあり、結婚式のブーケにもよく使われます。また、絡みつく様子がラグビーのスクラムを組むようにも捉えられることから「友情」「信頼」の花言葉もついています。
「死んでも離れない」の花言葉は、一見狂気的に思えますが、場合によっては愛情の深さや絆を表すポジティブなメッセージにもなるのかもしれません。
関連記事:アイビー(へデラ)の花言葉|由来や風水効果、育て方
クロガネモチ|「執着」
クロガネモチは日本に自生するモチノキ科の常緑樹です。
「執着」の花言葉は、クロガネモチの赤い実が熟しても落ちず、長い間枝に残っている様子からついたと言われています。
クロガネモチの名前は、新枝が黒っぽいことや、葉が乾燥すると黒っぽい鉄色になることから「黒鉄(クロガネ)のモチノキ」の意味でつけられました。
やがて「苦労がなくお金持ち」と語呂合わせされるようになり、縁起のよい樹木として植えられるようになったそうです。西日本を中心に、庭木や街路樹によく使われています。
「お金持ち」と「執着」のワードが組み合わさると強欲な印象も浮かびますが、クロガネモチの堂々とした佇まいはたしかに幸運を呼び込んでくれそうです。
「執着」のほかには、「寛容」「魅力」の花言葉がつけられています。
「異常な愛」を連想させる狂気の花言葉
最後は、行き過ぎた愛情を表現するような、狂気的な愛の花言葉をご紹介します。
- ガマズミ|「無視したら私は死にます」
- スグリ|「あなたに嫌われたらわたしは死にます」
- マルベリー|「ともに死のう」
- リンドウ|「悲しんでいるあなたを愛する」
ガマズミやスグリ、マルベリーは、古くから各地で食用にされてきた植物です。リンドウは秋を代表する山野草のひとつで、切り花としてもよく出回っています。
なぜ狂気の愛を表すような花言葉がついたのでしょうか。
由来や意味を解説していきます。
ガマズミ|「無視したら私は死にます」
ガマズミは、日本を含む東アジアに自生する落葉低木です。
秋に実る真っ赤な果実は、ジュースや果実酒、ジャムなどにして食べられます。ガマズミの実はアントシアニンを含み、ビタミンCやポリフェノールも豊富です。
「無視したら私は死にます」の花言葉は、ガマズミの気持ちを表現していると言われています。
ガマズミの果実が赤いのは、ヒヨドリやメジロなどの鳥に見つけてもらうための工夫と言われています。
ガマズミは、鳥に果実を食べてもらうことで分布域を広げる植物です。
果実の中の種子は消化されず、鳥の排泄物に残ります。鳥たちはさまざまな場所に排泄物を落とすため、ガマズミは自分で種子を落とすよりも広範囲に種子を飛ばすことが可能です。
「無視したら私は死にます」は、狂気的な愛情表現のようですが、ガマズミが生き延びるための切実な気持ちをストレートに表した花言葉と言えるでしょう。
スグリ|「あなたに嫌われたらわたしは死にます」
スグリには、「あなたに嫌われたらわたしは死にます」「あなたの不機嫌がわたしを苦しめる」の花言葉があります。
狂気的な愛情や依存心を感じさせるような花言葉は、スグリの鋭いトゲが由来と言われています。
スグリは美味しい果実をつける植物です。中でもセイヨウスグリやアメリカスグリはグーズベリーとも呼ばれ、そのまま食べたりジャムや果実酒にしたりして楽しめます。
透き通った果実は宝石のように美しく、観賞価値も高い果樹です。しかし果実を採ろうと思うと、鋭いトゲが邪魔をします。
「あなたの不機嫌が私を苦しめる」は、「あなたの不機嫌(=スグリの鋭いトゲ)がわたし(=収穫する人間)を苦しめる」とも考えられます。スグリの美味しさに魅せられた人間の気持ちを表しているのかもしれません。
マルベリー|「ともに死のう」
マルベリーとは、桑(クワ)の実です。
マルベリーは果実酒やジャムにしたり、そのまま食べたりして世界中で愛されています。熟すにつれて白から赤、黒色に変化していく果実は美しく、栄養価も高いことで知られています。
「ともに死のう」の花言葉は、ギリシャ神話に登場するピュラモスとティスベの逸話が由来です。
家が隣同士のピュラモスとティスベは愛し合っていました。しかし親に反対され、駆け落ちを決意します。マルベリーの木の下で落ち合う約束をしますが、すれ違い、結果的に2人とも命を落としてしまいます。
2人の血を吸ったため、マルベリーは赤黒く熟すようになったそうです。
ピュラモスとティスベの話は、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」のモチーフになったことでも知られています。
また、クワは蚕の餌となるため、日本でも古くから栽培されてきた植物です。繁栄をもたらすことから、「知恵」の花言葉もついています。
リンドウ|「悲しんでいるあなたを愛する」
「悲しんでいるあなたを愛する」は、リンドウの紫色が喪や悲しみの色とされることが由来です。
一見、歪んだ狂気的な愛情にも捉えられる花言葉ですが、「愛する人の悲しみに寄り添う」といった優しい気持ちを表すようです。
紫色は、喪中ハガキやお供えの包装紙など、弔事に使われる色です。ヨーロッパでは高貴な色のひとつで、尊厳を表す色とも言われています。キリスト教では、懺悔の色として扱われることもあるようです。
リンドウの深い青紫色が、大切な人を失った悲しみに寄り添ってくれるように感じられたのでしょう。リンドウの凛とした佇まいは、上品で弔事だけでなく、ギフトとしても人気のお花です。
また、古くから薬草としても利用されたことから、病気に打ち勝つ意味で「勝利」の花言葉もつけられています。
まとめ
狂気の花言葉がつけられた植物は、毒やトゲなどの性質を狂気的に表したものや、切ない物語が由来になっているものなどさまざまでした。
また、古くから生活に利用されてきた植物も多く見られましたね。身近であったゆえにさまざまに思いや意味が込められ、多様な逸話がつけられたのでしょう。
狂気的な花言葉はプレゼントにはふさわしくありませんが、植物の美しさは花言葉に左右されるものではありません。狂気の花言葉がつけられた背景に思いを寄せつつ、植物そのものの魅力も感じてみてください。
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